2016
04.30

猫語の教科書

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連休とはいえ、ゴリオ(仮名)には休みがない。
当然のごとく家事にも休みはない。

朝飯、洗濯、買い物、おやつおやつおやつ買い物、夕飯、洗濯、夕飯後のラーメン、ゆで卵ゆで卵、トリの胸肉、弁当。

完全夜型の私は朝が全く使い物にならないので、できる準備はほとんど夜中のうちに終わらせて寝る。
夜中過ぎてから卵を茹で野菜を切り、肉を焼くのは日常茶飯事だ。

最近諦めがついた私は、すっかりインスタント味噌汁に頼っているが
同じように働いていても、夕飯にきちんとネギを刻み、手作りの味噌汁に浮かべるえらい母さんもいる。

友人のSちゃんが、味噌汁用に切った「ネギがハート」と、こんな写真を送ってくれた(⋈◍>◡<◍)。✧♡

20160430220009.jpg

こんなにカワイイネギを発見して、思わず写真に撮ったSちゃんも本当にカワイイ。

幸せのおすそ分けを貰った気がして、とても嬉しかった。

さて、Sちゃんの家にはそれは美しい雄猫が2匹いる。
彼らは親子だそうで、縁あって捨てられて寄る辺ない猫たちの里親になったSちゃんは、
下の世話から遊び場作りまで、献身的に彼らの世話を焼いている。

そこで、ポール・ギャリコの「猫語の教科書」である。

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この本は見開きの筆者紹介の写真にツィツァと呼ばれる猫の写真と、その経歴が載っている。
そう、作者は猫。
ということになっている。

タイプで打たれた暗号のようなアルファベットを解読し、編集者と称するギャリコの手によってこの本は人間にもわかるように翻訳された。
ということになっている。

写真家一家の飼い猫ツィツァの写真と共に、猫語の教科書は第1章「人間の家をのっとる方法」から始まる。

副題は「子猫、のら猫、捨て猫たちに覚えてほしいこと」。

人間との付き合い方、そもそも人間とはどのような生き物なのか。
男の場合、女の場合、子どもの場合と、実に見事に観察と経験の結果を記してある。

声を出さない「ニャーオ」の効果的な使い方。
人間をいかに訓練し、自分の思い通りにするか。
ベッドを乗っ取る方法。
子どもの育て方。

猫にとっておよそ必要なこと全てを書いた、「教科書」なのだ。

傑作なのが「第15章 別宅を持ってしまったら」。

猫が実は何でもわかっているような気がするのは、気のせいではなかったのだ。


ポール・ギャリコは映画『ポセイドン・アドベンチャー』の原作者としてご存知の方もいらっしゃるだろうか。

私には「ハリスおばさんパリへ行く」などのハリスおばさんシリーズの作家として忘れ難い。

フィッツジェラルドのジャズ・エイジが終焉を迎えたそののちの世代。

スポーツ記者として名声を得、その後作家活動に入った。

「猫語の教科書」のおわりには、
大島弓子氏による漫画「わたしにとっての“猫語の教科書”」が載っている。

ポール・ギャリコの筆致は最後まで大真面目なユーモアにあふれているが
大島弓子の短い漫画には泣ける。


・・・こうして私がのんきに「猫」のことを考えていると、隣の部屋からダミ声の「ドラえもんの唄」が聞こえてきた。
ゴリオ(仮名)の熱唱である。

ふと、のび太を日々助けているはずのドラえもんも、本当は未来にいるより
居心地の良い野比一家を乗っ取った猫だったのかも、と思ったりして。




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2016
04.25

JBの源流

今日は大&真央対談の書き起こしでもと思っていたら、すでにあちこちで動画を上げて下さっておりましたので、
真央ジュリエットが見たいと切望しながらそちらの話はちょっと置いておいて。

TCCでのジェイソン・ブラウン選手のより一層磨かれたスピンとスパイラルの謎を追って
振付師で、コーチでもある「ロヒーン・ワード氏」の動画を見ておりました。

JBの左にお座りの個性的な男性ですね。
mrword.png




Rohene Ward: "A Journey to Solace" - Adagio for Strings

このまさに氷上のアートを演じたのがどうもこちらのHPのショーらしく。

American Ice Theater -
http://www.americanicetheatre.org/news/press-releases/ait-chicago/

このページの写真にいました、ブラウン君。
2014年の公演にゲスト出演していたんですね。



氷上のバレエ、氷上の芸術的ダンスを創作し、人材を育てる活動もしているようです。
アイスリンクをそのまま舞台に移し替えた、まさに氷上のアート、でしょうか。


10年前のロヒーン氏、全米のショートで、4回転トウループに挑戦しているんですね。
クワドは転倒しましたが、この時、3Aはしっかり降りていますし、ポニーテールといい、後ろ姿なんて今のJBのまんまですわ。



Rohene Ward 2006 US Nationals SP

こちらの動画を見ると、彼はさっとんと同じく、左右両方ともスピンができるんですね。
美しいです。



アクロバティックなスケートもあるかと思えば、こんなスケートの世界もある、ということなんですね。



こちらの動画のコメントには、「彼が現役選手(アマチュア時代)に精神的なコントロールをものにしていたらオリンピックの金メダリストになっていただろうに」、と書いてありました。
それほど才能のあった人なのでしょう。
競技ではメンタルコントロールが上手くいかず、成績が伸びなかったのでしょうか。

それにしても、ほとんどバレエダンサーでしょ的な演技は
確かにフィギュアスケートの括りに囚われない個性ではないでしょうか。

ロヒーン氏がただ振付だけに終わらず、チームに加わったことで、コリ・エイドコーチとの二人三脚だったJBの演技には彼ならではの美しさ、個性がより光るようになったのではと思います。

ロヒーン氏の演技を見ると、JBの夢はロヒーン氏の夢なのでは、と思わずにはいられません。

あの美しい演技にもしもジャンプの精度が高まってくれば。
クワドもですが、せめて2Aをやめて3Aをコンビネーションでバンバンキメてくるくらいになれば。

身体が柔らかいことは普通のスポーツならプラスに働くのでしょうけれど、フィギュアのジャンプに関しては難しい点もあるようです。
日本人選手がいかに難しい橋を渡り、トップ選手として戦っているか。
本当にすごいとしか言えないのですが。

JBには早く怪我(とジャンプ)を克服して、ぜひ来シーズンも活躍してほしいと心から思ったのでした。
何といってもキスクラのロヒーン氏が見たいですから(^^♪
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2016
04.24

ピンクの風呂敷レジェンド

さて、フィギュアスケートはアイスショーのシーズンに入ってまいりました。
舞&真央ちゃん、大輔さんのテレビ出演、心ゆくまで楽しませて頂きました。

そんな中、TCCに出場している選手たち、素晴らしかったです。

4回転フリップを世界で初めて公式に成功させてしまったショーマ君。
本当におめでとう!
しかもSP、FP両方揃えてです。
並みの心臓の持ち主ではないとお見受け致しました。

「頑張ってこれだけ、いい演技ができない」って泣いた
あの日はそうだったけれど、
今回は頑張った分だけ、もしかしたらそれ以上の演技ができたと思います。

世選の時、「泣くな!昌磨!」と上から目線で励ましたおばちゃんはね、
根っからのキリギリス体質のせいで、
今泣いてるよ。

「えへへ、もう4月だけど、何とかなるさ」とへらへらしてたキリギリスは
「何ともならんわ~~~~!」と今になってゼーゼー言っているのだから。

ほんとに君は偉かった。

で、私は今回ジェイソン・ブラウン選手を楽しみにしていたのです。

ショートはプログラムを変えてきていたこともあって、まだ「JBらしい」演技ではなかったように見えましたが、
フリーは何しろ美しかった。
シングル・アイスダンスというものがあるなら、
金メダルをあげたいくらいでした。

