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『最後の講義 映画とはフィロソフィー』大林宣彦

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『最後の講義 映画とは〝フィロソフィー”』大林宣彦/主婦の友社

NHK『最後の講義』の完全ノベライズです。
番組ではカットされた部分も全て収録。


大長編『花筐』を撮り始めた矢先に受けた肺がんステージ 4の宣告。
病を『得た』大林宣彦監督が次世代に残した言葉の数々には
実に多くの映画人、作品の名が出てきます。

生きている人、すでに別世界に逝かれた人。
それはもう賑やかなほど。

その賑やかさは何かあの世とこの世を繋ぐ葬列のようなのに
懐かしさと愛しさで泣き笑いしながら読みました。



大林監督は映画『HOUSE』を『僕の中に潜む戦争』だと言います。

『HOUSE』の中に原爆を描いたとも。

公開当時日本人は気づかなかったそれに
アメリカの人はいち早く気が付いていたと。

私はこの映画を
リアルタイムで何度か映画館で観ているのですが(当時すごいヒット作でした)
夕陽の赤さえ怖い夏の奇怪なホラー映画だとずっと思っていました。

本書の後半に
写実で描いても一流だったピカソが『ゲルニカ』を何故あんな形で描いたのか
その考察を語っているのですが
大林監督の『HOUSE』はそれと同じやり方だったわけです。

これはすごく腑に落ちました。

やなせたかしさんの著書にも
その人生の根底にあった『戦争体験』が語られていて
胸打たれるものがありました。

それは水木しげるさんも同様でしたけれど
大林監督には大林監督の戦争の捉え方があって
優しいので救われるのですが
その語り口は声高な『戦争反対』よりも余程説得力を持って心に届きます。

9・11がもたらしたアメリカ映画の変化
ジョージ・ルーカスが9作品作る予定だった『スター・ウォーズ』を6作で降りた理由。

立川談志が語った『本気で日本人を生きた』時の儚さ。

『表現者は「ゆるキャラ」になってはいけない!』という一節には
私さえ身が引き締まる思いでした。

『大林チルドレン』と呼ばれる人たちの中にこう話す人がいたそうです。

『寅さんも好きで観てましたけど、寅さんを観て自分も映画がつくれるという気にはなりませんでした。でも、同じ頃に大林さんの映画を観ると、カメラさえ持っていれば映画を撮れると思えたんです。』156p

この『アマチュア』な感じがいかにも大林監督を表していて
大林さんもこれに対して
『アマチュアであるからこそ、好きなように撮ることが許されるのです。』と語っています。

番組から書き起こされたこの『口述』のような優しさが
大林監督の人となりを伝えているようでもいて
これはもう泣きます。










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