2016
10.14

イノセンスとナンセンスの間(10/28)追記

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「絵本ジョン・レノンセンス 」
ジョン・レノン (著), 片岡義男 (翻訳), 加藤直 (翻訳)

Amazon内容紹介より


奔放自在なことばあそび。つぎつぎに生み出した詩、散文、ショート・ショート。余白せましとちりばめられた自筆イラスト――。ビートルズの天才詩人ジョン・レノンが、その底知れぬ笑いの世界をこの一冊にこめて贈る、ナンセンス絵本決定版。

出版社からのコメント
新版の初版には、片岡義男さんの特別エッセイを付録。




ええと、以下は音楽には全くド素人の私見のみで書いております。
「それ違うんじゃない?」というところも多々あるかと思います。
本を読んだら思い出した、程度の話ですので、
音楽にお詳しい方は、どうか読み飛ばしてくださいませ。



この本には、さすがのAmazonにもまだレビューが載っていない。
感想の書きようも、おススメのしようもないからかもしれない。
ちくま書房の文庫の方には2つほど載っていたけれど。

私は勿論、「有名になる前のビートルズが好きだった」という内容の、本文とはほとんど関係のない片岡さんの特別エッセイから読んだ。

そしてジョンが書いた本文を、少しだけ真似したかのようなポールの「序文」に、一瞬泣きそうになった。

「日本語に翻訳は不可能」と言われた「In His Own Write」は、「かたちの変化ではなく、口に出して言うときの音の変化」で紡がれた、意味をなさない、詩や散文、戯曲めいたものの集まりだ。

それでもショートショート的な話には、えっ?というオチがあったりする。
意味を考える必要はない。楽しめれば、というのは本当だろう。

少しダールっぽい感じだと言えば近いだろうか。
でも、形のないふわっと消えてしまう言葉の数々は、何にも例えようがない。

ジョンの挿絵はエッチングのようで素晴らしい。

片岡義男の解説には、原文を例にとってどのように翻訳を進めていったかが述べられているが、気の遠くなるような作業だっただろう。
私は不可能だと思われたこの日本語訳の語り口がとても好きだ。
声に出して読みたくなるほど。何度でも。
日本語の奇妙奇天烈な言葉の選び方も、全部気に入っている。

それらがどんなにヘンテコな言葉の羅列であろうとも。

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忘れないうちに、記録のための追記

同僚によると、このタイプの「言葉遊び」は元々イギリスでは珍しくなく、
「A Book of Nonsense by Edward Lear 」=エドワード・リア 『ナンセンスの絵本』などが邦訳されている詩人が有名だとか。
その詩人、エドワード・リアは画家でもあったそうだ。

同僚が自分のお気に入りのエドワード・リアによるリメリック詩をいくつかと、ナンセンス詩を原文で見せながら読んでくれたが、(スマホってほんとに便利)全く意味はわからなかったし、わからなくても当然らしい。
ただ、何と心地の良い言葉転がしであったことか。
お返しに太宰の「女生徒」の出だし、息継ぎもできないような中々終了しないあの文体を読んで笑った。
元ネタのファンレターを書いた女性の日記(?)の話と相まって、話はつきなかった。

さて、エドワード・リアのナンセンス詩は「不思議の国のアリス」のルイス・キャロルが継承したと同僚の話は続いた。
ダールの「ダール語」と呼ばれる造語にも通じるが、あれは物語にしっかりとした意味があるので、区別した方が良いらしい。

同僚の好みとしては、ルイス・キャロルのわかりにくさよりは、言葉の一つ一つは難しくないが、話の飛び方が異様に面白いのがエドワード・リアなのだそうだ。
ジョン・レノンが19世紀の詩人の作品を読んで育った可能性はあるだろうが、そのあたりは詳しい方はよくご存知の話なのかもしれない。
絵の才能も似ている気がして、興味深い。

wikiより
リメリック(またはリマリック、リムリック、limerick)は厳格な形式を持つ五行詩で、滑稽五行詩、五行戯詩とも呼ばれる。イギリスでは、エドワード・リアによって広まった。リメリック詩はウィットに富んだものやユーモラスなものであることが多く、時には笑いを目的とした猥褻なものもある。