怪我の影響なのか、クワドの練習を始めた頃から3Aが安定していませんでしたが
今回もやはり1度は上手くいきましたが、なかなか揃ってきませんでした。

ああ、ロヒーン氏の振付の「濃さ」が好きです。

いっそロヒーンさんの振付で滑る真央ちゃんを見たいと思ったほどでした。
あの「濃い」、きっと選手泣かせの繋ぎと
ジャンプを両方揃えて演じられるとしたら、
もう浅田真央しかいないんじゃ?と思ってしまうのです。

その浅田真央、そして高橋大輔も出演するアイスレジェンズがいよいよテレビで放送されています。

解説の舞さん、言葉数は決して多くないのに話が具体的で素晴らしいです。
ショーで高難度のジャンプを跳ぶことは、
照明のせいもあって難しいとか。
レジェンド級の選手達がどのOPに出ていてどんな点が好きだったとか、
本当に具体的に話してくれるのでわかりやすいんです。

番組冒頭、会場入りする真央ちゃん大ちゃんの映像が映りましたが、
真央ちゃんの荷物がツボでした。

こんなピンクの唐草模様の風呂敷が(しかも結構デカい)あったなんて。
とても可愛らしくて、お茶目で好きです。

karakusa104.jpg

テレビではラトビアのデニス君が最初に滑りましたね。
「踊るリッツの夜」、ジャンプで転んだのもご愛嬌、振付だとしてもコミカルに自然に活かせる演技。
まだ16歳。驚きの16歳。

サラ・マイヤーの優しく美しい演技の時の舞さん。
「繊細で丁寧な滑りというのが、現役の頃から私は大好きだったんですけれども、見入ってしまいました。」
本当に気持ちが伝わります。

そしてジュベールの007!
来ました、変わらぬ男らしさ。
「わかってるってば!」と言いたくなる、お胸に付けた名札「007」。

サラもそうでしたが、2人とも30歳過ぎてもスタイルもスケーティングもそのまま。
毎日の生活が、「アリ」なんですよね、きっと。

そして高橋大輔氏の、まあすごかったこと。
インタビューで話していたのはNYに行く前後の話でした。
スケートから一旦離れてみたかった。
普通の生活を送った1年。

「すごいこういうことをやりたいけど、やる場所を探してる。
やりたいけどできない。
そういう(人の)姿を見て、
自分は場所がある、やれる場所があるじゃないですか。
スケートという輝ける場所が。
あるにもかかわらず、それをやらずにいることは間違ってるんじゃないかな。
だったら僕が一番、(自分)らしいなと思ったので。
それにも、かなり時間はかかったんですけど、やっとそこまで至ったというところもありますね。」



「ラクリモーサ」。
インタビューの雰囲気とはガラッと違って、言葉など必要ない演技でした。
この人が氷上に戻って来ないだなんてありえなかったと思います。
指先、マイム、目線の置き方、ジャンプを溶かし込むように跳んで、
破いた(?)衣装の使い方も面白くて挑戦的。
ますます磨きがかかった演技、素晴らしかったです。

「新しい高橋さんを見れたプログラムでしたね。
非常に芸術性の高い、美しい演技でした。」と舞さんが話した通りだったと思います。

テッサ・バーチュー&スコット・モイヤー組。
ジャスティン・ビーバーの「Sorry」を使ったプログラムがとても洗練されていて会場も盛り上がっていたようでしたね。
この演技について、実況アナが「女性の方は舞さんより一つ年下ですが、彼女の滑りについてどう思われますか」と
聞くんですわ。
実況はこのアイスダンスのペアが20代前半、茶番で金、20代後半にソチで銀を獲ったと話を続けるわけですが、それにしても聞き方ってものがあるでしょうに。
すると舞さんは見事に
「カッコよくてポップな曲なんですけど、この曲だからこそ更に二人の滑りの滑らかさ美しさというものが際立っているように見えます」と返すんです。

さすが浅田姉妹。
頭の回転の速さ、というより下衆な考えでは及びもしない素直な返事をするんですね。
言葉選びが美しい上に心がこもっている。
たとえ台本が前もってあったとしても。
品があって、暖かい気持ちで話す言葉は聞いている方も気持ちの良いもの。
本当にカッコいいとはこういうことでは。
浅田姉妹じゃなくて、兄弟だったりして(ゴメンナサイ)。


さて、インタビューでの浅田真央の顔は輝いていて、

「まだまだ、選手として滑れる、と思いましたし、身体ができるっていうところまでは自分は最後までやり続けたいと思っています。」
「ショーに出ると、色々なものを吸収できるので表現者として自分もそれを吸収して試合に活かせたら、もっとレベルアップできるんじゃないかと思います。」


キュッと結んだピンクの紅をくっきりとひいた口元。
真央ちゃんの頼もしいお顔。
拝みたくなります。

今回のランビのショーでは、スペシャルプログラムの最初はバラ1での群舞と書かれていましたが、やはり真央ちゃん、黒バラで導入部を滑りました。

この狭そうなリンクで照明の下、滑る滑る跳ぶ跳ぶ、真央ちゃん、演劇風にアレンジされたスケートをじっと見ている立ち姿まで美しく。
イーグル、スピン、スパイラルだけでもう拍手。

ピアノ、素晴らしく良かったですね。
月の光の優しかったこと。
カロコスの美しかったこと。
真央ちゃんの月の光とはまた違った細やかな振付は見事でした。
うっとりです。

カロコスを見ていても、
今季の女子の若手がいかに素晴らしかろうと、
あのPCSはやはりいかがなものだったかと、
つい思ってしまったのでした。

それほど、エレガントという言葉がぴったりの、別世界でございました。

スペシャルプログラム、3部構成についてはこちらにあった通りの演目でしたので、3曲目はラヴェルの「ラ・ヴァルス」。

ここで高橋大輔さんが男の友情で恋人同士に割って入って来るという話に。

うーん。(゜-゜)。

友人、ではなく浮気相手、という話もありましたね。
その後の恋人同士の様子を見ると微妙です。

それにしても、第1部は真央ちゃんを案内役にした群舞。
第2部は女性側からカロコスのソロ。
第3部で男女の愛が壊れるまでを演じるランビとカロコスですが、圧巻は女性が去った後のランビのソロパート。

後半、イリヤ・クーリックのツルスケに驚き。
リンクが狭いのではと思うほどダイナミック。

そしてカロコスのボレロ。
全くブランクを感じさせない美しい滑りと、そこに加えられた新鮮なステップ。

カロコス姉さん、こう話していました。

「私が滑ることにどんなに喜びを感じているか。どんなにスケートを愛しているか。
私のギフト(スケート)を皆さんに見て頂けて光栄です。
日本の皆さんにもまたお会いできることを楽しみにしています。」



ボロトラ組は「仮面舞踏会」。
ゴージャスでした!でもやはりリンクが狭そうで勿体なかったかなと思います。

それにしても、ここに真央ちゃんも来て滑りなはれ~~~~~!と心が叫びたがっておりました。
ここに真央の倍速3拍子が入ったらほんとに舞踏会~~~!

