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冒険する彼ら

夏休みの図書館に行くと、家族連れや何がしかのグループ、各種イベントなんかで来ている子供たちの姿をたくさん見かける。

中には夏休みの課題を片付けに、調べ学習に来ている子供たちもいるわけだ。

図書館の司書さんたちは大変そうだったわ。
子供たちは子供の本のゾーンにばかりはいない。

走り回る子、検索用のコンピュータで自分勝手に遊ぶ子、大声で何か友達とおしゃべりする子。

その中で、妙に急ぐ二人連れの小学生を見かけた。
彼らが探していたのは恐竜の名前の由来になった神様の話だという。

自由研究は恐竜について調べよう、そう決めた二人はそれぞれが好きな恐竜にターゲットを絞って参考になる本を探していた。
探せば探すほど、最初のテーマからはほど遠い世界が広がっていく。
そのたびに彼らは図書館の中を駆け回り、コンピュータ検索のキーワードから新しい本を探し出し、次々と知らない世界に足を踏み入れてしまったのだ。
彼らの話を書架の陰で盗み聞きしていた私。
全く怪しいおばさんなのだが、どうしようもなくその話がおもしろくて最後まで聞いてしまった。

簡単に言えば、彼らは恐竜の中に物語を見つけてしまったのだ。
恐竜の体の構造や、分類や、その恐竜が何期に地球のどのあたりに生息していたのかなんてことなんかじゃなく。
ある翼竜につけられた名が、古い文明を持つ、名前も聞いたことのない大昔の帝国に伝わる神話の神様の名をとってつけられたという。
最初に読んだ恐竜事典の中のただその一文に、彼らは強烈に惹かれてしまったのである。
そして探し出したのが「神話」や「メソアメリカ」と呼ばれる地域についての専門書だった。
本当にあるのだろうか?「神話」の中に恐竜と同じ名前の神様の名が?

彼らのワクワク加減はその興奮した口調と見開いた眼にはっきりと見て取れた。

子供が専門書を読むことは容易ではないが、彼らは目次を手掛かりに、ついにお目当ての翼竜と同じ名前の神話の神様を本の中に見つけ出した。

「あった!ほんとにあったよ!」
本にはその神様の像の写真まで載っていた(らしい)。

「背中は羽毛で覆われてるんだって。」

「だから翼竜?」

「なんか、風の神様で、雨や水の神様をどうにかできる神様だって。えらいってこと?」

「そんなえらい神様の名前のついた恐竜なら、きっとやっぱりかっこよかったんだ。」

「世界最大級って書いてあったもん。」

その神話の生まれた文明が「マヤ文明」であろうと、「アステカ帝国」に伝わる神話であろうと、そこから先はその二人の頭の中に広がった世界なのだろう。
よくわからなくっても構うものか。
あとは専門書に載っている地図が、世界の中のどのあたりにあるのかだけが知りたい。
そうして、古代南アメリカの神話という獲物を携え、今度は世界地図を探しに二人は駆け出して行ったのだ。

ただ夏休みの図書館で見かけたちょっとした光景なのだけど、私はその数分間の彼らの中に、冒険する人たちを見たんだと思う。
何か宝さがしでもしているような、手掛かりを次々に見つけ、謎を紐解く探偵ごっこでもしているような。

彼らにとって、きっとこの小さな町の図書館は今だけ、広い世界に映ったのではないかしら。
確かに物理的にも広い図書館ではあるけれど、彼らの目に映ったのは古代神話にまで遡った世界。

男の子というものは、こういった冒険ができるものなんだと恐れ入ったわ。

図書館では静かに。走ったり騒いだりしない。それはお約束ではあるけれど。
・・・それでも、こんな冒険だってありではないのか?
夏休みなんだもん。



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