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2018
08.11

小説『ペンギン・ハイウェイ』🐧

Category:
『ペンギン・ハイウェイ』
森見登美彦/角川文庫

試写会に当たったので原作を読んでおこうと本棚を探してみたらゴリオが持って行ったらしく、買い直した。
映画の公開に合わせてブックカバーの形で表紙も映画のキャラクターになっていた。
映画は17日公開なので、映画の感想はその後追記すると思う。

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以下ネタバレ有りで筋書き無しです。

『ペンギン・ハイウェイ』は森見登美彦の長編で、第31回日本SF大賞受賞作。
文庫版の解説は萩尾望都さん。
萩尾さんは『バルバラ異界』で第27回のこの賞を取っている。

誰が解説を書いているかは私にとってとても大切で、例え筋がわかってしまおうと解説者が好きだと、まずそこから読む。
萩尾さんは解説の最後に
『アオヤマ君、君はぼくは泣かないのですと言うけど、私は泣くのです』と書いた。

小学4年生の主人公アオヤマ君が、『ぼくは泣かないのです』と言っても、大人は泣くのだ。
私も。

アオヤマ君の語りには、いつもの森見節が当然あらわれる。
でも『ペンギン』が成功しているのは、アオヤマ君の一人称がどこまでも生真面目で真っ直ぐな彼のキャラクターをあらわしていて、それだけに読めば読むほど切ない。

一人称で映像化にはうってつけの世界を描き出すのがいかに難しいか。
この小説の文字の殆どが『ぼく』が経験した信じがたい現象と、彼を取り巻く世界の描写に費やされていることでもよくわかる。
読み手がクドクドと長い独白に付き合いながらその世界に入り込めるか否かで好き嫌いが分かれるだろう。

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ハリーポッターの世界をペンだけで描き切ったリンダ・ローリングが(日本人は翻訳者に恵まれたことも大きいけれど)いかに凄かったかを、思い知る。
ハリーポッターの映画版が良かったのはどう甘く見てもアズガバンくらいまでではなかっただろうか。
小説の映像化は難しい。
背景は一目でわかっても、登場人物の心の中に入り込むには、作り手にも観る側にもそれなりの経験値とスキルが要求されるのではないか?

昨夜『ハウルの動く城』 を観ながら、『ソフィーも時間を遡ってカルシファーとハウルの契約(呪い❓)の謎を解いてますなあ。』と思っていた。
結局のところハウルの頑張りも虚しく、全てを解決したのってソフィーじゃね?とか。
宮崎作品の前には原作世界との比較は意味がない気がする。
素晴らしいから。
それにハッピーエンドなんだから。


『ペンギン・ハイウェイ』は映像にすべきだと思ったし、本は子ども向け仕様ではないので、映画なら誰もが楽しめるものになるんじゃないかととても期待していた。


読みながら何度も笑ったし、何度も泣いた。
正直ここ数年読んだ本の中では1番心揺さぶられたと言っても良いほどだ。

それは多分私が男の子の母親であることと関係していると思う。

この本を読んでいる途中で、『なぜフィクションの中の主人公は手の届かない相手を好きになるのだろう?』と思った。
アオヤマ君は相手が人間じゃないとは知らなかったんだから仕方ないにしろ、追い求め続ける初恋の人のハードルが高すぎる。


本を読みながら、りんたろう監督の『銀河鉄道999』を観たくなって結局丸々見てしまった。
ヒロインのメーテルは機械人間というか、テツローの母の身体を写し取ったとかいう時点で、既に『人間』とは言えないだろう。

初恋を邪魔するのが年齢や時間だけでなく、『そもそも人間じゃない』のはアオヤマ君と同じ。

『時をかける少女』のラベンダー成分とタイムトラベルの関係はわからなくても、少なくともケン・ソゴルには未来人だという身元があり。メーテルは『あなたの思い出の中にいる女』もとい機械帝国の女王プロメシュームの娘。

『時かけ』にも『銀河鉄道』にも、初恋のあの人には一応しっかりした身元と遠い先まで進んでしまった『未来の科学技術』がある。

『ペンギン』は理由が薄ぼんやりわからないまま、哲学のように『人はどこから来てどこへ行くのか』と問いかける。
ペンギンの発生も、スズキ君のちょっとしたタイムトラベルも、お姉さんのことも結局わからずじまいだ。
お姉さんにも自分のことがわからなかったのだから、どこまでも正体は不明。

『世界の果てを見るのは悲しいことでもあるね』

ペンギン事件の解決と共にお姉さんを失ってしまったかなしみに、アオヤマ君は理不尽さを感じる。


世界の謎とお姉さんを、これから未来に向かって研究しようとするアオヤマ君。
未来のどこかでまた愛した人と出会えるかもしれないのは芳山さんやテツローと同じだが、正体不明過ぎてお姉さんは遠そうで。


ここで、だから『ペンギン』は厳密に言えば『空想科学小説』じゃないんじゃ?と言ってしまえばそれまでだが、他の『SF大賞受賞作』だって、SFと言って良いのかどうかわからないものも多いのでそこはもうどうでも良い。

誰かを一途に愛すること。

アオヤマ君の気持ちだけは、とてもよく伝わったから。

そして、泣くのだ。




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コメント
こんにちは~。

ちょうどテレビで映画の宣伝をしていたので「これってどうなの」と息子(お盆で帰省中)に聞きました。

面白いよ モリミの本でいちばんじゃない ヘンな京大生も出てこねえし

と言うので読もうと思ってたところです。

ご子息はお戻りですか?
ぢょん でんばあdot 2018.08.13 09:12 | 編集
ぢょん子さま

こんにちは(^^)

息子さん、さすが読んでいましたねー😊

> 面白いよ モリミの本でいちばんじゃない ヘンな京大生も出てこねえし

よかったー。
ヘンな京大生...。私もそう思います🤣
子どもの話なのに子どもの本じゃないのが不思議ですね。

うちの息子は全く家には寄り付きませんよー(;o;)
mikaidoudot 2018.08.14 08:36 | 編集
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