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こころ朗らかなれ、誰もみな

『こころ朗らかなれ、誰もみな』アーネスト・ヘミングウェイ著/柴田元幸訳/スイッチ・パブリッシング

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この本、分厚いハードカバーとはいえ、税込2640円はお財布に痛かった。
私は基本図書館は利用しない。借りて読んで良ければ買い直すので、結局手間なのだ。
同じ本を何度も繰り返し読むし。

ヘミングウェイには学生の頃、挫折していた。
文学史にアメリカを選んだ時、まさかヘミングウェイから道を阻まれるとは思いもしなかった。
おかげでクーパーとバーグマンの映画(誰がために鐘は鳴るですよ、あの)すら未だに観ていない。
『キリマンジャロの雪』なんてグレゴリー・ペック映画だから観たし読みもした。
でも。取りつく島なんてなかった。
『陽(日)はまた昇る』『武器よさらば』?
映画は、オールスターのキラキラキャスト。でも原作は一回きり、読んで忘れ果てた。
当然、メルヴィルの『白鯨』も寝落ち、それもあって『老人と海』はスルーした。

ハードボイルドという括りなら、せいぜい『マルタの鷹』か『長いお別れ』で精一杯だ。
大体こういう系統は夏目漱石と同じく、基本男性の男性による男性のための本じゃないのか。

なのに選ぶ本が見事に似ている本屋さんに、この短編集を勧められた。

読んでみると、面白い。

まるで俳優が次々に登場し、一瞬の仕草、目線、口調、その佇まいでその人物がどんな人間なのかを観る側に植え付けては去って行くように。
ヘミングウェイの魔術にかかれば行間からその光景も人物像もたちまち立体感を伴って立ち上がる。
これはすごいな。
本の中の会話には『間合い』が無いなんて、そんなことは無かった。
ヘミングウェイの前に不可能は無かった。

ニック・アダムズという若い男が短編集のあちこちに現れては作家の面影を残している。

この短編集は翻訳の柴田元幸氏によって編まれ、2012年に出版された。
文体が軽妙で読みやすい。
『殺し屋たち』という短編の殺し屋なんて、『お前、全然喋りすぎなんだよ』なんて言う。
『全然』の使用法に驚いて初版がいつだったのか奥付けを確認した程。

ヘミングウェイの文章が『ドライ』だなんて誰が言い始めたのか。

決して乾いている訳ではなく無駄なくカッコいいだけ。

私が読むには早過ぎた『名作』を読み直す旅は続く。





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