とか思っておりましたら、ここで、蝶々夫人が。

跳びます跳びます、ショーといえど、蝶々は跳ぶんです。
狭いリンクでも驚くほど、跳びました。
ショーのバージョンとか、ギアを落とす、とか、そういったことはこの人の頭の中にはないのかもしれません。
その姿勢そのものが、「元藩士の娘」らしい凛とした姿に映りました。

インタビューでは

「この曲は日本人の物語の曲なので、私が滑ることができて良かったかなと思っています。
(演技は)世界選手権ほどではなかったんですけれど、でも今シーズン最後の滑りとしてはまあまあ、良かったかなとは思いますけど。まだやりきれてはいないので、また来シーズンやるかもしれない」


と、ちょっと口にしていました。

来シーズンも「蝶々夫人」、あり得るということですね。
プログラムが何であろうと、来シーズンがあると思うと、それだけでやはり嬉しいのです。
いばらの道かもしれませんが、それでもこの言葉を聞くと、涙が出ます。


さあ、この後、ランビも本気モードです。
「ポエタ」の、切れ味と美、色艶。
本気過ぎて、最後は少し足にきていたのでしょうか?

テサモエは「カルメン」。

皆さん、これはショーなのよ、ショー。
お忘れではないかい?と聞きたくなるほど、この2人もキレッキレで真顔の演技。

スケーター達の本気を演技の中に見ると鳥肌が立ちます。

ああ、「マンボ」。
この上にマンボ。
カメラワークにちょっとイライラしますが、ネットリ感はちゃんと引きに引いたカメラでもわかります。
すごい声援。
跳んでます。ジャンプもステップも健在。

そして「マンボメドレー」でフィナーレに入ります。

フィナーレでもデニス君は弾けていました。
真央ちゃんもマンボ、みんなでマンボ!

私、忙しすぎて風邪ひいて熱を出していたのですが、
いやもう、ぶっ飛びましたわ。

それでは、もう寝ます。

寝る前に一言、
舞ちゃんの解説なら、NHKさん、副音声いりませんわよ。

もう一言。

ショーが終わったばかりで「今後の目標」を聞かれた真央ちゃん、

「ショパンでは気持ちよく滑れたんですけれど、フリー(蝶々夫人)の方ではチョコチョコミスをしてしまったので、来シーズンの課題としてミスを少なくすること、フリーをミスなく滑ることが自分の今の目標です」



キリギリスの私は、どこまでも「アリ」な真央ちゃんに泣き笑いしてしまいましたわ。
どこのジュニアかと思うような初々しい「目標」をこのレジェンドが語るんですから。
人を元気づけるだけではないんです。
この人、若返りの術も使うのかもしれません。

人の気持ちまで若返らせることができる。
「やってみよう」という気持ちにさせる。

大輔さんといい、2人ともスッキリとした表情。
まだ若い。
そう、彼らはまだ若い。

大&真央スペシャル対談は、また明日。

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2016
04.21

Whadayamean

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「WHADAYAMEAN」ジョン・バーニンガム/著 

「南紀熊野体験博」wikiはこちら


「南紀熊野体験博」のためにバーニンガムが書き下ろしたと言われるが、日本語訳をまだ読んでいないのでそのあたりの詳細は知らない。
英語版のはじめには、「世界を変えたかった母と父へ」と書かれている。

ジョン・バーニンガムは「くものこどもたち」(Cloudland)、「いつもちこくのおとこのこ」など、ほかにも多くの素晴らしい本を出しているが、谷川俊太郎の翻訳はこの二冊でも真骨頂ともいえる素晴らしさ。

この「WHADAYAMEAN」はメッセージ性の強さではバーニンガム作品の中でも異色と言える作品かもしれない。

「くものこどもたち」でも使われた写真と絵の合成がここにも部分的に使われる。
「地球」の写真だ。

神様が何百万年もかかって地球を作り上げた時、地球は水と空気で人も動物も生きられる楽園だった。

杉の木の下で遊んでいた子どもたちを伴い、神様は自分の作った地球を見て回る。

神様が目にした地球は、汚染された海で汚れた鳥や魚、排気ガスと悪臭でいっぱいの空気。
草木や鳥や動物の家である森は伐採され、焼かれた姿。
絶滅した多くの生き物は二度と戻らない。
地球を託した人間は、最も賢い生き物だったはずなのに。

子ども達は神様から伝言を預かり、世界を回る。

金の亡者、神の使いを名乗りながら諍いの絶えない人々、武器を持って戦う兵士に、子ども達は神様からの伝言を伝える。

最後の愚者が、私には衝撃だ。

自分たちの周りで起きていることを知ろうとしない群衆。

その愚かな群衆に、「地球を救わなくちゃ。生き方を変えようよ。」と訴える子どもたち。

絵本の中で、神様は姿を見せない。
でも子どもたちにも、動物たちにも神様の存在はしっかりと見えている。


子ども達が神様からの伝言を伝えたことで、より良い世の中になった時、創造主の象徴のように上る太陽。

最後のオチがとても可愛らしいが、中身は硬派な絵本である。


自分の目で見、耳で聞き、判断したことよりも、メディアに流されてはいないか。
自分で考えることをやめ、世論という姿のない魑魅魍魎に乗ってはいないか。

考えさせられつつも、同時に幸せな気持ちになれるのが、この絵本だ。

子どもの本とは、大人にとってもなんという贈り物だろうか、と思う。

エリックカールの「"Slowly,Slowly,Slowly,"said the Sloth」(ナマケモノが最後に言い返す言葉の一つ一つが最高)
A. Birnbaumの「Green Eyes」(緑の目の猫の話。猫の過ごす1年が本当に素敵)
これに「長ぐつをはいたねこ」を図書館で借りて癒されている。

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2016
04.18

ぼくはうちゅうじん

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「ぼくはうちゅうじん」

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中川ひろたか/著  はたこうしろう/イラスト  アリス館

地球も宇宙から見ればひとつの星。
君も、私も、宇宙から見れば宇宙人。

なんでもない発想の転換に、あ、と思わされる。
この絵本の良いところは、
「うちゅうじん」でいる自分に前向きな子どもの姿。

イラストの星々が美しく、本当に夜空を眺め、明け方を迎えている気がする。

おとうさんのダジャレはこの際いらなかったかな。
言葉を減らした方が良かったと思った絵本は珍しい。

それにしても、「重力」がない「空気」もないシンとした宇宙空間は孤独ではないのだろうか。
星の王子様のあの悲しみは、宇宙に住む孤独ではなかったのだろうか。

地面の上に暮らしていると、忘れがちだ。
私たちも自然の一部であり、宇宙の一部。
時に人間をも一掃してしまいそうな牙をむき出すが、
それでも地上は暖かく、自然にくるまれていなければ、生きてはいけない。



地震は、わかっていても、怖い。

建物だけではない、日常そのものが破壊される。

皆無事でありますようにと、祈らずにはいられない。

熊本に住む友人とは、本震があって以降まだ連絡がとれずにいるが、何もできないことがもどかしい。

早く地震が収まって、避難を余儀なくされている方々が少しでも安心して休むことができますよう。
命がけで救助にあたっておられる方々のご無事と合わせてお祈りしています。


追記

アメリカに住んでいる友人から、

「災害が起きたときの日本人の行動はアメリカでも本当に驚かれてるよ。
助け合う国民性、他には見れないみたい。鼻が高い!」


とメールを貰った。



日本の報道は色々な意味で疑問が多いのでうんざりするが、
海外報道でそんな風に伝わっているとは、ありがたいことだ。


もひとつ追記。

その後熊本の友人からlineで連絡をもらった。
車に避難していたそうだ。
家族もあり、仕事がある以上実家に戻ることもできず、
今の生活を続けていくしかないようだ。

