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特急二十世紀の夜



『特急二十世紀の夜と、いくつかの小さなブレークスルー』

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カズオ・イシグロが2017年、ノーベル文学賞を授与された折に行った受賞記念講演が収録された本である。

スピーチを書き起こしてあるので短時間で読める。

タイトルに惹かれて買った本だが、どういうわけだろう。
涙線にくる。


カズオ・イシグロは自分の幼少時から20代、30代、40代と、創作のエポックとなった出来事を実に理路整然と語る。
日本語訳が素晴らしいこともあるが、ページの左側は原文の英語が載せられているので取り立てて言葉に込められる感覚の違いは感じられない。

淡々と創作についての変化や進化をもたらしたきっかけが語られる。

言葉の熱量はよくコントロールされている。まるで彼がインスパイアされたトム・ウェイツの歌のように。

鎧の下にある大きくて痛ましい願いを、読者に垣間見てもらおう。



このスピーチも同じ。

圧倒的な悲しみをまえに、タフガイを貫いてきた男のとりつくろった平静さが崩れ去るのを感じます。



イシグロは歌からすくい取った感情を小説に注ぎ込む。
読み手に一気にカタルシスをもたらす『日の名残り』の仕掛けは、そのままこのスピーチでも同じ効果をもたらしているよう。

過去に積み上がった自分のルーツは現実のそれであるかさえ不確かで。

けれど自分の中にしか残っていないそれらの記憶と記録を残しておきたい。

その記憶はイシグロ個人から国家の記憶の保管にまで広がって行く。


小説でも映画でも演劇でもいい。生き生きと描かれ、確かにこういう人はいると思わせながら、なぜか琴線に触れてこない登場人物がいるのはなぜか。それは、その人物と他の登場人物との関係が、人間的つながりとして面白くないからではないか‥‥‥。




真央さんをはじめとするスケーター達の関係が、様々な形を取ってファンの目にも見える時。

デニス・テン追悼ショー出演のために真央さんがカザフスタンへ向かう。
そのニュースに、私も祈りたくなる。

そこには薄っぺらなリスペクトなどではない、立体的な『何か』が体現されている。

演技は360度評価。
演技を見ながら、人間性まで見えてしまっている。
未だテン君の出自を言い立て、テン君の死を悼むことすらアンチ活動としか受け取れない向きに、この感覚は到底わからないだろう。



日本語のタイトルが秀悦なこの本を読みながら、浅田真央をより魅力的にしている『立体的な人間関係』に想いを馳せる。
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