さて、話は「ジョン・レノンセンス」の流れに戻る。

この本は、井上 夢人の「 ラバー・ソウル 」(講談社文庫) と合わせて読んだ。
「ラバー・ソウル」は衝撃だった。
ミステリとしても十分面白い作品なのに、
ビートルズの蘊蓄が勘弁してほしいくらい出てくる。
こんなに分厚い贅沢な愉しみは、ほんとに、勘弁してほしい。

作品世界に、持っていかれる。

色々考えながら読まずにはいられなくなるのだ。


井上夢人の「ラバー・ソウル」は、アルバム『Rubber Soul』の曲の順にそれぞれの章立てがリンクしていて、それだけでも十分に魅力的なのだが、ビートルズナンバーの歌詞に潜むストーカー気質、変質者傾向が同時に明らかにされていくようで、胸がざわざわした。

私が初めてビートルズを聴いたのは、たしかベイシティ・ローラーズのデビュー当時ではなかったかと思う。
姉のカセットテープ(時代が知れますね)には、ラジオからかき集めた洋楽が色々入っていたのだと思う。
その中にビートルズの「Hello, Goodbye」も入っていた。
当然聞き比べたわけだ。

何も知らない小学生だった。
そのくせ、この2曲を聴いた私は、姉にこんなことを言ったのを覚えている。
「残るのはこっち(ビートルズ)だから」。

姉は当時荒井由実に夢中だったので、ピアノでは彼女の曲しか弾いてもらえなかった。
多分、彼女は内心ベイシティ・ローラーズの方が好きだったのだと思う。

流行りのタータンチェックを拒否した私は、姉に次から次へとビートルズのアルバムのカセットテープを入れてくれるよう頼みこんだ。
テープは何本もダメにした。

中学生になって、姉のおさがりではない、自分のレコードがようやく買えるようになった。
「アビイ・ロード」を真っ先に買った。
「ホワイト・アルバム」はレコードではなく、カセットを買ったと思う。
他のLPは全部姉が進学する時に残して行ったものを貰った。

けれど多分それらには日本語の歌詞まではついていなかったのだ。

姉からもらった文庫版の「ビートルズ詩集」を持っていたが、それを読んでも物足りなかった。
そこで「Maxwell's Silver Hammer」を自分で辞書を引き引き日本語訳してみて、びっくりした。
この作詞者は「レノン・マッカートニー」となっているが、言葉遊びがふんだんに使われていて、歌っていても楽しい曲だったが、こんな歌だったのかと・・・。

他の歌詞も時折「なんじゃこりゃ」と迷宮入りする部分があった。

無垢でいて、ナンセンス。

意味なんて考えるほうがナンセンス。


「ジョン・レノンセンス」と「ラバー・ソウル」を合わせて読んでみて、
何となく、歌詞の不条理、というか、rhymingの妙、そして時折牙をむく陽気な残酷さというものが、これか、と腑に落ちる気がした。

ジョンの才能は、ビートルズのメンバーの、他の誰とも違っていたのだと思う。

音楽の枠に囚われない、実はどんな芸術でも良かった、そんな自由な才能だったのかもしれない。

本は過去を運んでくる。
希望もかもしれないが、年齢と共に、過去の方が圧倒的に多い。

ああ、そうだったのかと、今頃納得したり、意外に思ったりすることも多い。

私の眼がまだ見えるうちに、
読めるだけの本を、読んでおきたい。











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コメント
おはようございます。ジョンは元々好奇心旺盛で、アーティスティックな若者だったんでしょうね。ヨーコとは出会うべくして出会ったと言う感じ?ジョンの芸術性を体現してくれる存在であったのかなと。そのくせ、人の評価や人気を気にする人間臭いとこがジョンの魅力ですねえ。後に政治的な方向に傾いたのには、多少なりともボブ・ディランの影響があったかもしれません。ディランが「ビートルズの歌には主張がない」と言ったのに、ジョンはショックを受けてた。とは、バーズのロジャー・マッギンの談ですが、そうした他者からも影響を受けつつも、自分を見つめてきたジョンの本質は、我が強くともユーモラスで、人好きな寂しがりやの少年な気がします。
なんか、本の話と外れちゃってスミマセンm(__)m
yuccalinadot 2016.10.14 08:24 | 編集
yuccalinaさま

おはようございます!