どうか今後も無事でと、祈ることしかできない。

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2016
04.13

憤りの不協和音

子供向けの科学本や学習漫画と呼ばれるものには、人気漫画の主人公を使ったものが多いことは、ご存知の方も多いと思います。
日本のものは例えそれが低学年用であってもきちんとした監修がついている本が多いですよね。
世にいう「なんちゃって本」が批判されるのは、そういった客観的で根拠のある情報がないのに、
それがさも「史実」や「事実」であるように書かれているからであって、最初からフィクションと銘打っていればそれほど問題にもならないのではと思うのですが。

小学校だと記憶していますが、「道徳」の教科書に「江戸しぐさ」という本が取り上げられるということで様々な意見があるようです。
ソースのない、根拠の示せない作り話としか言えないものを、あたかも真実であるかのように教科書に取り上げるのは、私はいかがなものかと思いましたわ。
これを「お話」として取り上げるのならいざ知らず。
ただ、いい話的な「江戸しぐさ」(という造語)は本としては読むと面白く、いかにも本当らしいのがことを複雑にするのかもしれません。


さて、大切な根拠となるソースをきちんと示したうえで、様々なフィギュアスケートの問題に言及されていらっしゃるブログ様は多々あれど、その中でも私がとても信頼しているブログ様のひとつが「キッサンケッロ猫の鐘」様でございます。

こちらのブログ様のコメント欄で知った「figureskating-online.com」を運営される、フィギュアスケートジャーナリストのタチアナ・フレイドさんの記事を読んでみました。

この件には様々な意見があるかと思われます。
拙訳では誤解が生じるといけませんので、原文だけお借りして載せさせて頂きます。

私は、こちらの記事、よく事情を鑑みて、調べた上で書かれたものではないかと感じました。

試合のストレス、ハン・ヤン選手との接触事故のこともあり、少しリアクションが大きくなったのではと記事はオーじゃの立場に立った見解もきちんと書いています。

読んで頂ければわかるのですが、ドイツ語、英語で書かれたジャーナリストのサイトです。
20年もこの世界を見続けてきたというこの方が敢えて書いた記事は、ある種のプロに近い方の見方として、傾聴に値する記事ではないかと思いました。

日本のオーじゃは今回のことで非常に微妙な立場に置かれてしまったのではないかと思います。
特に最後の方に書かれていたのが、金曜日に行われたフリーのメインリンクでの練習時。
またしてもオーじゃの曲かけ中、ショーマ君がやはりスピンに入っていた時に、テン君の時と同じようにニアミスが起きていたのだそうです。でもショーマ君、何とか避けることができたようです。
それに関し、
「一体どこの誰が、ショーマが故意にオーじゃの軌道上で、彼を傷つけようとしたと思うでしょうか?」と記事は結んであります。

タイトルに付けた日本語は、あくまで拙訳コンニャクですので、どうぞググる翻訳でお願い致します。

http://www.figureskating-online.com/cacophony.html

figureskating-online.comより

Cacophony of the outraged
憤りの不協和音
Wrong words - and what they can cause
言うべきではなかった言葉―そしてそれが引き起こしたもの


Figure skating is not an aggressive sport. Skaters compete against each other, but off the ice they are mostly friendly with each other. Rivals might sit together in the dining room and have lunch before they go out trying to better each other on the ice a few hours later. But sometimes their fans think they need to be at war with each other.

In the Men’s short program practice at the practice rink at the World Figure Skating Championships in Boston on Wednesday, March 30, Japan’s super star Yuzuru Hanyu and Kazakhstan’s Olympic bronze medalist Denis Ten got close to each other on the ice. This happens sometimes, skaters get too close to each other, maybe not paying enough attention as they are too absorbed in what they are doing. Several eye witnesses confirmed that Yuzuru was skating to his music while Denis was doing a spin. There was enough room around Denis, but Yuzuru almost ran into him. There was no physical contact, nobody was hurt. Apparently Yuzuru got upset and yelled at Denis.

It was a minor incident that usually quickly would have been forgotten. Unfortunately, when Yuzuru spoke to the press in the mixed zone that day, he accused Denis of trying to hurt him and intentionally being in his way. There was no reason for this kind of severe accusation, however, some media greedily picked it up and blew the whole incident out of proportion.

Who could seriously believe that one skater tried to hurt another skater? I’ve been covering figure skating for more than 20 years now. I’ve seen many near-collisions in practice and warm up and several actual collisions, but never ever one skater accused another skater of intentionally trying to do anything wrong. Yuzuru probably said this as he was under high stress and had the terrible accident on his mind when he collided with Han Yan in the warm up during Cup of China in 2014. So he kind of overreacted, but some journalists happily used it to create a scandal and even wrote about a “protest” or “complaint” that the Japanese Skating Federation planned to file.

As a result, some of Yuzuru’s fans also overreacted and started sending threats and hate mail to Denis. 

Authorities in Kazakhstan read the one-sided media reports and were not amused. There were also reasonable voices from journalists and fans, but they somehow were overheard in the cacophony of the outraged. Someone even went as far as posting a video from another warm up or practice session where Denis and Yuzuru came close to each other and used this as “proof”. Get a life. You can see many, many such situations between many different skaters. Interesting enough, the video of the practice session in Boston was not shown, although Fuji TV was there and taped the session. There should be footage from the incident, but they don’t release it.

Unfortunately, the Japanese Skating Federation apparently did not realize how the whole situation developed and did not intervene right away. Only on Saturday team leader Yoshiko Kobayashi told the press that the Federation doesn’t file any kind of protest and never intended to do so. The Japanese Skating Federation also confirmed this in a letter to the Kazakhstan authorities.

In the end, only both skaters suffered from these careless words in the mixed zone, because Yuzuru received also some criticism. Yuzuru approached Denis on Saturday, they talked to each other, they shook hands. They closed this chapter, but unfortunately some people (who think they are fans) still didn’t let go. Even when Denis published a photo of him and Yuzuru shaking hands, they wouldn’t stop arguing.

It is enough now.

And, by the way, in the free skating practice at the main rink on Friday, Yuzuru, who was skating to his music, got really close to Shoma Uno, who was doing a spin. Shoma just was able to get out of the way in the last second. Would anyone seriously believe that Shoma was intentionally in Yuzuru’s way or tried to hurt him?


Tatjana Flade



小林強化部長は、「日本はいかなる抗議もカザフの連盟にはしない」と確認の手紙を出したとだけ土曜日に話したようですね。
記事は日本のスケ連の状況把握の甘さ、この件に介入する遅さにも言及しています。
結果、ミックスゾーンでの(オーじゃのメディアに対する)不注意な言葉によって両方のスケーターが傷つき、オーじゃは更に批判されることによって傷つくこととなったとも。

タチアナさんがもう十分、と書かれているように、この問題はもう幕引きで良いのでしょう。
6分間練習のやり方について考えては、という意見はここでは見られませんでした。
でもいずれはそれも組織が考えるべきことでは、と思います。
勿論今回一番考えるべきは、オーじゃとその周辺だと思いますが。

にしても、彼らが握手で和解をアピールしたというのに、ファン同士がいさかいを続けているということに、記事は苦言を呈しているのですが、「よくご存知で」としか言いようがないのです。


