2017
03.25

牛飼いになるには

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「牛飼いになるには、まず牛になること。」

「蜂飼いのくらしは花とともにある。花のことを知らずに蜂は飼えない。」



農業に関する至言の数々は、「農文協」編「農家になろう」のシリーズにわかりやすく載っているものだ。

「農家になろう」と言っても、別に指南書ではなく、写真集としても、動植物を知る足がかりとしても読むことができる。私が図書館で読んだシリーズ全5巻は、それぞれ写真家も違えば、取材した農家も、作っているものも違う。

酪農、養蜂、イネやりんご、トマト栽培など、どの巻も、その写真の美しさにまず見惚れてしまう。
花咲く祭りのような春、夏の朝の香り、秋の実りの豊かさ、冬の澄んだ冷たい空気。

的確なショットで季節ごとの農作業、手順を全面の写真と言葉で伝えている
が、巻末にはどれも「解説」が載っていて、言葉の詳細を知ることができる。

「蜂群崩壊症候群」なんて、一体何だろうと思ったら、一晩のうちに、卵や幼虫、女王蜂を残して、働き蜂だけが大量にいなくなる現象だという。原因はわかっていない、養蜂界のミステリーなんだそうだ。

私が特に詩的な文章だとうっとりしたのが第1巻の「乳牛とともに」。写真家、みやこうせい氏の、取材対象へのほれ込みようというか、リスペクトがそこかしこに溢れる。

「牛が異変が起きたと知らせ、何か違うと文句を言う」、「牛が春が来たから外へ出せと言う」こんな風な動物と人間のふれあいが、決してきれいごとに流されない筆致。
“「人間が食べられない草」から「人間が食べられる乳や肉」を作る”という奇蹟に、改めて自分の口にする食べ物の尊さを感じる。

浅草生まれの青年が、北海道の夜空の星を眺めながら牛飼いになろうと決意するくだりなど、目に浮かぶように美しい。
何事かを続けるという困難と、困難の中に見つける喜び。

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