> ジョンは元々好奇心旺盛で、アーティスティックな若者だったんでしょうね。ヨーコとは出会うべくして出会ったと言う感じ?


全くおっしゃる通りですよね。内側から溢れてくるものに満ちていた、アーティストだったのだと思います。ジョンの絵を見ると、ヨーコとはソウルメイトだったんだろうなと思わずにはいられません。

>後に政治的な方向に傾いたのには、多少なりともボブ・ディランの影響があったかもしれません。ディランが「ビートルズの歌には主張がない」と言ったのに、ジョンはショックを受けてた。とは、バーズのロジャー・マッギンの談ですが、そうした他者からも影響を受けつつも、自分を見つめてきたジョンの本質は、我が強くともユーモラスで、人好きな寂しがりやの少年な気がします。

ボブ・ディラン、ノーベル賞獲っちゃいましたねっ!
今朝はそのニュースで飛び起きました。
こんなに楽しくて面白いニュースは久しぶり、というくらい、興奮しました。
私はハルキワールドがよくわからない人間ですので、ちょっと楽しかったのです(;^ω^)

片岡義男が「有名になる前のビートルズ」にこだわるのは、それこそ「主張がない」まだ何物でもなかった彼らが好きだったからかもしれませんね。
歌に信条、ソウルを込めたいアーティストと、自由に音楽を楽しみたい聞き手と。
「ジョン・レノンセンス」は、ユーモラスで無垢なジョンの遊びが沢山つまっていました。この彼の一面を、ずっと忘れたくないと思うのは、多くのファンの気持ちかと思います。




mikaidoudot 2016.10.14 09:22 | 編集
ビートルズが来日したときの若者(特に女性たち)の熱狂ぶりと、ベイシティ・ローラーズのそれと、同じものだったと思うんです。海外の人気アイドルグループに夢中になるという表面的な部分においては。

25、6年ほど前、会社の同僚とカラオケで歌っているときに、ビートルズもベイシティー・ローラーズも最初は同じというようなことを言ったら、同僚は、違う、同じはずがない、と主張するんです。
そりゃ本質的なところでは全然違うでしょうけどさ。

この人、今は阿佐ヶ谷でスナックを開業して、たまに呑みに行きます。この前、「僕たちの赤い鳥ものがたり」を読んでもらったのですが、途中で挫折しました。主人公がウジウジしすぎてお前(私)が脳裏に浮かんで物語に集中できなかったんですって。
まあ、2章まで読み進めれば、3章以降は怒涛の展開(?)になるんですけどね。本は返しておらって、他の方に差し上げました(笑)。
keidot 2016.10.18 06:07 | 編集
keiさま

こんばんは(^^)/

ファンの立場で言えば、「表面的にはビートルズもベイシティ・ローラーズも最初の熱狂は同じ」というのは、何となくわかります。入り口は同じでも、出口は人それぞれですけれど。

ところで、「僕たちの赤い鳥」を、元ご同僚は途中で挫折されたとのことですが、
それって、互いを良く知っているから気恥ずかしいのかもしれませんね。
たしかに3章以降は、え~~!っと驚きましたもの。
あの日記形式、成功しているなあ、と思いまして、
結局、「若きウェルテルの日記」を「日記」繋がりというだけで読みなおしてしまっている私です( ;∀;)
読み始めると限りなくドツボにハマってしまうので、大変です(;^ω^)
mikaidoudot 2016.10.18 22:40 | 編集
ウェルテルの書名は日記じゃなくて悩んでる方でしたね(^_^;)
その日の晩飯を考えながら読むにはありえない本の選択でした(*_*)
mikaidoudot 2016.10.19 10:44 | 編集
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