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三島由紀夫『レター教室』

『レター教室』三島由紀夫/ちくま文庫

装丁は安野光雅さん。緋色で『LETTERS』って書いてある色調が好き。


1966年(昭和41年)、週刊誌『女性自身』9月26日号から翌年1967年(昭和42年)5月15日号に「三島由紀夫レター教室――手紙の輪舞」として連載された。単行本は1968年(昭和43年)7月20日に新潮社より刊行された。文庫版は1991年(平成3年)12月4日にちくま文庫で刊行されている。
Wikiより



最初の人物紹介で戯曲かしらと思ったけれど、なんと女性週刊誌の連載だったというから驚いた。
ページをめくる度、これは残しておきたい、と思うところがあるので付箋を付けていったら。

2020012712523560b.jpeg

ピンボケですが、付けた付箋がこんなになったwww

こんなことは初めて。

当時としては言葉遣いも風俗も斬新だったのではないかと思う。
『C調』言葉、肯定文の『ぜんぜん』の使い方、テレビとオタク文化などの表し方。
全く古びていないことに驚く。


シリアスではないからと言って、この『レター教室』がエンターテイメント一色で語られるとしたら勿体ないので一応書いておくが、本の帯の『三島由紀夫の最高傑作』という文字は嘘じゃないと思う。

面白く幾通りにも読めて、しかも年代によって読み方が変わっていくという多重構造。

例えば

『女の投書狂や身の上相談狂は、たいてい、ものすごく大きな帽子をかぶっている女のようなもので、帽子で人をおどかし、また、その帽子で自分の顔をかくすことができるのです。』レター教室P -133



どうです?
毎日ネットに駄文を長々と書き連ねている孤独な歳を取った自分が、否応にも浮かんで来る。
ひゃー。
こうも自分の姿を的確に書かれては、もう帽子で顔を隠してふて寝でもしたくなる。

連載だった筈なのに、この構成力。
サラッと書いたように見えて、どの一節も読み飛ばせない深さ。
40歳そこそこで書いたというのが信じられない。
天才。

5人の男女が代わる代わる手紙を互いに書き送る、その中でストーリーが進んでいく。
手紙ほどプライベートなものはないのに、彼らは何故か自分が貰った手紙を他人にわざわざ読ませる。
その『濃密な中身』が5人の関係に波を立て彼らを揺るがし、大団円へと導く。

登場人物はこちら(この紹介はあくまでも私見。興味がある方にはWikiの客観的な人物紹介をお勧めする)

氷ママ子  
45歳の未亡人。悪女設定。
かなり肥っているが、美人らしい。英語塾の経営者。過去に若い男に入れあげて振られた経験あり。大きな息子が2人いる。

山トビ夫
45歳の有名ファッションデザイナー。
チョビ髭を生やし、痩せている。私見だが、横にカニ跳びする様子は、赤塚不二夫の『イヤミ』を彷彿とさせる。妻帯者だが恋愛は自由らしい。実は田舎の出身で、ママ子とは気のおけない親友。


空ミツ子
20歳のOL。ぴちぴちでぷりぷり。元ママ子の英語塾の生徒。 25歳も年上のトビ夫から誘いの手紙を貰う。彼女の肉体を褒めちぎり、自分と寝てくれと誘うトビ夫の手紙をタケルに見せた上、大事に取っている。歳を取った時に、その手紙が写真よりも雄弁に自分の若き日の美しさを伝えるものだと知っている。

炎タケル
23歳。イケメン。芝居の演出の勉強をしていて、演劇論をぶつのが好き。多分茨城出身。所謂好青年なのか、借金を申し込んでも返済無しでお金を貰えるし同性にラブレターを貰ったりもする。純情なのか図々しいのかよくわからない。


丸トラ一
25歳。空ミツ子の従兄。今でいうオタク。とにかくテレビが好き。
この物語では狂言回し的な役割を担っており、森見登美彦の「四畳半神話体系」の登場人物、小津のように結局は物語の中心にいるのは彼のように思える。
適度なバカと認識され『紙屑籠』呼ばわりされてさえいるのに、ある時は物をねだりそのために心中まで持ちかけ(読みようによっては、この心中に対する軽いパロディが太宰を思い出させる。どんだけ好きなんだ)、果てはスパイになり結局欲しいものは手に入れている。
テレビを見ながら食べているだけでなく、オタクならではの思考回路と観察眼で、氷ママ子の策略を見抜く。


作者の三島由紀夫は最後に現れ、読者に手紙の書き方の要点を教授。かなり気難しい。

若い人が読めば氷ママ子は策略家の悪女だろうし、山トビ夫はイヤらしい浮気オヤジだ。

でも氷ママ子よりずっと歳をとってしまえば、彼女は可愛いただの女と化し、山トビ夫は経験豊富なダンディーになる。

彼らは皆手紙を出すことによって嫉妬を煽り騙し騙され、罵詈雑言は裏返って愛の言葉になる。

恋愛倫敦のようにくるくると手紙は行き来するが、さすがに三島由紀夫はこれを『レター教室』として最後にチクリとこちらに書いて寄越すのだ。

『世の中の人間は、みんな自分勝手の目的に邁進しており、他人に関心を持つのはよほど例外的だ、とわかったときに、はじめてあなたの書く手紙にはいきいきとした力がそなわり、人の心をゆすぶる手紙が書けるようになるのです。』
レター教室 P -221



今のSNSの炎上だって、三島の手にかかれば、3行で片付く。


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