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兄・宇野昌磨

『兄・宇野昌磨  弟だけが知っている秘密の昌磨』
宇野樹 著/マガジンハウス

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編集協力がNumberでもおなじみだった松原孝臣さんです。

評判通り、素晴らしい本でした。
表紙のアイドル感に騙されてはいけません。
これまで読んだスケート関連本の中でも1番の良書です。

今朝ブログ記事を2つ書き終わり、出かけるつもりで服を着替えに自室に入ったのが運の尽き。
昨夜も今朝も、ショーマの演技と真央さんの仮面舞踏会をつべで観ていたのがいけなかったのか。
宇野兄弟の表紙から呼ばれるように、視界に入ったこの本を結局その場で一冊読んでしまいました。

宇野昌磨ファンはとっくに読んでいらっしゃるのでしょうが、これは浅田真央のファンこそ読んで号泣する本です。

「昌磨の素顔を伝えたかった」って最初にも最後にもありますけれど、今だからそうなのかもしれませんが、きっとみんな昌磨がこんな選手だって、知ってる。

メディアやSNSがどんなタイトルや言葉で昌磨について煽ろうとも、演技を観ればバレバレです(^-^)

でもその再確認をしていくための強力な裏付けがこの本には書き記してあります。

フィギュアスケーター宇野昌磨の弟、樹君が兄の昌磨について書いている本、という認識で読んだのですが、私の感想ではちょっと違いました。

この本が優れているのは昌磨についてより、昌磨を育んだ家族、周囲のスケーター、コーチ、そして樹君自身のことがきちんと描かれているところなんですね。
だからこそ昌磨がどんな人なのかがかなりダイレクトに伝わってきます。

『浅田真央ちゃん』、『たえちゃん』。

この2つの章には正直言ってとても心打たれました。
淡々と書いているんですよ。
普通の十代の語り口調で。
文字も大きいですし、特に入り組んだことは何も書いていないのに。
全然痛くないけどパンチがあるんです。

『See you again』に、そんな思いが込められていたなんて。
ここはもう涙が出て仕方ありませんでした。この大切なプログラムを、デニス・テンのためにも滑ったのですね。

樹君は全編通して見たこと聞いたことを素直に書いているだけなんですが、その言葉が意外に重い。
何でしょうね、これ。
彼が見てきた世界の重さ。
レジェンド級の人々を間近で見ながら自分を見失わない樹君こそ実はすごい。

樹君は見ていないようでよく見ているんです。大切なことを。

私は『○○の妹(弟)』という括りが嫌いで、ショーマを真央さんの弟、と形容するのもなんだかなと思っていたクチなのですが。
この本を読むと、あ、これは正真正銘弟ですね。
むしろこんな2人が互いに距離感を持ってベタベタしないことの方が不思議です。

サンクスのショーを観に来た時のショーマの恥ずかしそうな様子、きちんと礼儀正しい態度や言葉に、改めて2人の人となりが感じられました。

樹君が真央さんについてこの本に残してくれたエピソードは、主にお母様から聞いた話が元だとは思いますが、ショーマのスケートが氷に優しい、と感じるのは気のせいではなかったんですね。

真央さんは大須のスケートリンクがどんなに混み合って、思うような練習ができなくても決して舌打ちをしたり氷に当たることはなかったと言います。
その真央さんを見ていた昌磨も、腹を立てて氷を蹴ったことは無い。
真央さんの本当の良さを昌磨は良く理解して自分の糧にしてきたのだと思います。

で、樹君は昌磨の演技の魅力にも迫っていきます。

意外にも昌磨は陸のダンスはどちらかと言えば苦手なようす。
なのに氷に乗ると豹変するわけですね。
独特のリズム感がスケートにぴったり合うんでしょうね。
誰をも釘付けにする昌磨のスケーティング。
その上に表現を載せていくのがため息が出るほど素敵です。

