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もももすももももものうち

言葉は、聞くにつけ発するにつけ、
耳にする時、ある種の気持ちよさが生まれる瞬間がある。

子どもに読み聞かせた本を捨てられず、時折手に取る。

あの時、絵本を読んでいて楽しかったのは息子なのか、私だったのか。

彼は私の声に敏感だった。

緊急手術で生まれた息子だった。
取り上げた瞬間、へその緒は取らずとも落ちたそうだ。
間一髪だった。

彼と私の初対面は、生後4日目くらいだったか。

声をかけると、「ハッ」としたように体をばたつかせ、
呼吸のために少し斜めにしてあった保育器の寝床を上へとずり上がり、
落ちそうになった。

こいつ、元気やん。
しかも、私の声を覚えていやがる。

歩行器につかまって、立っているのがやっとだった私は、
まだわが子を抱くことすらできなかった。

名前もまだついていなかった彼に。

せっかく私の声を覚えているのなら、
声を聞かせれば安心するかもしれない。
もっと聴かせてやりたい。
でもちっぽけな赤子に、何を語ればいいのかわからなかった。

仕方ないので、巨人が中日に負けて悔しかった話をした。

それから、彼が泣く時は、
おんぶにだっこだけでなく、
歌も歌ったが、どうも赤子をあやすのにはリズムが合わない歌ばかり。
そこで適当に作り話をした。

「母ちゃんの名はマドレーヌで、フランスから来ました。年は20歳。よろしく。」とか
全く、くだらない嘘ばかり。

語ることで癒されていたのは、
彼だったのか
私だったのか。

例えば

「桃太郎」を声に出して読んでみる。



「ひとつたべるとじゅうにんりき、
ふたつたべるとひゃくにんりき、
みっつたべるとせんにんりき。」

「ももたろう」
いもとようこ/文絵 金の星社 より




ばあさまが せんたくをしていると、
おおきな ももが
つんぶく かんぶく
つんぶく かんぶく
ながれてきました。


「ももたろう」
岩崎京子/文 宇野文雄/絵
フレーベル館より



「つんぶく かんぶく」の「ぶく」と発音する時の楽しさ。
「ひとつたべると じゅうにんりき」と謳うように言葉にする気持ちの良さ。 


桃が川上から流れてくるとき、「どんぶらこ」とは限らないのも面白い。

ある日、おばあさんが、川のそばで、せっせと洗濯をしていますと、川上から、大きな桃が一つ、

「ドンブラコッコ、スッコッコ。
ドンブラコッコ、スッコッコ。」

 と流れて来きました。


「桃太郎」 楠山正雄/著より
底本:「日本の神話と十大昔話」講談社学術文庫、講談社



きびだんごの分け方も色々である。
赤羽さんの挿絵が最高。
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「こしにつけたのは なんですか」
「にっぽんいちのきびだんご」
「一つ ください、おともします」
「それでは おまえに わけてやろう。 これさえ たべれば 十にんりき」


「ももたろう」 松居直/文 赤羽末吉/画 福音館書店



私が愛してやまない「ももたろう」は、本の行方がわからないので桃太郎の言い回しが書けなくて残念。

桃太郎が
大見得切ってる感じの本。
誰の書いた桃太郎だったろうか?


ここからは私が読んで楽しかっただけで、息子に読んだわけではない。
大人が読んで楽しい桃太郎かもしれない。

ちょっと七億さん(詳しくはナナオクプリーズのサイトへどうぞhttp://7oku.hatenablog.com/entry/2013/11/24/151104)が書くパロディっぽい「桃太郎」は芥川龍之介の手によるもの。


「桃太郎さん。桃太郎さん。お腰に下げたのは何でございます?」
「これは日本一の黍団子だ。」
 桃太郎は得意そうに返事をした。勿論実際は日本一かどうか、そんなことは彼にも怪しかったのである。けれども犬は黍団子と聞くと、たちまち彼の側へ歩み寄った。
「一つ下さい。お伴しましょう。」
 桃太郎は咄嗟に算盤を取った。
「一つはやられぬ。半分やろう。」

「桃太郎」 芥川龍之介/著より 
底本:「芥川龍之介全集5」ちくま文庫、筑摩書房


芥川の描くケチな桃太郎は「青空文庫」で読むことができる。http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/100_15253.html

この桃太郎、終わり方もシュール。

人間の知らない山の奥に雲霧を破った桃の木は今日もなお昔のように、累々と無数の実をつけている。勿論桃太郎を孕んでいた実だけはとうに谷川を流れ去ってしまった。しかし未来の天才はまだそれらの実の中に何人とも知らず眠っている。あの大きい八咫鴉は今度はいつこの木の梢へもう一度姿を露すであろう? ああ、未来の天才はまだそれらの実の中に何人とも知らず眠っている。……

