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数行の行間

和田誠さんが好きだから、和田さんの手になる表紙の本を買ってしまうのか、
それとも好きな本に限って和田さんが表紙を描いているのか?

相当な数の表紙を描いてこられた方なので、
どこかで和田誠の装丁や表紙、挿絵に出会うことは当然と言えば当然なのだろう。

「ほんの数行」 和田誠/著 七つ森書館
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「週刊金曜日」に連載された和田誠さんの「名言に類するものを紹介するのが目的」(あとがきより)というコラム集である。

和田さんの手になる表紙と共に、本の中の「数行」(あるいは一文と言ってもよい)を紹介し、本の内容、その著者との思い出、装丁や表紙の技法についてまでを語っている。

こうして和田さんの仕事の一部でもまとめて本で見てしまうと、
何という「表現者」だろうかと思わずにはいられない。

若山富三郎と勝新太郎兄弟について書いた山城新伍著「おこりんぼ さびしんぼ」の
ユーモラスではあるが、「兄弟」の個性を描ききった表紙。
星新一がなぜ真鍋博と和田誠の二人だけをイラストレーターとして起用したか。
赤塚不二夫のニャロメを和田さんが描いて表紙にした「赤塚不二夫1000ページ」。
和田さんの映画好きがよくわかる映画監督や女優、俳優、舞台関係の人による表紙の数々。
映画関連の本に関する和田さんのコラムは「数行」で泣きそうになる。
「ビートルズの社会学」でのジョン・レノンの描き方。
いくつも描いた絵をコラージュにして一つの表紙にしたものや、
版画家の山本容子さんに教わったばかりの技法を用いたもの、
段ボールや厚紙を使ってライブハウスを作り、自然光で自分で写真を撮って装丁を仕上げたという作品もある。
嬉しかったのは、常盤新平訳のアーウィン・ショー、常盤さん自身の本の表紙も数冊紹介されていることだ。
表紙にまつわる話がまた楽しくて、時に感動を覚える。

表紙絵だけではなく、挿絵から装丁までを手掛ける和田さんは、編集者の次にその本の原稿を読むことができる。
ある意味でプロの本読みだと思う。
本の中身を損なわず、「ネタ割れ」することなく、
本のハラワタを引きずり出しながらユーモアにあふれる表紙の数々。

カポーティの「ローカル・カラー/観察日記」という本は知らなかった。
この本の紹介を読んで買わずにいられようか。


三遊亭圓生、圓楽著の本に其々表紙を描いているのだが、同じ落語家の本でも似て非なる内容に合わせ、趣も違う。
「江戸散歩 上」の圓生、「古典落語」の志ん生の似顔絵など、ゾクッとするほど素敵。
「古典落語」の文庫シリーズはそれぞれの噺家の高座姿を和紙にペンで描いたという。
線が素晴らしく自由自在。

本の中身、作者との思い出、その本が描く世界の話まで和田さんの見識と交友の広さ深さには脱帽ものだ。

都筑道夫「サタデイ・ナイト・ムービー」の表紙の凝り方。
こうして描いた本人が語らなければ、相当な映画ファンでなければ気が付かないところである。
映画にまつわる本が多く紹介されているのは、思い入れが強かったためか。
本の中身だけでなく、その周辺についても詳しく語っている。
戸田奈津子「字幕の中に人生」の装丁の書名を、字幕の文字を書く名人にお願いした話など、
映画に関しては裏話も面白いものばかりなのだが、
装丁を通じた和田さんの映画への心の込め様、敬愛の情に心打たれる。

寺山修司は友人としても語られ、彼の本だけではなく
その詩は「IFの世界」の石川喬司の本の数行の中でも紹介される。

最後の「和田誠 切抜帖」の「数行」は和田さんのお父様の言葉で締めくくられる。
この数行には首を垂れるしかない。
築地小劇場の創立メンバーであり、戦前からラジオ局で音響の仕事をされておられたという。



ひとつ残念だったのは、福永武彦、中村真一郎、丸谷才一の「深夜の散歩」が入っていないことだ。
この本の装丁、
決定版「深夜の散歩」あとがきの中で、丸谷さんが「和田誠さんのおかげできれいな本が出来あがって、非常にうれしい。」と書いているのに!
推理小説の神々が、洒落たタッチで描かれているのに!

「Book Covers in Wadaland 和田誠 装丁集」
「和田誠シネマ画集 」
「Posters in Wadaland―和田誠ポスター集 - 和田 誠」

全部欲しくなってしまった。

追記

書き忘れた。
樋口尚文「グッドモーニング、ゴジラ」に、ゴジラはアメリカの「原子怪獣現わる」をもとに、企画を進めた方々は本家をご存じないまま原作とゴジラの姿を産み出したのではと、ゴジラ誕生のいきさつを本のゲラから推察している。
映画がお好きな和田さんは、リアルタイムで両方の映画をご覧になっているのだ。
和田さんの本を読むと映画が観たくなる。

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