現在の閲覧者数: バンクス氏の救済 - 老嬢の鼻眼鏡

バンクス氏の救済

『ウォルト・ディズニーの約束』

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原題は 『Saving Mr. Banks』
直訳すれば「バンクス氏の救済」で、これは映画のテーマそのもの。
バンクス氏が、メリー・ポピンズの原作者、トラヴァース夫人にとって本当に「救済」されたかどうかはわからない。

映画.comより http://eiga.com/movie/77784/

米ウォルト・ディズニーが、自社の映画製作の裏側を初めて描いた作品で、1964年の名作ミュージカル映画「メリー・ポピンズ」の製作秘話をトム・ハンクス&エマ・トンプソン主演で映画化した。

ウォルト・ディズニーは娘が愛読している児童文学「メリー・ポピンズ」の映画化を熱望し、原作者パメラ・トラバースに打診するが、トラバースは首を縦に振らない。

やがてイギリスからハリウッドへやってきたトラバースは、映画の製作者たちが提案する脚本のアイデアをことごとく却下。なぜトラバースは「メリー・ポピンズ」を頑なに守ろうとするのか。

その答えが、幼い頃の彼女と父親との関係にあると知ったディズニーは、映画化実現の最後のチャンスをかけ、トラバースにある約束をする。監督は「しあわせの隠れ場所」のジョン・リー・ハンコック。




メリー・ポピンズの原作者P.L..トラヴァースをエマ・トンプソン、
ウォルト・ディズニーをトム・ハンクス、
リムジンの運転手ラルフはポール・ジアマッティ、
トラヴァース夫人の実父をコリン・ファレルと、
俳優陣が素晴らしかった。

私は映画のメリーポピンズが大好きだったので、この映画の原作が、実は完全に作者トラヴァースの幼少期の裏返しとして描かれていることに結構な衝撃を受けた。


映画は誇張でもなく、すんなりと、たまらなく辛く、でも少しだけ救われる形で描かれる。

ディズニーですから、と言えなくもないが、ディズニー映画にしては大人の映画だし、個人的には素晴らしかったと思う。

トラヴァースの育った家庭と、見事なほどの映画のメリー・ポピンズとの裏表。
「ミスター・バンクスを、救済しよう」というウォルト・ディズニーの最後の口説き文句は泣けた。

メリー・ポピンズのイメージがトラヴァースの過去の中に随所に散りばめられ、映画とは正反対だった事実。

この映画の企画段階でのいきさつが興味深いのでwikiから転載。

Wikipediaから

2002年、オーストラリア人プロデューサーのイアン・コリーはP.L.トラヴァースのドキュメンタリー映画『The Shadow of “Mary Poppins”』を製作した。

製作段階でコリーは「明らかな伝記映画」の要素があることに気づき、オーストラリアのプロダクションであるエッセンシャル・メディア(英語版)にスー・スミスの脚本で長編映画化すべきであると持ちかける。この企画はBBCフィルムズおよびRuby Filmsのアリソン・オーウェンの興味を引くこととなる。BBCフィルムズは企画への融資を決め、オーウェンは脚本の共著者としてケリー・マーセル(英語版)を起用する。

マーセルの草稿ではトラバースと彼女の息子に関わるサブプロットが削除され、また物語をトラバースとディズニーによる製作争いとトラバースが抱える子供時代の問題との取り組みの二筋に分けられていた。しかし、このマーセル版は明らかにウォルト・ディズニー・カンパニーの許諾なくしては使用不可能である音楽および映像の知的財産権にあたる部分を大きく取り上げていた。

「ディズニーという大きな壁を見て見ぬふりしていたよ。」コリーはそう回想している。「ウォルト・ディズニーは映画のキーとなるキャラクターだったし、メリー・ポピンズからいくつか音楽も使用したかった。いずれはデイズニーに伺いを立てなければならないのは皆わかっていたよ。」

2011年7月、イタリアのイスキア映画祭にてオーウェンはジャズミュージシャンのコーキー・ヘイル(英語版)と会う。『メリー・ポピンズ』の作曲を務めたシャーマン兄弟のリチャード・シャーマン(英語版)とは近所づきあいがあるというヘイルがシャーマンに脚本を渡すことを提案。ヘイルに渡された脚本を読んだシャーマンは企画を支持する。

その後マーセルの脚本は出来が良いにもかかわらず製作には至っていないために、プロデューサーたちからランクリン・レオナルド(英語版)の「ブラック・リスト(英語版)」に投票された。

2011年11月、ウォルト・ディズニー・スタジオの製作社長であるショーン・ベイリーはマーセルの脚本の存在を知らされる。ベイリーはディズニーCEOのボブ・アイガーを含むスタジオ重役たちと共に製作の可能性について議論した。スタジオ会長のアラン・F・ホルンはスティーブ・ジョブズからの言葉を借りて映画を「brand deposit」と称した。

