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絵筆のサスペンス



『迷宮のレンブラント』
原題 INCOGNITO
製作年/国 1997年/米
配給 東宝東和
時間 107分
公開日 1999年10月9日(土)
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監督
ジョン・バダム

出演
ジェイソン・パトリック
イレーヌ・ジャコブ
ロッド・スタイガー
イアン・リチャードソン




ストーリー

 【キネマ旬報データベースより】

(※内容にネタバレを含みます)
ハリー・ドノヴァン(ジェイソン・パトリック)は天才的な贋作画家。ニーヨークでケチな依頼主に贋作を売りながら生活していた彼は、ある日、報酬50万ドルでオランダの巨匠レンブラントの絵画を描くという特別な注文を受ける。
ハリーはアムステルダムに住み、レンブラントの研究を始める。
途中、パリヘ移ったハリーは学生だと名乗るマリーケ(イレーヌ・ジャコブ)に出会う。
恋に落ちたハリーはマリーケと一夜を過ごすが、翌朝マリーケはメモを残して去っていた。

アムステルダムヘ戻ったハリーは製作中の絵画に父の眼を描きこみ、一枚の肖像画を完成させる。依頼主の画商たちはその絵をスペインの農家で見つけたと偽って、専門家に鑑定させる。

その鑑定の場に来たのがマリーケで、彼女は「これはレンブラントではない」と言う。

その後、ハリーは絵を盗難。逃亡するが、その直後、画商たちのあいだで殺人事件が起こる。ぬれぎぬをきせられたハリーはマリーケを連れて逃げるが、警察につかまる。

裁判の席で絵が贋作であることをその場で絵を描くことで証明しようとしたハリーだが、父の眼にとがめられるような気がして筆を置く。

状況は不利に思えたが、画商のひとりが仲間を裏切って真実を告白したため、ハリーの殺人罪は冤罪だと発覚。レンブラントの贋作は本物としてスペイン政府のものになり、マリーケとハリーは和解するのだった。



日曜の朝からたまたまテレビで見たんですが。
いやもう、とにかく楽しみました。


舞台が主にヨーロッパだとはいえ、映像も内容もグッと落ち着いている。
サスペンスと言いながら、手錠をかけた逃亡劇も、「スピード」感はそれほどない。
ジェイソン・パトリックが異常に腕っぷしの強い絵描きなのは、「ワイルド」だからなんでしょうか?
あの「サタデーナイトフィーバー」の監督は、やはりただモノではなかったことは確か。

贋作作家とはいえ、確かな腕を持つ画家が、
「レンブラント」の贋作を依頼され、
愛する父の面影を移した絵にインスピレーションを得た瞬間から、
一気に豹変するんですね。




絵具の研究から始まり、
まずとッ散らかったねぐらを徹底的に掃除する。

大物の器具を入れる。
どでかいのは、オーヴンだったようだ。
オーヴンで絵を3回焼いて、年季の入り具合を調節する。

それからカンヴァス、顔料、古い時代から使われている絵具、文字通りの鉛の兵隊から酢を使って取り出すホワイト、そしてブルー。
わずかな特別な、レンブラントが使った何とかブルー(もう名前忘れた)を手に入れるため、大枚をはたく。

24本の絵筆。リスなど動物の毛を数種指定し、選び抜いた太さの絵筆。

描き始めると、それはもう、確かなデッサンによって迷いなくグングンと描かれていく。

レンブラントは夕べもNHKで『光と影の画家』として紹介されていた番組で見ていたのだが、人物の瞳の奥行が素晴らしい。

この映画の主人公は描きあげた完璧なレンブラントの贋作に、落ちぶれてはいるが画家だった愛する父親の瞳を描き込む。

殺人罪に問われたの裁判のシーンで、自らの潔白を証明するために法廷で模写する時にも、彼が書き上げつつあった絵の人物の瞳は、まさに彼の父の目だった。

彼の絵の才能は父譲りだったが、贋作は父の友人の贋作の専門家に手ほどきを受けた。
父親は彼の全てを受け入れてはいたが、内心天才的ともいえるが贋作しか描けない息子を案じていた。

その父の目を、彼は自ら描いた絵の中に見てしまう。
父の死を知り、父の思いを窮地の場で真に感じ取った彼は、法廷の場でそれ以上、「贋作」を描くことができなくなる。

映画の中で使われた絵とはいえ、その瞳が素晴らしく描けているんですわ。

逃亡中、奪った車に残された子供の絵に手を加えたデッサン画。
子どもの描いた単純な山と太陽の絵が、主人公の手によってあどけない子どもの寝姿に見る見るうちに変化する様。
その絵を売って熱を出したヒロインの薬代にする主人公。

この映画のサスペンスとは、まさに絵を描くことそのものにあるようだった。

いえ、お話としてはちゃんと伏線もあり、どんでん返し的な結末もあり、
ロマンスもありで他にも見どころは沢山あるんでしょうけれど。

バランスの良い映画なので、どこから見てもそれなりに楽しめるのでは。

余談ですが、私的なツボは、法廷で鬘を被った弁護士(主人公を有罪にしようとする敵方の)が、
先日からものすごく気に入っているシャーロック・ホームズテレビドラマパロディーの亜種、
「コナン・ドイルの事件簿 Murder Rooms」でベル教授を演じていたイアン・リチャードソンなんですね。

もうすでにお亡くなりになられているのが残念でならない俳優です。

目力があって、チャーミングで。

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ミス・マープルの書斎の死体での富豪役では別人のようでした。

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ドラマもですが、ハリウッドでも人気があったのでしょう、多くの映画に出演した、息の長い俳優さんでした。







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