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2018
08.17

映画 『ペンギン・ハイウェイ』

Category: 映画の話
今日から公開の森見登美彦原作の映画、『ペンギン・ハイウェイ』。

未見の方は、スルーして下さいね。

辛口で申し訳ない、と先に謝っておきます。







映画の『ペンギン・ハイウェイ』。

映像は整っていて美しい。
ただし、ジブリの暖かさ、新海誠のスケールを期待すると、綺麗だけど物足りない。
残念だったのは、アオヤマ君が最初に引っ越してきたばかりの時、家の周りにはまだ何もなく。
荒野の一軒家のように暗闇に灯る我が家の明るい光を目指して父が帰って来る家だったのだ。
あんなオシャレな住宅地の真ん中の、小洒落た家でなくてはならなかったのだろうか。


で、数年後にできたこの街のショッピングモールに、リアルなあの『イ●ン』を使っているんですぜ。
もうそこで一気に覚めてしまった。
エンドロールにはセットのように、ウジと●通の名が。
ファンタジーなんだけどなぁ。



音楽。
作品中の、音が映像と一緒になって心に届いてこない。
エンディングで、宇多田ヒカルに『ごめんね〜〜』と申し訳ない気持ちになる。

宇多田ヒカルは映画のエンディングを作るにあたって、原作を読んでこの曲を作った筈だ。
でなければ『Good night』は書けなかったと思う。



‥‥なのに、映画の本編にはアオヤマ君がお姉さんと交わす挨拶『ぐんない』のエピソードが無い‥‥。

今の小学校の英語教育なんてもう一年生から始まっているし、アオヤマ君程の賢い子どもが初めて覚えた英語が『ぐんない』だなんてことはないだろう。
でもそんなことはどうでもいい。
お姉さんと僕が夜のカフェでチェスをするシーンはあったのだから、ここはもっと日常的かつ印象的なシーンにしてよかったのでは。


で、キャラクター設定。

無難すぎて、アオヤマ君の『おっぱいのことを考えると、大抵のことは気にならない』という可笑しさ、彼独特のユーモラスな味がそこなわれてしまった。

ウチダ君は弱虫なようでいて、物事の本質を見抜く鋭い観察眼も哲学的な考察力さえ持っている。
映画のウチダ君より、ずっとだ。

ハマモトさんは映画ほどツンケンもしておらず、型にはまらない女児。
アオヤマ君に負けないくらいの知性と冷静さだって持っている。
お姉さんを警戒する彼女を、ただの嫉妬だと読むのは甘い。
お姉さんは人間ではないらしい、そこに対する女のカンも含めてのハマモトさんの態度。
彼女が情熱を注ぐ『研究』にお姉さん(大人)が関わることへの警戒心がまずあって、だからこそハマモトさんの研究とお姉さんの体調の波形の一致を発見した時のアオヤマ君達の興奮は大きなピークになるところなのだ。

なにせ、彼らはいっぱしの研究者なのだから。



本来、『ペンギン・ハイウェイ』は『研究・探検・冒険・そしておっぱいと恋』の物語。
アオヤマ君のノート、ハマモトさんとの研究は大きなウエイトを占めている。

アオヤマ君が研究する、お姉さんとペンギン出現の謎解きと、ハマモトさんの浮かぶ丸いゼリー状の物体の研究、その2つとお姉さんの体調が連動している、全てが繋がっていることに気がつく時のカタルシス。

これはそもそもペンギンのSFというよりは、『世界の果て』やら『人間はどこからきた』みたいな哲学的な話なんだと思う。

監督は原作を上手くまとめてはいるけれど、心を描くに至っていない。

森見の原作があれほど長くなったのは、その世界を読者にわかるように形容する必要があったからだろう。
でも映画はその部分を一目で見せられるのだから、もっと心に踏み込むことはできた筈だ。

ジブリの凄さは心理描写に長けていることだ。
音響にさえ最大限に力を発揮させる。

この映画を観ていると、ジブリの描く『線』さえ恋しくなる。
理屈っぽい『ポニョ』で良かったのに。

森見は個性的な作家だ。
作品の『個性』を映像で見せるなら、『夜は短し〜』くらいデフォルメするしかないかもしれない。
乙女の映画だって、あの学園祭の無駄でヘタなミュージカルシーンさえなければとても良かったのだ。

アオヤマ君、ウチダ君、ハマモトさんの冒険。
スズキ君一派と、大人たちの存在感。

地図を広げ、時空が歪んでいたことを知るシーンの淡白さ。
スズキ君の不思議なタイムスリップは割愛。
もちろん時間の制約がある以上、仕方のないことかもしれないけれど。

ハマモトさんのお父さん達を救いに行く緊迫した場面も、その前に少し設定を変えてしまっていることが響いて思ったほどのハラハラ感がない。

脇のキャラクターがもっと生きていればなぁ、と惜しかった。


こんな失礼なことばかり書いていますが、映画はセリフもきちんと原作に忠実でしたし、原作さえ考えなければぜんっぜん良かったと思う。

ただ、宇多田ヒカルのテーマ曲がかわいそうなだけで‥‥‼︎





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