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ロケット発射台から飛び出す

ここ十数年、もうこの人とお付き合いするのは嫌だなあ、と思い続けていた人がいた。

健康食品を売る人。

売ってるものは良いものだし、彼女は自分は立派な仕事をしていると信じて頑張っている。
強引だがそれもお嬢様育ちで周囲に守られて育った故なき自信の賜物だろう。

彼女のボスは人格者で、先日書いた「ランチのアッコちゃん」を彷彿とさせる女傑である。
アッコちゃんのような人のそばにいながら、あんな風でい続けられるだなんて、
彼女はボスの何を見ているのだろう?
アッコちゃんの無駄遣いというものだ。

同じ商売をするにも、アッコちゃんには志があり、
彼女には儲けるという目的があった。

どうせ大枚はたくなら、志のある人から物は買いたい。

私は本来顧客なのである。

なのに「健康でいられるのは私のおかげ」を押し付けられて早16年ほどか。

健康食品はお高い。

彼女の気位もお高い。

私が転居して以来会うこともなかったが、電話やメール、手紙の類は定期的に届く。

ただそれだけでも、理由なき上から目線は私を傷つけ続けた。

とうとうこれはもう潮時か、という小さなきっかけがあった。

最初はただ怒っていたのだが、それから私はこの怒りについてしばし考えた。

丁度テレビでカンバーバッチホームズが座禅めいたポーズで瞑想するシーンを見たばかり。

私もしばし、瞑想の真似っ子をした。


私もまた、「言葉」の呪縛から逃れられなかった弱き精神の主だったのだ。

「これを食べ続ければ家族はみんな健康。食べなければ不幸。」
そんなの、言葉の鎖だ。

私は怒りを返す代わりに、彼女から言われた言葉、彼女のとった行動、これまで彼女が私にしてきた事をメールに書いただけだ。

それで十分だった。

その上で、恩着せがましく送って来られる数々の「お知らせ」も断った。



友人に、その顛末を簡単に書き送った。

友人の返事には笑った。

「怒りはロケットが重力から解き放たれる時の推進力と一緒だね!」

そうだね。

私はようやく発射台に点火して、飛び出したのだ。

言葉の呪縛という重力から放たれて。





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