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世界を救うのは

『天気の子』を観て来ました。
新宿を主な舞台に、作り手は昭和、平成、令和のポップでハイでサブなカルチャーをくし刺に貫いて今の日本を描きつつ。


行き場のない少年少女。
既に一億総中流などあり得ない現実。

一方で観る側としてはどうしても宮崎駿作品と比較してしまいますし、実際『ラピュタ』や『ポニョ』と非常に近い感覚に誘い込まれそうになるのですが、それが良い意味で裏切られてゆくのが爽快でした。

代々木会館へのオマージュ。
かつてショーケンの『傷だらけの天使』の舞台だったこの建物は、取り壊しに入ったそうです。

主人公が携えていた一冊の本。

昨今ライトノベルのお陰でサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』から海外文学に渡航する学生は案外多いのではないでしょうか。

この本が主人公の何かを突き動かす要因になったのならば、やはりもう一度読んでおきたいと思います。

新海誠は、一時代を『共通体験』として残せる良質なジュヴナイルを作り上げました。勿論これは大人だからこそより楽しめる要素が散りばめられていますが。

映画がおわっても、エンドロールの最後まで殆ど席を立つ人はいませんでした。
この映画に携わった多くのアニメーターの名前を追いながら、『京アニ』の事件を思わずにはいられませんでした。

様々な『culture』を内包しながら、ファンタジックでもあり、ストレートに人を愛する気持ちが伝わってきます。

作品のテーマを野田洋次郎が切ない声で歌いながら、観る側に伝えます。
音楽も漸く『PV』から『映画音楽』に近づいて来たこともあって、プロデューサーの川村元気のしたり顔が目に浮かぶようです。
なのに新海誠のナイーブな感じが前面に出ていることに好感が持てるのでした。

長々と書きましたが、要するにものすごく気に入ったってことなんです。
個人的なツボは『高島平』でしたけど🤣

で、思い出したのがこちらの本。

『みどりのゆび』
モーリス・ドリュオン/岩波書店

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ケストナー、エンデ、サン・テグジュペリ。ドーデ、そしてこのドリュオンなどなど。
これら優れた児童文学はどの図書館にも『933英米文学』以外の分類記号を残しています。
『943ドイツ文学』、『953フランス文学』として。
『星の王子さま』、『フランダースの犬』と殆ど同じ系統の物語ですが、素晴らしい翻訳も相まって深い余韻を残します。

何もかも申し分のない美しいものに囲まれて生まれたチト。
学校に上がると、『ほかのこどもとおなじではない』と返されてしまいます。

武器商人のお父さんはチトの教育を園芸係の『ひげさん』や工場の監督『かみなりおじさん』に託し、本物の世の中を見せて勉強させようとします。

『ひげさん』の授業で温室に花を咲かせたチトは、『みどりのゆび』を持っていることを『ひげさん』に見出されます。

刑務所、貧民街、病院などで勉強をするたびに、チトはその『みどりのゆび』でさまざまな花を咲かせます。
やがて戦争が起きます。

チトは武器商人であるお父さんの工場が、遠い砂漠で戦争をしている国の両方共に、武器を売って儲けていることを知ります。

チトはここでも『みどりのゆび』を使いますが、戦争を防いで新たな商売を街にもたらした後、彼は天に向かって緑のハシゴをかけるのです。

美しい心を持ち、大人を改心させると、何故子どもたちは天使となって空に登る運命なのか、考えずにはいられません。

戦争で国をなくし、家族や言葉さえ奪われた人々が数多くいるヨーロッパ。
罪のない子どもたちの亡骸に身を引き裂かれた民族。

さて、『みどりのゆび』を思い出したとは言え、『天気の子』は見事にラストの予定調和を裏切ってくれました。



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