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カポーティとホリー・ゴライトリーと。


またしても引っ越しを画策している割にはのんびりしている相変わらずの週末。

『ティファニーで朝食を』の読書会があるというので行ってみることにした。

トルーマン・カポーティは短編が好きだったので、取り立ててホリー・ゴライトリーに会いたいと思っていたわけでもないけれど、懐かしさ半分で会場の扉を開けた。


『ティファニーで朝食を』は、カポーティが友人だったマリリン・モンローをモデルに書いたと言われている。

ちなみに映画と原作は主人公とホリーの関係もラストも全然別物だ。

モンローが映画のヒロインのオファーを断った為オードリー・ヘプバーンにこの役が回って来たそうだけれど、今となってはこの映画のホリー役に他の女優など考えられない。

10分程遅刻して椅子に座った私の隣では、50歳前後だとしたらかなり手入れの行き届いた美人さんが自論を語っている最中だった。

ハルキ翻訳の本を手に、ホリーの自由奔放さについて語る彼女の考察は斬新すぎて、自分の記憶が間違っているのかとドキドキした。

この手のドキドキは嫌いではない。
謎解きは好きなので、俄然彼女の言葉に集中する。

ハアア。
ホリー・ゴライトリーは作者の憧れで、カポーティがなりたかった人なのかー。
でもマリリン・モンローがこのままだとホリーみたいになっちゃうよって予言していて、それは彼らが友達だったからでー

彼女は最後にこう付け加えた。

『私、この本読んだことも無いし、映画も観てないですけど、こんな感じの話ですよね?』




次に話し始めたのは若い男子だった。

『僕はこの本が好きで、ニューヨークに2カ月滞在して、ティファニーにも行きました。ホリーのように夢を追うって素敵ですよね!』




まじですか。

そっとナビゲーターの店主を見る。

彼女と目が合う。

多分、私の記憶はそう間違ってはいないはずだと彼女の表情から読み取る。

ここからが彼女の力量発揮というところだろう。

様々な意見、感想、読み取った事などを自由に語って良い場ではあるが、本筋は作家の描いた内容を掘り下げることにある。

ホリー・ゴライトリーが恐れた『いやったらしいアカ(村上春樹訳)』。
店主がこだわった一言をその前後のストーリーと共にじっくり読んでいくと、マリリン・モンローについて読んだ本の記憶が立ち上がってくる。そうだったんだ。

『何故ティファニーなのか』。

ティファニーは、富、豊かさや名声という意味だけではないものを含んでいるという話になり。

この読書会で、必ず真面目に原作を読み込んでくる女子が最後に言った。

『ティファニーはホリーに素敵なものを与えてくれるけど、彼女から何も奪わない場所ですよね』

ほんとだ。

嘘つきで、性的にも、心情的にも、魂さえ時に売り渡しながらも、自らのイノセンスを守ろうと闘うホリー。
男達の間でスルリと上手く立ち回る彼女の処世術。これは食うか食われるかの闘いだと私は思っている。
彼女が求めたのは、そんな自分に代償を求めない存在だったのだろうか。

ほおお。

カポーティが都会の風景の中に差し込んでくる残酷なまでの『これ、私❓』みたいなリアリティに痺れていた頃、『ティファニー』には牙が無いと思っていた。

あったよ。


それにしても、村上春樹の影響力に驚く。

店主以外は本文よりもハルキの訳者あとがきを元に話をするのだ。
翻訳ものだと(特にハルキの)私はいちいち、元の英語はなんなのかが気になる。
その点店主が原書を必ず用意しているところが嬉しい。
時代遅れの私は、ハルキの波には永遠に乗れない。

読書会が終わると、若い男子が『で、あなたの好きな本は何ですか』と挑戦的な眼で聞いてきた。

『なんでみんな同じ質問するかな?』

私はこの質問をされるたびムズムズするのだ。だって本好きって程でもなければ読書家でもなく、他にすることがないから活字を読むだけ。
むしろ本はそんなに読んでない。
同じ本を何十回も読むことはあっても、広く読んでいるとは到底言えない。

『いや、自分が何度も何度も読んだり、大切にしていたり、そんな本あるでしょ。どんな本を読んでるのかなって。』

何でも読むよ。そこに活字があれば。

そう言いたかったが、『大切にしている本』という彼の『大切』をぶち壊したくはなかった。

『僕は代表作しか知らないけど、フィッツジェラルドも好きです』

ギャツビーには一度はハマるよね。

『今読んでいるのは又吉さんの「人間」です。』

『あ、私も!一緒だよ。』


結局のところ、私は読書会にはそぐわないひねたおばさんだ。

そう結論付けながら、1人駐車場まで歩く帰り道、なぜかちょっとスキップしていた。


私の好きな本はね、耄碌してなーんにもわからなくなる頃に、『アレかなあ』なんてうっすら気がつくようなもんじゃないかな。
それまでは『この1冊』とか、決める気もなきゃ人に言う気もないんだよん。




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