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2016
04.12

笑顔の理由

Category: 浅田真央
BSフジで世選の再放送があっていたので男女シングルフリーをまた通しで見ていた。

どの選手も素晴らしい演技だったが、

音楽を、ではなく、「ヒロイン」を演じていたのは、やはり浅田選手だった。

自らの身体で奏でる「蝶々夫人」。

その浅田選手の復帰を追った番組が、
かの悪名高い「クローズアップ現代」・・・に、+がついた番組。
一応書いておくと、「クローズアップ現代」とは、
スポーツ選手のドーピング問題を扱った回で、番組内容とは全く関係のない浅田選手の顔を
冒頭に大写しし、「刷り込み」を行った忘れがたい番組である。
ググると、番組名とセットで「やらせ」と出てまいります。

http://www.nhk.or.jp/gendai/articles/3789/1.html

せっかく書き起こしをしたけれど、番組HPの方がとてもよくできていたのでおススメです。


kurogenn.png


「浅田真央 笑顔の理由 復帰の舞台裏」
〇HK総合 4/11(月)22:00~22:25

番組は、浅田選手が1年の休養中に被災地を巡った様子から始まった。

復帰後すぐの素晴らしい演技はまずスルーして、いきなり不調のシーズンのように話が飛んでしまうのはお約束か。
ジャンプで転んだ写真を連続して出し、「復帰後の不調」をまずは「クローズアップ」。


津波で祖母を亡くした少女に対して浅田選手が語った優しい言葉。
以前とは違って、好きなだけ滑ることのないよう、「考えながら滑っています。」と言って練習し、
その後、念入りにストレッチをする姿。

kurogenn3.png




どちらにも浅田選手の母、匡子さんが残したものが垣間見え、
私は彼女の強さに感服しながらも涙が止まらなかった。

子どもの頃から練習の後は、母の匡子さんが念入りに浅田選手のマッサージを欠かさなかったという。
彼女の柔らかくしなやかな筋肉は、そうして出来上がったのだと本で読んだ記憶がある。

大人になった今、その身体を保つために、自分で自分の身体をメンテナンスする。
練習後のストレッチと筋肉をほぐすマッサージをしながらも、撮影スタッフに「寒くなかったですか?」と気遣う言葉をかける浅田。

kurogenn2.png


そして引退覚悟の全日本選手権後の気持ちを語る。

「自分の滑りは最後までできたと思ったんですけど、
ちょっと待てよ、これが最後のスケートの演技だったら
自分が納得しないだろうな、と思って
最後は、終わるんだったら、やっぱり最高の演技をして
終わりたいというのがあるので・・・。」




1月。
来日したローリーと練習を重ねる浅田選手。
ローリーは彼女が自分を追い込みすぎている、と感じたそうだ。
ローリーは言った。

「楽しむことを忘れないで
とても大切なことよ。」



更に

「私の経験では、選手はハッピーな状態であればジャンプを成功させます。
これは魔法ではありません。
でも、真央は考え過ぎてしまうことがよくあるのです。」




kurogenn4.png


世選のSPで、9位となった翌日の練習を、浅田は休養にあてた。

「10代の頃は100%練習に参加してたと思うんですけど(笑)、今は逆に休みます、みたいな。」
「考える時間も、練習する時間も、ちょっと忘れたり、考えたりという時間を持てたので・・・。」



kurogenn5.png


「練習の仕方や、気持ちの持って行き方、切り替え方、
試合に入ってからの練習の仕方というのが、格段に変わってきているので
一つ一つ自分のペースで、選手生活を歩んでいけたらいいなと思っています。」



ここでゲストのミッツ・マングローブが言うんですわ。

「世界選手権の蝶々夫人なんて、すごくこう、男らしいというか
力強くないですか。」

「言葉は汚いかもしれないけど、“なにくそ、根性”みたいな、やっぱりすごい真央ちゃんて、
私強いと思うんですよね。
そういうのが出ると、圧倒的な強さが、醸し出されますよね。」

「割と可憐で、もしくは子どもの頃から見てきた、可愛い真央ちゃんみたいなものを、
割と(周りが)押し付けがちではあるんですけど、
実はそうじゃないところで彼女のたくましさっていうのは熟成をされていって、
それがこう、バーンっと出た時の、あの力強さがやっぱり見ていてゾクゾクするんですよ、私なんかは。」

「客観的に見ると、今の時代とか、なかなか安心材料とか、
それみたいなものが、持ちづらい、世の中で。

やっぱり個々が変に不安だったり、迷いだったりなんかを抱えている中で
世の中グッと一個に束ねて、こうグッと“ここに行けばもう絶対安心”みたいな、
“大丈夫!”みたいな、こう大きい、ね、拠り所みたいなものがやっぱり、
少ないんだと思うんですよ。

特にこう、個人個人の感情みたいなものも、放出できるし、
あと隣近所と常に比較とかも細かいところまでできちゃうから、
抽象的な拠り所みたいなものが、対人間に対してできなくて、
それを集約できる存在にちょうどこう、フィットして、なったんだろうな真央ちゃんは、という。

それは真央ちゃんはどういう風に思っているのかはわからないんですけれども、
私は全く未知の領域ですけれども、大変だろうなと思うし、でもそれに、
すごく律儀に対応しているなあっていう、そういう姿を見ると、
若干もう、いいじゃないの、自分のためだけにスケートを、滑っちゃいなよ、なんて
テレビの前で思っちゃう時はあるんですけど、
やっぱりそこでちゃんと結果を出して、ドラマを見せて
とってもこう、わかりやすく何かを提示してくれる、というところに対して
世の中というのは、クーッと感情を、感情移入できるという、
そういう存在なんだろうなと。

またこれ時代が違ったら多分違う捉え方をされた選手だったかもしれないし、
そこはもう、たらればの話ですけどね。」

アナ:「アスリートを超えた存在ですよね。」




番組は海外からの評価も紹介。

「USAトゥデイのスポーツコラムニスト クリスティン・ブレナン」さんの話

「今はジャンプの数も多いし、難易度も上がっています。
選手に限界以上のことを求めているのです。
25歳の真央が、選手として活躍していることが、重要なメッセージなのです。」

「真央は自分のやり方で長く活躍する方法を見つけ、カムバックした、素晴らしいロールモデルです。」




次のオリンピックに向けての話を振られたミッツさん、こう言っています。

「すごい、立派だし、強い人だなあとは思うんですけど、
もういいんじゃない?そんなもう、世の中をこう、色んなことを真央ちゃんにこう、
期待をしたり、こうね、望んだりして。
私は逆にもう、真央ちゃんが、なんかもう
“えーい”って、世の中を突き放して、でもう、自分のやりたいスケートだけやるって言った時に
その先に、もしかしたら“日の丸”みたいなものが見えてる、のかもなと、なんていう妄想はしたりしますけど。」


意外に男の人の方が真央ちゃんの演技に泣くことが多いという話について

「ああ、この程度じゃ泣くことじゃない、このくらいじゃ自分は頑張ってないとか、
やっぱり思いがちなんじゃないんですか、今の時代って。
常にこう、いや、お前はまだそこまでじゃないよとかねえ、比較対象があって。
そういうものが色々、閲覧できるわけじゃないですか。」

「そういう自分の中の絶対的価値観みたいなものを、捉えにくい、というかね。」

アナ:「それを浅田選手に期待してしまうという」

時代の代弁者なんでしょうね。」

アナ:「見守ることが大事なんでしょうかね。」

「でも期待はしてしまうんですけどね。」




浅田真央は、確かにミッツさんの言うように、人々にとって「生きる指針、拠り所」のような存在かもしれない。
その多くの人々の思いが、彼女へのプレッシャーになることを危惧した言葉とも取れますが。


でも、多分浅田真央という人は、
ファンの期待に応えようとして潰れるような選手ではないと思う。

「まだ選手としてできる」と、思ったから戻ってきた。

そして

「まだ納得していない」から、続けることを選んだ。

その主語になっているのは紛れもなく「真央」だと思う。

それほど現役選手であるあの緊張感と演技を終えた充実感は、彼女を魅了してやまないのかもしれない。
選手生活の一瞬一瞬が、残り少ないものであるとわかっているからこそ愛しいのでは。



それにしても浅田真央が、こんな風にテレビで語られるようになったことに驚く。

彼女がアスリートを超えた存在だなんてこと、ファンはとっくにわかってましたが、何か?