アイガーは映画化を許可し、ウォルト・ディズニー役としてトム・ハンクスと連絡を取った。ウォルト・ディズニーがメジャー映画で描かれるのは初めてのことである。役を引き受けたハンクスは、「ピカソやチャップリンと同じく世界に影響を与えてきた人物を演じる機会」だと考えたという。ハンクスはウォルト・ディズニー・ファミリー・ミュージアム(英語版)を何度か訪れ、ディズニーの元従業員や、また娘のダイアン・ディズニー・ミラーを含む親族たちにインタビューを行っている。

メリル・ストリープとの交渉に失敗した後の2012年4月、エマ・トンプソンがP・L・トラバース役の最終交渉に入った。トンプソンは自身が演じた中で最も難しい役柄の1つであり、「彼女はとてつもない複雑さと矛盾を抱えた女性だった」と述べている。

また「悲しみについて、彼女は非常に優れたエッセイを書いている。彼女は実際、非常に悲しい女性だった。つらい幼少期を過ごした人よ。父親はアルコール中毒で、母親は自殺を試みて。彼女は生涯をまさしく深い悲しみの中で過ごしたのではないかしら。それ故に多くを成し遂げたのよ。」とも。

ウォルト・ディズニー・ピクチャーズの承認によって、製作チームはトラバース、ディズニー、シャーマン兄弟そして脚本の共同著者ドン・ダグラディらのやり取りが含まれる『メリー・ポピンズ』の企画開発中の音声録音と1940年代から1960年代にかけてのトラバースとディズニーの書簡の利用が可能となった 。

当初、監督のジョン・リー・ハンコックはディズニーの関与について、創始者の有利になるよう脚本を手直しするのではないかという疑念を持っていたという。しかしマーセルは、ディズニー側は「明らかに脚本への参与や不都合な描写の削除、またウォルトを変えてしまうことを望んではいなかった」としている。

ウォルト・ディズニーに関する描写についていかなる干渉も受けなかったものの、ディズニー側は喫煙シーンを省くことを強く要求した。
これは自社映画から直接的な喫煙描写を排除するという会社理念によるものであり、また、アメリカ映画協会によるレイティング指定を避けるためである。





原作者が、自分の作品の主人公を「売りものにする」ことは魂を引き裂かれるようなものだということをディズニー自身も理解していた。

映画にアニメーションが挿入されることを知り、契約を反故にしてイギリスへ帰ったトラヴァース夫人をディズニー自ら説得に追う。
ディズニー自身が夫人に自らの生い立ちと父を語るシーンは胸にしみる。

ディズニー映画だから、と言ってしまえばそれまでだ。

でも、ウォルト・ディズニーが娘たちに「メリー・ポピンズの映画を作る」と約束した話、
そして唯一トラヴァース夫人と心を通わせたリムジンの運転手の娘も「メリー・ポピンズ」の愛読者であったこと、
ディズニーが原作に惚れ込んだ気持ちは、本の書き手ではなく、読み手として十分すぎるほど理解できる。

トラヴァース夫人の父も銀行家であり、夢見がちな大人だった。
彼にとって銀行はまるで檻のように息苦しく、辛い場所だった。
酒に溺れ、病で早逝する父をコリン・ファレルが好演している。

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この写真の場面、言葉としては出てこないがオーストラリアだそうだ。
彼女の父は「私たちにはケルトの血が流れているんだよ」と娘に語る。
「いかにもイギリス人」として振る舞うトラヴァース夫人だが、生まれも育ちもオーストラリア。

複雑な彼女のコンプレックスが言葉を多用せずに映画でもわずかに描かれる。

メリー・ポピンズのプレミアに呼ばれなかったトラヴァース夫人は自らハリウッドに乗り込むが、出来上がった作品を見ながらあらゆる表情を見せる。
眉をしかめ、あきれ、時に失笑しながらも、父親バンクス氏のことをバートが子供たちに語って聞かせる場面、ミスターバンクスが銀行を首になり、寂しげに歩くシーンに涙を流す。

ディズニーに「泣いている理由」を問われ、「アニメが耐えられなくて」と答えた時のトム・ハンクスの表情が実に味わい深い。
彼女が泣いたシーンに、アニメのペンギンは映ってなどいない。

南半球出身の同僚がよく言う。
「僕たちはよく、残酷さを笑い、悲しみをユーモアでくるみ、真逆の言葉で真逆の気持ちを表すんだ。」と。
彼はアメリカ人とヨーロッパの血筋を色濃く残す自分を一緒にされることをとても嫌う。

彼の言葉を思い出すと、トラヴァース夫人の複雑な反応(とその描き方)も納得できる気がする。

映画の終盤、ミスターバンクスが子供たちと一緒に凧揚げに向かうシーンでは一緒に歌を口ずさんでもいる。

後味は決して悪くないが、これはとても悲しい映画。

最初に作られたドキュメンタリーのタイトル通り、「メリー・ポピンズの影」なのだ。
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