私は真央さんのワルツが大好きで、特にフリーバージョンの仮面舞踏会が好きで今もよく動画を観ているのですが、真央さんの音に対する反応はまさに踊る人のそれだと思うんですね。
先日放送されたサンクスの番組で、ラフマニノフのクライマックス、音が一瞬タメる一拍、真央さんの脚はスケート靴で滑りながら、まるで陸と同じようにカツン、とエッジでアクセントを打ったのです。
競技の時にはなかったことでしたが、それを見た時、ああ、やっぱり、と思いました。
彼女は基本踊り手、なところがあるのです。
地上と同じリズムを氷の上で刻めるスケーターなんですね。
舞さんのインスタに、舞さんのプロ並みのダンス動画が時々上がっているのですが、真央さんも陸ではあんな感じで踊れるのだと思います。24時間テレビのタップだって、ツアーの合間に練習してあれですから、並みの踊り手ではないでしょう。

昌磨はその点真央さんとも大輔さんとも違います。
氷の上だからこそ発揮される彼の感性、身体の動き、彼だけにしかないタメ、伸び、リズム。
陸での踊りとは違うスケーティングによる身体表現の確かさ美しさ、個性。
スケーターとしての才能はそこが頭抜けているのかもしれません。

音楽の解釈も独特で。
町田樹さんとは真逆。
昌磨は余計な情報を入れず、自分の感覚で音を表そうとするそうです。
ここでは『月光』を演じた時のことが書いてありましたが、昌磨自身はあの曲からは『月光』を感じられなかったと言います。
でも、彼の『月光』は素晴らしかったですよね。キリキリと張り詰めたあの感じ。
アーティスト。全く礼儀正しいアーティストです。

自分が聴いた音をそのまま演じることが、実はとても勇気のいることだと彼は気がついていないのではないでしょうか。
凡人は常に裏付け(権威付けと言ってもいい)を求めるものですが、昌磨はそうじゃない。

山田真知子先生が昌磨を見た時、

『上手い下手は別として、品があるから育ててみたい』

そう思った、と書いてあります。

さすが真知子先生。これって名言じゃないかと思います。

兄昌磨について書いていながら、樹君自身の魅力がそこここに溢れていて、これは読んでおいて良かったと思います。

PIWのために日本に帰って来る昌磨。
うーん、観たい。

ショーマの近況を伝えてくれる係活動もありがとう、樹君。

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こういう人は、写真を撮りながら世界を回って本を書くと良いのに。




昌磨のお母様がお手本にしているという、あるスケーターのお母さん。
名前は書かずとも、それが誰なのか、わかる気がする。
そういうところも、私がこの本に泣ける理由かもしれません。
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Comments 2

りほ  

こんにちは。
私も結構前に読んで予想外に感動しました。泣けますよねこの本。
そして山田コーチはやっぱり目の付け所が違うなあと関心しました。
有名コーチはまず生徒には厳しいでしょうが、彼女はあっけらかんと明るいのに大事なツボは抑えていて不思議な方。
こういう人を「見る目がある」というのね。
真央ちゃんが一番辛かった時「真央はフィギュア界の宝だから、皆で守っていかなくては」と言ってくれた時はしみじみと涙が出ました。あの時そんなにはっきりと言えたのは山田コーチだけでした。

真央ちゃんを見て育ち、良い所に気づいてしかもその通りに出来る昌磨も素晴らしい。だって選手といってもまだ子供ですよ。
昌磨と樹くんはインスタ等を見ても、二人ともあくまで自然体でとても仲がいいのがすごく好きです。

樹くんの淡々とした文章の行間に滲む愛情。良書でした。
全く真逆ですが、ヤグディンの著書もすごく面白いですのでいつか機会があれば。

2020/01/21 (Tue) 19:24 | EDIT | REPLY |   
mikaidou
mikaidou  
Re: タイトルなし

りほ様

> 私も結構前に読んで予想外に感動しました。泣けますよねこの本。

良い意味で裏切られますよね、予想外です、ほんと。
真知子先生、ミホコ先生の事も昌磨がどれほど大切に思って尊敬しているかを読むと、今季当初コーチ不在で世界に飛び込んで行った昌磨がどんな覚悟で臨んだか、もうプルプル震えそうでした。

> 全く真逆ですが、ヤグディンの著書もすごく面白いですのでいつか機会があれば。

おお、ヤグディン本があるんですね。早速Amazonに行って参ります。
ありがとうございます(*^▽^*)

2020/01/21 (Tue) 20:00 | EDIT | REPLY |   

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