「時代の代弁者」

ミッツさんがこう言った意味は、

私なりの解釈では

「今この時代に必要な“生きざま”を見せてくれる選手」


こちらに、この番組を見て書かれた記事が載っていました。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/suzukiyuji/20160412-00056528/

とても頷ける内容。

「浅田真央 笑顔で挑む3つの闘い」
鈴木祐司 | 次世代メディア研究所代表/メディア・アナリスト
2016年4月12日 15時56分配信

昨日放送されたNHK『クローズアップ現代プラス 浅田真央 笑顔の理由』。
23年にわたりキャスターを務めた国谷裕子氏が降板し、この春から女性アナウンサー7人が日替わりで並ぶことになった同枠。この改編に対しては視聴率狙いなどの批判も喧しいようだが、どうして、どうして、昨日の浅田真央ドキュメントは見応えがあった。やはり現場の取材者・制作者の中には、志のある人が残っているようだ。何が面白かったのか、以下にまとめてみる。

浅田真央1年のドキュメント

浅田真央選手は2014年、期待を一身に背負ったソチ五輪で6位に終わり、演技後に涙を見せた。その後、1年の休養を経て去年復帰。しかし以前の滑りには遠く及ばず、「復帰の選択は正しかったのか」と自分を信じられなくなった時もあったようだ。また去年末の全日本選手権では、途中で引退も覚悟し、これが最後と急遽家族を呼び寄せていたという。
それでも「ちょっと待ってよ、これが最後の演技だったら自分が納得しないだろうなあ」「最後は終わるんだったら最高の演技をして終わりたいので」と思い直し、シーズン最後の世界選手権に臨むこととなった。そしてこの大会、シーズンベストを出しながらも順位は7位に終わった。それでも演技後に見せたのは“笑顔”だった。あらためて現役続行を決意していたのである。
紆余曲折を経た末の笑顔までの心の軌跡を追った興味深いドキュメントだった。

元海外バレエ団で長くダンサーを務めていた“butterfly”さんは、この番組を見て浅田選手の戦いぶりを次のように分析する。

25歳となった浅田選手は、3つの挑戦をしている。1つは競技での挑戦。2つ目は年齢との戦い。そして3つ目は自分自身との闘いである。

2010年バンクーバー五輪で金メダルリストとなったキムヨナは、確かにオリンピックという最高の舞台で栄光を勝ち取ったが、トリプルアクセルに挑戦したわけではない。

いっぽう浅田選手は、ISU(国際スケート連盟)が認定する6種類のジャンプの中で最も難しいとされるトリプルアクセルをプログラムの中に入れ続けている。全ての技術・表現で総合的に納得できるような、ギリギリの限界を極めようとしている。

浅田選手が一年間の休養後に練習を再開した際、以前の水準に戻すのに最も苦労したのは回転の感覚と考えられる。バレエのピルエットでもそうだが、小さい頃ならゲームのような感覚でひたすら回転を楽しめる。ところが経験を積む中で調子の悪い日などを経験すると、自分のどこが悪いのか研究するようになる。失敗の怖さや恐怖の方が先に立ち、体が強張ってしまうこともある。研究し考えすぎて、その前後の演技に影響が出ることすらある。
彼女のフリープログラムを振り付けたローリー・ニコルが言っていたように、一年間のブランクを埋めるため、身体も頭も一生懸命になり過ぎ、今までの経験を生かして楽しむと言う余裕を見つけられなくなっていたようだ。

フィギュアススケートはオリンピックにある競技なので、基本的にはスポーツである。同時にバレエの芸術的要素も兼ね備えている。バレエではステップの中で床や空中で回転することが多いが、フィギュアも回転が得点の評価で大きなウエイトを占めている。
バレエのコンクールでは、沢山回れるから高得点が出るとも限らず、綺麗な形や腕の使い方などで評価される。ところがフィギュアスケートでは、回転数の多さが得点の前提となっている。その上で美しさを求められる難しい競技である。このため近年、多くの選手がバレエの上半身の使い方などを習いにバレエ教室に通ってくる。浅田選手も同様で、上半身の使い方を研究しているようだ。振付師のローリーさんの指摘の通り、目線の使い方やバレエ的な上半身の使い方、そして彼女の素晴らしい身体能力とテクニックで、納得行くまで彼女の演技をエンジョイして欲しいと思う。

確かに25歳となった浅田選手には、年齢との闘いが伴う。番組内でも、「10代は100%練習に参加しますが、今は逆に休みます」と述べている。もはやかつてのようにガムシャラに練習することは出来ない。休養をしっかりとり、試合に向けコンディションを最高にもって行かなければならないようだ。しかし練習を以前ほどできないため、不安も伴う。浅田選手の場合、1年の休養を経ての復帰だったため、「選択が本当に正しかったのか」という思いも募ると心の内を吐露していた。

これらの葛藤と戦いながら、最後は諸々の不安を克服し、シーズンベストまで自らを高めていき、そして何より笑顔で前を向き直した姿は感動的だった。そして、そのプロセスでの浅田選手の心情に迫った番組は見応えがあった。

スポーツドキュメンタリーの白眉として、筆者は1983年に放送されたNHK特集『江夏の21球』を挙げたい。79年に行われたプロ野球日本シリーズ第7戦。近鉄バッファローズ対広島東洋カープの9回裏の攻防を描いたものである。残っていた中継映像から、江夏が投じた21球の背景、監督や各選手がその瞬間瞬間に何を考え、どう感じていたのかをインタビューし、恐らく時間にして10分ほどの試合模様を、50分の番組に再構成したものである。
テレビは“映像が最も大切”と思っている方が大半だ。しかし実際には、映っているものの背景、つまり映っていない部分を炙り出すことで、映像にとてつもない価値が出ることがある。
『江夏の21球』は生中継中心だったスポーツ番組に、ドキュメンタリーとしての新しい可能性を切り拓いた嚆矢だった。そして今回の『浅田真央 笑顔の理由』も、他局の中継映像を使いながらも、その中継番組では見えていなかった浅田選手の心の葛藤を可視化した点で優れていた。

しかも単にインタビューしただけではない。見落とし勝ちだが、編集に細心の注意が払われている。番組内で数回出て来る浅田選手のインタビューは、基本的に断定で終わっていない。彼女の口癖なのか、「~したり」「~だけど」「~なので」など、文章がなかなか切れないのである。筆者には心の揺れがひしひしと伝わってきた。
ところが復帰1年の闘いを終えた末に、ようやく自己ベストを出した瞬間、彼女のインタビューは初めてキッパリ断定で終わった。「一つ一つ自分のペースで選手生活を歩んでいけたらいいと思っている」。
実際には、1年の途中で幾度と聞いたインタビューには、句読点がきちんと付いたセンテンスもあっただろう。しかし敢えて揺れる言葉が並ぶ部分を使い続け、最後にスパッと終わらせる編集にしている。細かい部分であるが、“笑顔の理由”が気持ちよく伝わったと感ずる。

元海外バレエ団ダンサーの“butterfly”さんも、番組の読後感をこうまとめている。

体力のピークを過ぎた後、その事実と折り合いながら、さらに次の次元をめざして努力する。これはバレエでも、私達の人生でも求められる大切な姿勢です。その難しい挑戦に、笑顔で臨む浅田真央選手。結果はどうあれ、その姿勢に拍手を送りたい。

