2016
08.11

コンパルソリー

Category: 浅田真央
web Sportiva

フィギュアスケート界の名伯楽が語る 「初心者にまず教えること」

連載・佐藤信夫コーチの「教え、教えられ」(2)

~前略~

ママの顔しか見ていないような子どもであっても、見本を見せるほうは命がけで「サークルを描く」。最高のコンパルソリーを本気で見せます。

それを見た子どもたちに植え付けられたイメージは生涯消えないんですよ。だから目いっぱい、真剣にやります。「これが最高の姿勢だ」と自分が思う姿勢で、汗びっしょりになりながら滑ります。だって、それでその子たちの将来が決まっちゃうんですから。

 僕がそうだったんです。スケートを始めて60年が経ちますけれども、一番最初に教わった永井康三先生が滑っている姿や、ゴリゴリゴリッという氷の音は、いまでも鮮明に覚えています。昔はすごく体を傾斜させて滑っていたんです。先生たちの選手時代は、ほとんどのリンクがアウトドア。風が吹いても耐えられるような滑りでした。我々インドア育ちのスケートじゃなかった。僕はそういうスケートをいまでもイメージできます。

 映画か何かで、渡り鳥の子どもたちを、親鳥役の飛行機を使って隊列を組ませていくシーンを見たことがあります。本来であれば、子どもたちは親鳥の飛ぶ姿を見よう見まねで覚えて、ついていくのでしょう。それだけ刷り込みというのが重要になるわけです。一番最初に見たものが、その人の将来を運命づけることになります。特に日常生活の中にはないスケートでは、最初にきちんとしたものを学ぶことが大切だと思います。



チェロスイートで浅田が魅せた「コンパルソリー」。

コリオグラファーはローリーかもしれませんが、
動きの一つ一つは浅田真央がこれまで重ねてきた技の連続。
このプログラムは、「積み上げてきた選手」にしかできないと思いました。
これをあの「オルゴール人形」のような衣装で
「大人」ではなく、「少女」のように演じるところが実はミソなのではないか、そう思いました。
このプログラムを、例えば今回の「ボレロ」や「ジュピター」などの衣装で滑っても、
驚きは半減するかもしれません。
他の誰にもできない難しい足技の繰り返しを、
少女のような姿でやってみせる。
ふわふわの甘い、スイーツのように。

昨日、私は浅田のチェロスイートのスタートを、彼女の背中側から見ました。
美しい、美しい背中でした。


THE ICEで、「チェロスイート」と同様、カロコスの「月の光」。

圧巻でした。
一蹴りの伸びやかさ、手足の使い方だけで魅せることができる。

時々、その場に何人いようと、人前に立っただけで場の雰囲気を支配してしまう人がいる。

ただ横にスーッと滑っていくだけ。
ただ腕を少し動かすだけ、それだけで「ホゥ」とため息が出る。

これ以上の演技を、次のスケーターはできないだろうなあ、と思ったら、
次はパトリック。

いつもの普段着衣装、彼のスタイルとなった曲の雰囲気。

昨日滑ったのはこの曲ではないでしょうか。(間違っていたらごめんなさい!)

Maroon 5 - Sunday Morning 
今季のEXの曲です。

彼のEXの曲の選び方に、私は胸の奥をぎゅっと掴まれます。
楽しそうに、いつもと変りなく、でも笑顔でこの曲を滑るパトリックに、
何か昔のあの日を思い出すような、不思議な感覚を引き出されてしまいました。

そうでなくても泣き通しだったのに、
普段着のパトリックにここまで泣かされるとは・・・。
ほんとに、彼は大人になったと思います。
・・・昔から老けてましたけど。

JBは、ジャンプを跳んだのかどうかもろくに思い出せないほど、
「繋ぎの玉手箱」をたっぷり楽しませてくれました。
彼の演技も人柄も、皆を笑顔にしますね。

身体が超軟体。
この柔らかさだからこそこの演技ができるのでしょうが、
ジャンプで怪我をしやすいタイプなのではと心配になるほどでした。
クワドの練習はしているはずです。
昨季のことを思えば、怪我だけはしないでほしいと祈ってしまいます。

