FC2ブログ
Welcome to my blog

ランチタイムポピンズ

『ランチのアッコちゃん』
『3時のアッコちゃん』
柚木麻子/著



「アッコちゃん」は大人にとってのメリーポピンズだ。
次はどんな魔法を見せてくれるのだろうとワクワクしながらページをめくった。

私にも1時間の昼休みが保証されているはずだが。
そんなもん普段から無いに等しく、これからしばらくはその無いに等しいものすら「無い」状況に陥っている。
仕事しながら毎日ゴリオの弁当ついでに作るおにぎりか、何でも挟み込んだサンドイッチを手にするのが精一杯。
「NO」と言えないのはこの本の主人公ばかりではない。
それに周りだって皆忙しいのだ。


「アッコちゃん」は孤独な派遣社員の味気ないランチタイムを冒険と出会いの時間に変えた。
神出鬼没、あらゆる東京と、そこに生きる人々を垣間見せてくれる。
深く立ち入ることはなくとも良い。
これは大人の「夢」なのだから。

主人公三智子の彼(になる人)が経営する古書店で、「アッコちゃん」が所望するのは懐かしい海外児童文学。
「風にのってきたメアリー・ポピンズ」「パディントンのクリスマス」「クマのプーさん」「ライオンと魔女」「不思議の国のアリス」。
そういやみんな映画化されている。

三智子が初めて彼に出会った時に「アッコちゃん」がお使いを頼んだ本はリンドグレーンだった。
なぜリンドグレーンなのか。
やかまし村の子どもたちも、「冷たいジャガイモ」を地下室に取りに行ってお腹を満たしていたではないか。
クリスマスには美味しい料理を村の皆で囲んで。
長くつ下のピッピはおいしいパンケーキをトミーとアンニカにふるまったではないか。

やはり「アッコちゃん」はファンタジー。
美味しいランチや夜食や、おやつ付きの。

アッコちゃんと三智子さん編も、他の短編も、展開はファンタジーであれ詳細はとてもリアルだ。

私も芝公園傍の某社で派遣社員として働いたことがある。
さすがに芝公園で冬に弁当を広げたことはないが、主人公と同じくお弁当持参で、
東京タワー近くへの通勤は胸躍るものだった。


それでも、派遣社員は難しい立場だ。
ランチ時にも社員との格差を見せつけられる。

水道橋で働いていた時は、オフィスのフロアでお弁当を食べる人などほとんどいなかった。
社食は華やかで、お洒落でも若くもない私は気後れした。
ランチ代を惜しまない女子社員と一緒にあちこちで食事することはお財布にも気持ちにも負担で、
途中からは一人でワンコインランチに通った。

その頃にはゴリオ(仮名)がいたので、私はすでにおばさんだった。
昼休みは食事の後に、本屋でゴリオに読む絵本を探すことが楽しみだった。

田舎出の子持ちおばさんの都会でのランチタイムは、すでにそれそのものが冒険だった。

私におかっぱ頭の「アッコちゃん」が訪れることはなかったが、街が私の「アッコちゃん」だったのかもしれない。

「アッコちゃん」を読んだからには夕食はポトフ。
ブーケガルニ抜きなのだから、急ごしらえのただのスープだったが。

それにしても少々憂鬱なランチタイムに
今こそ、お昼休みのメリーポピンズ、求ム。


関連記事

Comments 0

Leave a reply