「桃太郎」 芥川龍之介/著より 
底本:「芥川龍之介全集5」ちくま文庫、筑摩書房



近未来である。
SFみたいだ。
こちらは鬼たちの行く末の描き方も読みどころであった。
参ったなあ、と思う。


でもどうせなら、こんな結末がいいな、と思わないでもないのがこちら

「それからのおにがしま」 川崎 洋/著 国松 エリカ/画 岩崎書店



鬼退治のあとの鬼が島。やがて鬼たちと人間たちの交流が始まる。子どもどうしが遊び、橋がかけられ、鬼の娘と人間の若者の結婚式も。



現実はもっと厳しいのだ、と思う向きには
こちらの一癖も、二癖もある「ももたろう」も、いいかもしれない。



「ももたろう―だれでも知っているあの有名な」 五味太郎/著 絵本館
シニカルだ。


で、結局のところ、「川から流れてきた桃は、一体どこから来たのだろう?」という疑問に答えてくれるシリアスな絵本。



「ももの里」 毛利 まさみち/著 リブリオ出版

絶版なのが残念なので、復刻版、出してほしい。


今思い出しても、
息子は話の中身など、聞いてはいなかったと思う。
ただ、私の声さえ聴くことができれば、それでよかったのだろう。

私には、声に出して読む楽しみが残った。

息子は成長し、おサルからゴリラになったが、
今も私の嘘話を時々うっかり信じ込む。

佐野洋子さんが息子さんに語った、「お母さんのむかしばなし」のような
素敵な話が語れればよいのだけれど。



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Comments 6

ニャンコさんさん  
09

絵本大好きです。子供たちのために書かれた本は優しくて沢山の知識が隠れている。大人になっても読むときは
子供の頃に戻ったりします。
作者の思いが詰まった絵本だから、手にとっていつまでも大事にしたくなるんでしょうね(^^
フランス生まれのマドレーヌ、素敵ですよ。

ちょうど季節の変わり目、お体にはご自愛くださいね。

2015/09/20 (Sun) 21:29 | EDIT | REPLY |   
mikaidou  
Re: 09

にゃんこさんさん様

コメント、ありがとうございます。

>ちょうど季節の変わり目、お体にはご自愛くださいね。

先日、全く同じことを病院で言われてきたばかりだったので
「エスパーですか?」と思っちゃいました。

絵本は奥深いですよね。
ほんと、何度読んでも侮れない、と思います。

にゃんこさんさん様も良い連休をお過ごし下さいませ(^^)/

2015/09/20 (Sun) 23:15 | EDIT | REPLY |   
mikitaka08  
1

こんばんは

 すももももももものうち、散歩の際の早口言葉練習のひとつです。ボケ防止に良い、と何かに書いてたので。。。 そっち関係と思い、読ませていただきましたが、凄いですね。こんなに桃太郎があるなんて知りませんでした。どの桃太郎も日本語が凄いですね。日本語の豊かさに気が付かず、ひたすらボケ防止としての音読に取り組んだことが恥ずかしい。かつてふたりの息子たちに絵本の読み聞かせをしたつもりでしたが、不十分でした。今度は孫のために音読に取り組みます。ありがとうございました。

2015/10/31 (Sat) 02:52 | EDIT | REPLY |   
mikaidou  
Re: 1

mikitaka08 様

この記事にコメントいただけるなんて、とてもうれしいです。

桃太郎にこだわり始めると、次々に桃太郎関係の本に出会ってしまって
止まりません。
ちょうど夕べも新しい「桃太郎本」に出会ってしまったばかりでした。

お孫さんへの読み語り、素敵ですね。
両親とは違う声のトーンだと、また物語に深みが出るので、
きっとお孫さんには忘れられない思い出になるのでしょうね。


mikitaka08様のブログ記事も楽しみに読ませていただきますね。

アンソニー・パーキンスは、ヒッチコック好きですので、やはりサイコのあのイメージで固定されておりました。
あんなに健全そうなジャケットの青年の顔に、本当に驚きました。

しかも「緑の館」、昔見ているのですが、
忘れてしまっているのか気が付いていなかったのか・・・(^^♪
ヘプバーンと監督のメル・ファーラー夫婦の裏話ばかりが
記憶にあるのが、我ながら不思議です。

知らないことって、まだまだたくさんあるんだなあ、と
最近とみに思います。

またお邪魔させてくださいませ。

2015/10/31 (Sat) 17:06 | EDIT | REPLY |   
chocoacco  
mikaidou さま

こんにちは!

お忙しい中、スケカナの記事ありがとうございます。

私もこの記事気になっていて
コメント欄から飛んできちゃいました(笑)

2冊しか読んだ事のあるものはありませんでしたが
ホント、同じお話とは思えないくらいあるんですね。

絵本ではないのですが
桂米朝師匠の落語にも「桃太郎」があります。
とても短くて洗練された噺で大好きなんです。

お時間あればぜひ一度聞いてみてください!
(youtubeにあるかな…)

2015/11/02 (Mon) 13:10 | EDIT | REPLY |   
mikaidou  
Re: mikaidou さま

chocoaccoさま

おっ!
やったー!
こういう知らなかった情報をいただけるのが、
とても嬉しいです!

なんと「落語」なんですね。

つべで探してみますね。

ありがとうございます!

2015/11/02 (Mon) 20:15 | EDIT | REPLY |   

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