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感想

このドラマを楽しまれた方には申し訳ございません。
今回は私見、ということでご勘弁くださいまし。

クリスティーの名は、永遠に揺らぐことはないが、ミタニさんという脚本家はお気の毒だった。

http://www.fujitv.co.jp/fujitv/news/pub_2014/i/140819-i148.html
『フジテレビ開局55周年特別企画『オリエント急行殺人事件』

HPを見ると、力は入れていたらしい。
http://www.fujitv.co.jp/orientexpress/index.html

蛆テレビは全日本のみ録画で見るので、それ以外は知らない。
でも、あの三谷幸喜が「オリエント急行」をドラマ化するという話は知っていた。

クリスティー作品も、「古畑任三郎」も旧知の友人のように思っているミステリ好きは多いだろう。
私でさえ、このドラマだけは見たいと思った。

・・・・・・が、いくら蛆でも、これはないだろうという出来。

小林信彦の「降りられんと急行の殺人」くらい、読まなかったのか。
やるなら徹底的にやればよかったのに。

笑っていいのかマジメにやってるつもりなのか、あまりにもチグハグである。

どんな過程を経て、こんなもんになったのかは知る由もないが、
ミタニさんは、これを良しとしたのだろうか。
したのだったら、まだ救われる。
私がもし彼だったら、情けなくて泣くだろう。

局の意向丸出しのキャスティングと登場人物の名前。
お気に入りの八木さんをバーグマンに見立てた位が彼らしかった程度。


ポワロ役の野村さんも、可哀相だった。
笑えなかった。
こんな風に演じてくださいとでも言われたのだろうか。
狂言回しにすらなっていない。

ポワロは気高い男だが、繊細な一方、清濁併せた懐の深さも持っていた。
常に外国人として扱われ、どこへ行ってもよそ者だった。
戦争の影を背負い、灰色の脳細胞を誇ってはいたが、それゆえに孤独だったのだと思う。

髭の手入れに余念がない、どんなに気取った小男でも、これはないだろう。
肝心かなめのポワロがこれなら、他の登場人物でも遊べばまだ良かった。

ミステリのコメディー化は可能だ。
このドラマの最大の失敗は、「局の都合」が見え過ぎたことである。
全日本の放送と、本質は同じ。
せっかくの脚本を、粉々にした。

これだけの俳優を連れてきて、オリ急を題材にしてこの結果。
最初から最後までチグハグなままだった。
蛆はミタニさんを道連れに加え、今後も治癒することなく、朽ち果てていくのだろう。

追記

そうそう、アルバート・フィニーの映画版。
デイヴィッド・スーシェ版。

私はどちらも苦手だった。
シドニー・ルメット監督の超豪華俳優を揃えました版も、あのバーグマンにアンソニー・パーキンス、ショーン・コネリーにヴァネッサ・レッドグレイヴ、それぞれの俳優は好きだったが、映画の宣伝はド派手で嫌だったのをハッキリ覚えている。

私はアン・モロウ・リンドバーグの「海からの贈り物」を繰り返し読んだ時期がある。

夫はほとんど家にいず、知る人もいない初めての土地でのたった一人の子育ては苦しかった。
どん底だった時、家事と仕事の両立に逃げたくなった時、いつも思い出したのは彼女の残した本の一節だった。
「どんな女性にも、一人になる時間が必要である。」(多分こんな感じだったと思う)

そうだ、自分に必要なのは一人の時間。
それをこれほど欲して何が悪いのだ。

友人に恵まれたおかげで苦しい時期は抜け出したが、リンドバーグ婦人の言葉にも、どれほど救われたかわからない。

スーシェ版は、ポワロの「正義とは何か」という苦悩が加えて描かれており、それだけに厚みがあった。
事件そのものもリンドバーグ事件を扱ったノンフィクションが蘇るかのごとく、暗く辛かった。

原作もクリスティの作家魂が炸裂した作品だった。
「青列車の謎」で、彼女は初めてプロとしての自分を自覚したと書いてはいなかったか。
ブルートレインをもう一歩踏み込んで描いたように思えたオリエント急行。

プロの物書きとして、時には冷徹に現実から抽出したエキスを作品に注ぎ込む。
クリスティーはこのオリ急を書いた年、意欲的に創作を重ねた。

作品に好き好きはあろうが、傑作だと思う。

三谷作品を今更不治で見た私もどうかと思うが、パロディーを作るなら、徹底的にやるべきだったのでは。
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