サプライズの浅田真央のジュピター。

先だっては熊本に自ら行き、現地を見て。
東北でスケートリンクを失った子供たちを九州に招待し。
一緒に滑ってくれました。

規模は違っても、地震の被害にあった人々にとって、
同じ思いを持ってくれる人がいる。
ショーではプレゼントの一切を断り、募金の呼びかけをしていました。

私も、お土産を買うのをやめました。
ささやかに呼びかけに応じることにしました。
余りの暑さと日差しに、日傘は買ってしまいましたが。

どこまでもファンに、皆に気持ちを届けようとするから、「慈愛」。

フィナーレの最後の瞬間まで、
彼女は自分が先頭でもセンターでもなく、
看板でありながら全体を見守っていたと思います。

今朝、銅メダルを逃した福原愛選手のインタビューには浅田真央と同じ雰囲気が漂っていました。
強くて、優しく。
一瞬声を詰まらせた彼女に、応援してくれた全ての人に向ける感謝の気持ちが伝わってきました。
試合中のキリッとした表情には、昔の面影はすでにありませんでした。
例え負けても、「やりきった」と言える彼女は、美しかった。

勝っても負けても、浅田選手の今季が、自信に満ちたものになりますように。
揺るぎない自信を持って、滑りぬくことができますように。


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コメント
こんにちは。いつも興味深いエントリーありがとうございます。
私も九州公演ラストに行ってきました。

もう本当に素晴らしかったです。
毎年、これだけは見逃せないTheIce
今回はサプライズも多くて、姉妹のペアプロから私も涙腺緩みっぱなしでした。

TheIceってスタッフ、スケーター、観客に至るまで調和していて、他にないショーだと毎年感じます。
他にないといえば、ツルスケ祭りもそうです。
実際のSSが半端ないスケーターが多すぎる!
ジャンプなしのプロだとしても満足するほど上手い選手が多いです。村上佳菜子ちゃんもダンスはもちろん、SSも着実に毎年上手くなっていて鳥肌ものでした。
ジェフやロシェットはいつも期待以上のものを見せてくれます。
また私にとっては、カロリーナとパトリックと真央ちゃんが競演するショーは夢のようです。JBの演技も生で見られて嬉しい!

連れて行った相方が「真央ちゃんは全ての動きが滑らかで速くて激しくて・・(他のスケーターもすごいけど)出てくる度になんじゃこりゃーって思った」と感動しきりでした。何度か見てるけど、TheIceを基準にしたら並大抵のショーじゃ満足できなくなりそうとも。

チェロスイートをEXで演じてしまうのが浅田真央。
まさに驚異のEX.
少女のような姿で超絶技巧の連続をふわふわと演じられるのが彼女の強みであり凄み。
理不尽にもその実力を公に評価されることが少ないですが、もういくら隠そうとも無理な領域に入ってきていると感じます。

舞ちゃんも以前より上手く美しくなっているのに感動です。
もともと華のある姉妹で、さらに二人一緒に演技しているときのあの気品と清楚な妖艶さ、柔らかな華やかさ、そしてまさに慈愛溢れる空気感が会場を満たす瞬間は至福としかいいようがありません。

リオ五輪、私もスポーツ観戦好きなのでつい見入ってしまいます。
極限まで努力した選手達は皆美しいから、ついスポーツが好きなんでしょう。
五輪なんてなければいいのに、という方達には、思わずIOC等の腐敗やドーピングなどの問題がなくなれば、多くの問題が解決するんだよと教えてあげたくなります。。

ジュピターを生で見るのは久しぶりで、また感動。
ボレロのロングバージョンも去年より上手くなってる!
なんかもう言葉がありません。
演技を見て「生きてて良かった」と思える人です。

私も連れも募金してきました(お土産は買ってしまいましたが;)普段からあちこちでちょこちょこしているんですが、被災地訪問を当たり前のようにする真央ちゃんには頭が下がります。

どの選手も美しく必死で、レベルの高い演技を見せてくれて感謝しかありません。彼らの表情や演技を見れば、幸せなショーになるのも納得です。長文失礼しました。今年も幸せな時をありがとう。
りほdot 2016.08.15 15:22 | 編集
りほ様

コメントありがとうございます(^^♪

> なんかもう言葉がありません。
> 演技を見て「生きてて良かった」と思える人です。


私もそれ、思いました。
大げさじゃなく、そうなんですよね。

> どの選手も美しく必死で、レベルの高い演技を見せてくれて感謝しかありません。彼らの表情や演技を見れば、幸せなショーになるのも納得です。

ゲストに気持ちよく滑ってもらう配慮があるから、余計に良い演技ができるのかもしれませんね。
どの公演も全く同じものはなかったのではないでしょうか。

mikaidoudot 2016.08.15 21:03 | 編集
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