スタートして23年を経過し、テレビ番組の制作環境はもろもろ厳しくなっている。筆者がドキュメンタリーに挑んでいた80年代から90年代前半とは状況は大きく違う。そんな中『クローズアップ現代』も、テレビのピークを過ぎた後の難しい事実と折り合いながら、ぜひ次の次元をめざして奮闘してもらいたいものである。


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2016
04.10

齢80歳の困惑

Category: 日常のこと
母が、「これ、どう思う?」と取り出したのは、
いつもお世話になっているデイサービスのスタッフから頂いたというプレゼント。

キーホルダーだった。
80歳の母がお花のレイをかけて笑っている写真が、丸いキーホルダーになっている。

「あら、よかったね」
私は本当にそう思ったのだが、
母は憮然として言った。

「誰がこんなの、欲しいと思う?」

彼女は老いた自分の顔を晒すキーホルダーに困惑していた。

「これをさ、私がどこにつけるんだよ、ねえ。」
「せめて好きな俳優のキーホルダーならねえ・・・。でもさ、捨てるわけにもいかないよね。」


ふーん・・・・・・。
私はこんな時だけ悪知恵がまわる。

「人が捨てたいものでも捨てられない奴がいるじゃん」


*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*-* -*-*-*-*-*-*-*-*-*


「きっとご利益があるよ。」

何のご利益だか知らないが、
そう言ってキーホルダーをゴリオ(仮名)に押し付けた。

微妙な顔で受け取ったソレが、
これから先、ずっと彼の手元にあることは間違いない。

便利な男だ。

いつか彼が結婚した時、
彼の「捨てられないモノ」の数々を見て、
お嫁さんが絶句する日が楽しみなような、不憫なような・・・。









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2016
04.07

Ice Legendsとその他の備忘録

まずは真央ブログからテレビ番組

NHK総合
クローズアップ現代+ 「現役続行!浅田真央 ~独占密着・復帰1年の軌跡」
4月11日(月) 22:00~22:25
http://www.nhk.or.jp/gendai/



ヤマト先生ブログでは
http://www.jsports.co.jp/skate/yamato/fs1516/post-198/

バンケでのさっとんの写真がちょー可愛い!!!!!
その前の記事では、
「そんな2人に、ちゃっかりオレも!」
って
いつもにも増してビミョーな写真ですが、
こういうところにもヤマト先生の男気が見えてしまうのは贔屓目なんでしょか。


そして夢の 「Ice Legends」について書いてあるabsoluteskatingの4月2日記事!
http://absoluteskating.com/index.php?cat=articles&id=2016icelegendspromo

この中でランビはショーのキャストについてこう語っています。
日本語は私のコンニャクですのであてになりません。ググる翻訳で確かめられてくださいませ。

"Actually when I was creating the cast I was not thinking about the medals, I was simply thinking about the skaters I would want to share the ice with," Stéphane said.

「僕はキャストを決める時、メダル(の有る無し)よりも、ただ単に、一緒に氷の上で滑りたいと思うスケーターかどうかということだけを考えていました。」



ブライアン・ジュベールは、なんとモロゾフと「ジェームズ・ボンド」プログラムを作り直すそうです。
技術的にクワドを入れられなくなった分(3Aはできるけどねっ!)、複雑なコレオやステップを入れていくということですが、
楽しみですね。

2007年SPの「007」はこちら


ソチプログラムでは
タチアナ・ボロソジャル & マキシム・トランコフペアに「仮面舞踏会」を依頼し、
カロコスは多分「ボレロ」

サラ・マイアーは「彼女のお気に入りのSP」
ステファン・ランビエール自身は「ポエタ」



これについては彼のインスタで衣装をチラ見せしてますね。
icelegend1.png

彼も現役生活をどうするかと模索したシーズンに、この「ポエタ」で見事に息を吹き返したんでした。
このシーズンのことを彼はこう語っています。
これもコンニャクですので、あてになりません。すっげー意訳ですので、あしからず。

"I think that I came back because that was my challenge. The challenge was not to compete for a gold medal, but it was to compete and to show a different approach in my skating, to show that the crazy ideas became more precise, more artistic, more coherent. That was my challenge for the Worlds in Japan."

「僕はそれがチャレンジだったから(競技に)戻ったのだと思うんです。そのチャレンジは金メダルを獲るためのものではなくて、僕の(これまでとは)違ったスケートへのアプローチや、僕の(意訳)アイデアがより正確で芸術的、そして一貫したものになったことを見てもらうためのものでした。それが日本での世界選手権での僕の挑戦だったのです。」



なんだか今季を終えた真央ちゃんのインタビューを思い出す言葉でした。
歴史は繰り返しているんですね。
浅田真央のチャレンジは、ランビと同質のものであるような、そう思えた言葉でした。
勿論来季は「選手である以上は結果を求めていく。勝負とか勝ちにこだわるということが必要」
とは言っているようですが、
今の自分を点数とは関係ないところで認めることのできる彼女は、
目標を高く掲げることでモチベーションを上げている気がします。


さて、ランビは更に彼が敬愛するピアニスト、「Khatia Buniatishvili」さん(2014年のAOIで一緒だったんですね)を招いて、
彼女が「ショパン、ドビュッシー、ラヴェル」を弾き、3つの曲が一つのストーリーとなるようなプログラムにするそうです。
どんだけ贅沢なショーなんでしょう・・・・。
まさに夢の舞台じゃ・・。

Chopin's "Ballade", the first piece, will introduce the setting.
It will be a group number, and although the main characters, portrayed by Carolina Kostner and Stéphane, will be present on the ice, the focus won't be on them yet.

最初のショパンの「バラード」が設定を紹介するものになるでしょう。
これはグループナンバーで、カロリーナ・コストナーとステファンによって描かれるメインキャラクターが氷上に現れても、まだ彼らには焦点が当てられません。

The second piece, to Debussy's "Clair de lune", will tell the woman's side of the story.
She is in love, she is dreaming, simple, beautiful, and feminine.

2番目のドビュッシー「月の光」はストーリーを女性側から語るものになります。
彼女は恋し夢見る、素直で美しく、愛らしい女性。

And then comes Stéphane's part to Ravel's "La valse", more dramatic and tragic as in the end his tormented character kills himself.

そしてステファンの「ラ・ヴァルス」は、(イタリア映画“Torment”モチーフにしたものか?)男性が悲劇的な最後を遂げるよりドラマティックなパートになる。



「ラヴェルのワルツ」


インタビューの後半、ランビは自分が成したい「アイスショー」について熱く語っています。
日本のアイスショーと自分のヨーロッパでのショーはずいぶん違うとも。
スケーターにとって快適な環境で練習できるよう、心を砕いているようです。
素晴らしいショーのクリエイターになったランビ。

さて、このピアノ生演奏で恋する乙女を演じるのが誰なのか、
興味津々なところでございます。
(が、やはりメインキャラクターがカロコスとランビらしいので、ここはカロリーナなんでしょうか?)
「月の光」で、素直で美しく、夢見る女性らしい乙女と言えば・・・一人しかいないと思うのですがっ。


ランビが一緒に滑りたいと思って集まってもらったスケーターの皆さんはこちら
icelegends2.png


ラトビアのデニス君もこのショーに出演だとか。
Ice Legends ‏インスタで、ワールドの時のデニス・ヴァシリエフス君を褒めてましたね。
他にもロシアのElizaveta Nugumanovaちゃん、
ランビの教え子でしょうか、Noah Bodenstein君も出演だそうです。

この夢のショー、DVDにして発売とかしないのでしょうか?


