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いつまでも女子


自分が日に日に老いを感じているにも関わらず、更に老いているはずの周囲の婆様方は今日も元気だ。

老人ホームに入り、ようやく落ち着いたかと思った母。

ホームでの人間関係が出来上がり始めた途端、身なりに気を配り始めた。

元々帽子と靴とバッグに目がない人だった。

今は毎日の食事と、毎月ある(多分生活にメリハリをつけようとするための)ホームの行事に着ていく「ちょっとだけ洒落た服」探しに余念がない。

そろそろ枯れるかと思っていたら
意外にも新しい土に適応して息を吹き返した植物のように
「ライバル意識」などをたい肥にしながら色んな意味で元気になってきた。

ということで、母にはホワイトデーを待たずしてゴリオたちへのチョコレートのお返しに洋服をプレゼントしていた。

すると、今度はそれを着てどこかへ出かけたくなったらしい。

久しぶりに伯母の家に連れていけと言う。

伯母は母の長兄の嫁である。
母にとっては義理の姉なので血のつながりはないが、
姉妹のいない母には貴重な親族だ。
伯母が非常に母方の親類に近い特性を持っていることもあるのかもしれない。

特性というのは、
オットが早逝するか、頼りにならないか別れるかで
否が応でもずっと仕事をしなければならなかったとか。
病気には悩みつつも長生きだとか。
優しい顔して毒舌であるとか。
そんなことなのだが。



長くご無沙汰していた伯母である。

彼女に会うのは気が重かった。

伯母はいわば私の仕事の大センパイ。
私が50を前に資格を取るため勉強したことを、彼女は70代まで大学で教えていた。
伯母にだけは、私の今の仕事を伝えるわけにはいかなかった。
大御所の彼女の領分に今頃入り込んだ私など、笑われるに決まっているからである。

私の重い気持ちを見事に裏切るかのような晴天に、オットも車を出す気になったらしく、ついてきた。

母をホームに迎えに行き、伯母の家に向かう。

名目は伯母の長男(私と同じ年の従兄)が開業したお祝いということだった。

従兄は数年前に離婚し、同時に長年勤めた仕事も辞めた。
患っていた目がもう治る見込みがないことがわかり、鍼灸の資格を取ったのだ。

再会するには辛い状況だったが、彼は相変わらずの洒落者で、その姿を見ただけで
ああ、大丈夫だと安心した。

口止めしていたにも関わらず、事前に母から私の話を聞いていた伯母も
今の私にとりあえず理解を示した。

昼食を共にしながらも終始話がはずんで止まらない。

伯母と母は年寄扱いされることを嫌う。

よって目の悪い従兄とヨレヨレの私が互いの母親を気遣うと、
それはもう「ウザイ保護者」扱いされ叱られるのである。

「この年になったら、周りの人が亡くなった話ばっかりでね。
この間、まだ若い人が亡くなったって友達が言うから、一体いくつだったのよって聞いたら
81歳だったんだって。
彼女は82歳だから、確かに彼女よりは若いけど、81でもまだ死ぬには若すぎるって。
そう言われてもねえ。いくつならいいのかしらねえ。」



そう言って笑った伯母は84だが、何と言えば良いのか、この人たちはいつ年寄りになるつもりなのだろう。

誰にも言っていないのだが、私はこの伯母が数年前、彼氏らしき男性と腕を組んでデパートで買い物していた姿を目撃している。
その後彼とはどうなったのだろう。
というか、その彼はまだお元気でいるのだろうか?


母の従姉の話も出た。

そちらはすでに87歳だが、心臓の手術を2度続けざまに受けたばかりだった。
私もお見舞いに行ったのだが、昔から女優のように美しかった(岸恵子にそっくりだった)顔が今も綺麗なままなのには驚いた。
その後母が一人でお見舞いに行った時に彼女が開口一番言ったことには。

「ちょっとあなた、今日着てる服、どこで買ったのよ。」
「この間のあの色の服も良かったわよね。」



そして身の回りの世話をするために訪れていた親戚の娘婿に、自分のお気に入りのコートが無いからとクロゼットを探しに行かせたという。
どこの女王様だ。
また会える機会があるかどうか、そのくらいの状況だろうに。


ということで、こんな婆様ばかりの親類にとって、
私たちなど都合の良い彼女たちのアッシー(敢えて使ってみよう)でしかない。



「次はお花見に集まりましょうよ。」

と、コワいことを言いつつ、伯母はそれから長年続けている研究の勉強会の会場に向かった。

フルタイムで働きながら病気で寝たきりの夫を看病し、離婚した娘の子どもを引き取って育てた挙句、夫を看取り孫を育て上げた今、目の不自由な息子の世話をしながら研究会に出続ける80代。

その上数年前まで彼氏とデートしていた彼女は、いつまでも女子。

アラフォー世代とか、アラフィフなんて、まだまだ尻が青いと思ったアラウンド桃の節句だった・・・。




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