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2015
01.20

フランス革命と死刑執行人

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夕べ、一気読みした本。

死刑執行人サンソン ―国王ルイ十六世の首を刎ねた男 (集英社新書)
安達 正勝 (著)

フランス革命時、ルイ16世一家を死に至らしめたギロチンは、処刑された国王その人によって、人道的に完成された器具だった。
ギロチンを開発する最大の目的は、「罪人を処刑する際、できる限り、その苦痛を軽減するため」。
それ以前の処刑は身分や罪状によって細かく分けられていたが、そのやり方たるや、想像を絶する残酷さであったという。
読みながらも、目をそむけたくなるような事件がいくつも紹介されているが、それはこの本には不可欠なもの。



仏文学者安達正勝氏による力作。

敬虔なカトリック教徒であり、国王を崇敬し、王妃を敬愛していたシャルルーアンリ・サンソン。
彼は、代々にわたってパリの死刑執行人を務めたサンソン家四代目の当主であった。そして、サンソンが歴史に名を残すことになったのは、ほかならぬその国王と王妃を処刑したことによってだった。

本書は、差別と闘いながらも、処刑において人道的配慮を心がけ、死刑の是非を自問しつつ、フランス革命という世界史的激動の時代を生きた男の数奇な生涯を描くものであり、当時の処刑の実際からギロチンの発明まで、驚くべきエピソードの連続は、まさにフランス革命の裏面史といえる。



本の表紙の裏に書かれている、この通りの内容だが、「裏面史」がこの本なら、私にとって、表とはなにか。

勿論池田理代子氏の「ベルサイユのばら」に決まっている。
そしてAXNミステリで随分熱心に見た「王立警察二コラ・ル・フロック」だ。

「ベルサイユのばら」がいかに史実に基づき練られた話であるか、実在の人物が身分、品格、知性によって描き分けられていたか、今更ながら驚く。
この死刑執行人サンソンと、オスカルの人生を重ねて読むと、あの事件、この出来事が、表裏一体となって浮かび上がる。
私のようなてんで歴史音痴でもわかる程度、ではあるが。


ジャン=フランソワ・パロ(Jean-François Parot )による「二コラ・ル・フロック」は邦訳も出版されている。
主人公二コラの片腕として捜査の影で活躍するセマギュス医師。
彼が検視をする牢獄には、拷問に呻く罪人の声が絶えなかった。

このセマギュス医師の立場と表裏をなすのもサンソンである。

ルイ16世の描き方が、ベルばらとは全く違うのがまた面白い。
マリー・アントワネットの立ち位置も、ソフィア・コッポラ監督の映画とは違う視点で描かれている。

オスカルとセマギュス医師を追いながら、この本の主人公サンソンとその一族の歴史を読んでいく。

最後に死刑の是非を問うサンソンの心の叫びが畳み掛けるように訴える。
「死刑制度は間違っている!」
これは現代の日本における死刑制度反対とは大本は同じでも、違う叫びだ。

無実の罪で裁かれる人々を法の名の元に何千人も殺めた執行人の心の叫びなのである。

老眼と肩こりと、あらゆる不調を押してまで、読み始めてから最後まで、とうとう一度も本を手放すことができなかった、。
食器も洗濯物も、すべてほったらかしである。
それほど素晴らしかった。


アメリカの女流作家バーバラ・レヴィ(Barbara Levy)による、同じサンソン一族を扱った本もある。
「パリの断頭台 〈新装版〉: 七代にわたる死刑執行人サンソン家年代記 」



こちらは米国推理作家協会賞受賞を受賞している。
歴史ものというより、ミステリ仕立てなのか。


ベルばらのお好きな方にはおススメです。
オスカル、出てきませんけど。

追記

圧巻はルイ十六世を処刑した夜、革命軍にくみしなかったカトリックの神父を訪ね、最も貧しい祭壇で、自分が手を下した国王の、遺体なき野辺の送りを果たす場面である。
その後、ナポレオンと出会ったサンソンは、「自分は何者か」をナポレオンに突きつけ、狼狽すらさせている。

サンソンの孫の回想録を中心に、史実に忠実に描いてあるとしても、後半は作者の筆に何かが憑いたような筆致になっている。
冷静に描くには重すぎる。

この国の現在について、鋭い考察をされておられる、 シカさまのブログも合わせてどうぞ。

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コメント
ちょうど、拙ブログでベルばらに言及したところでした。なんたる共時性! とても興味深く拝読しました。その本、買います。
シカdot 2015.01.20 10:28 | 編集
シカさま

シンクロニシティ(Synchronicity)ってやつですか?

出勤前にダダッと書いたので書き足りなくてPC開いたら
びっくりしました。

フランスのテロについて、何も触れなかったなと思って。
書き加えるのはやめて、今からシカさまのブログに飛びます!
mikaidoudot 2015.01.20 10:46 | 編集
こんにちは。

この本読みました。

感想はmikaidou様の行き届いたレポートに譲ることとして、日本のサンソン一族、山田家250年の歴史を描いた一冊をご紹介したいと思います。

「斬」 綱淵謙錠

ぢょん・でんばあdot 2015.01.21 08:29 | 編集
ぢょん・でんばあ様

おおおっ!
第2章に「斬」の話が出てきてましたね。
お読みになられたのですね。

ぢょん・でんばあ様、守備範囲広くてすごいです!
mikaidoudot 2015.01.21 09:11 | 編集
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