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2016
04.06

「女経」の純情

Category: 映画の話
日本映画には全く興味がなく、この年まで来てしまった。

ところが、このところ「日本映画チャンネル」の古い映画にハマっている。

昨日見たのが薬師丸ひろ子の「Wの悲劇」。
最後に薬師丸が歌うユーミンの曲、こんなに良かったっけ。
あの芝居がかった芝居を真似して遊んだものだが、今見ると三田佳子も凄いし、ラストの後味も悪くない。

「探偵物語」は若い頃何度も見たが、今見ても薬師丸が素晴らしい。
顎のラインのボブにワンピースがとても似合って、私はこの映画、衣装も好きなのだ。
これを見て大きな白いイアリングを買った記憶がある。
松田優作との最後のキスシーンがやはり可愛くて切ない。
秋川リサとの大人の関係が松田優作の複雑さを物語っていて、
彼の映画でも、私はこれが一番好きなのだ。

赤川次郎原作ものは大体においてそうなのかもしれないが、
犯人探しなど実はどうでも良い映画だったのだと今更気が付く。
昔見た時には、犯人とその動機に「おぉっ」と思った自分は若かったのだ。

薬師丸ひろ子はある意味肉感的で、なのに清潔感があった。
身体の線が全部出るようなワンピースやタンクトップにスカートであっても、
身体つきはとても魅力的なのに、妙な色気は皆無。
男女両方から好かれる珍しいタイプだったと思う。

「里見八犬伝」では、薬師丸の弾むような若い肉体(私、おっさんか?)の記録映像のようで、
もう「八人の犬士」の話なんか(あの夏木マリのメーキャップでさえ)どうでもよかったんだなと、ようやく納得がいったものだ。

昔は小ばかにしていた「男性目線」が、「美しさ」をいかに的確につかんで映像に残したか、
今更ながら参りました、と思わずにはいられない。

前置きが長すぎた。

「女経」の話を書きたかったのだ。

これは、3監督によるオムニバス映画。
3話とも男よりお金が大事とばかりに生きてきた女たちが、それでも女の幸せをいつか掴みたいと、其々の道で生きていく話。

第1話から、まるでフランス映画を思わせる空気が漂っていた。
お洒落で、切なく、女の優しさが身に染みる。
蓮っ葉な嘘つきで、金の亡者のように生きながら、本当に愛した人から身を引く潔さ。
若尾文子の上手いこと。小悪魔と呼ぶには軽すぎる。
彼女の抱える人生の重みをしっかりと演じ、大人の映画として十分に鑑賞に堪える。

第2話は幽霊か、妖怪かと思わせる不思議な女が、正体を現したとたんに現代的なしたたかな女に変身し、
はてさて画面がガラッと明るくなってコンゲーム(詐欺)の話かと思いきや
「ティファニーで朝食を」のラストのように突然ハッピーエンドを迎える。
たった30分の中のこの充実感。30分だからこその長すぎない絶妙なテンポ。
舞台となる古い日本家屋が、市川崑監督らしい。
3作の中で、一番結末が明るくて好きだ。

第3話、幸せなのか不幸なのか、この女の行く末はわからない。
それでも刑務所に入った男を待とうと決める女心はいじらしくも強い。
しっかりものの京女の純情に、こちらがコロッと参りそうだ。
重態の幸薄い学生への献血を申し出、「栄養はたっぷりなんだから」と着物の袖から白く美しい腕を露わにする瞬間の艶。
素晴らしかった。

「1960年」、日本映画はこんなにも素敵だった。
日本映画がまだ職人の手によって作られていた時代だという。
見事というほかない、一級品ではないかと思う。



Movie Walkerより

「女経」
1960年1月14日公開

村松梢風の「女経」にヒントを得て、「天下の大泥棒 白浪五人男」の八住利雄が三つの物語を構成したもの。「貴族の階段」の吉村公三郎「野火」の市川崑「闇を横切れ」の増村保造がそれぞれを監督した。撮影も「浮草」の宮川一夫、「野火」の小林節雄、「闇を横切れ」の村井博がそれぞれ担当。


第1話〔耳を噛みたがる女〕  監督 吉村公三郎  増村保造

紀美―若尾文子

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 紀美は隅田川にもやうダルマ船の娘だが、貧しい家庭に愛想をつかし銀座のキャバレー・ゴンドラにつとめて男どもを巧みにだましては金をまきあげ、株を買っているという年に似合わぬしたたかもの。
 会社社長の後とり息子・正巳は、この紀美を陥落させて見せると友人の春本と賭けをした。スポーツカーでのドライブ、それからパチンコ屋、ついでゴンドラで飲んだ正巳と紀美はホテルの一室へ落着いた。正巳を好きでたまらないという紀美。そんな紀美を例の手練手管の思う正巳。しかし紀美は、あっさり正巳に抱かれた。
 翌朝、紀美の寝ているうちに正巳はホテルをぬけ出した。ついに賭けに勝った。が、正巳にはどうもスッキリしない後味だった。どうも紀美は商売ぬきで本気に自分を愛していたのではないか……。実は、この日、正巳は父の命令で好きでもない娘と結婚式を挙げることになっていた。昨夜は、いわば自由と恋愛の最後の夜だったのだ。好きでもない女と結婚するより、自分を本当に愛している女と……。正巳は紀美を探しに出た。
 そのころ紀美は友人の五月のアパートで、五月あての正巳の結婚披露の挨拶状を見つめていた。そこへ正巳が飛込んできた。正巳は紀美の心を確かめようとした。が、紀美は、昨夜のお金を頂戴と手を出した。怒った正巳は部屋を飛出した。
 正巳の将来を思う紀美の心も知らずに。今夜からまた男をだまして金を巻上げよう……。紀美の顔に悲しいかげが走った。


第2話 〔物を高く売りつける女〕  監督 市川崑

土砂爪子―山本富士子
三原靖―船越英二


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 「流行作家三原靖氏失踪か! 自殺の恐れあり」と新聞が報じたころ、当の三原氏は空ろな眼をして湘南の海岸に身を横たえていた。その彼の眼前を一瞬よぎった白い顔の女。三原氏はギョッとした。翌日三原氏は砂浜に泣く彼女の姿を見て再びギョッとした。夜、女は燃える手紙の束を見ていた。三原氏は彼女の傍に立った。女は死んだ主人の手紙を焼いていると言った。
 激しく惹かれた三原氏は彼女の眼を盗んで手紙の端をポケットに入れた。翌日、一軒の別荘の前に彼女が立っていた。三原氏は招ぜられて中へ入った。風呂をすすめられた。湯舟につかる三原氏の前に白い裸身の女が入ってきた。上気した三原氏は女の頬に思わず接吻した。女は、主人がお風呂のとき、いつも私に背中を流させました、あなたの背中を主人と思って流させて頂きありがとうございましたと礼を述べた。そして、女は実家も主人の家も東京にあり、この家は売りに出してあると話した。
 三原氏は好奇心にかられ、この家を女もろとも買うと言った。売値は六百万。契約の日、三原氏は百万円持って女の家を訪ねた。売買契約書を持った女の態度は大へん事務的だった。
 翌日、三原氏が女を訪ねると誰もいず、売買契約の事務は不動産がやるとの女の置手紙があった。そのころ、女--土砂爪子は不動産から売買手数料の五万円をもらっていた。彼女は美貌を資本とする住宅ブローカーだった。
 してやったり、ところが彼女のアパートに三原氏が訪ねてきた。驚いて謝る爪子。しかし三原氏はあの家を五十万円儲けて売ったと言った。氏は爪子が燃し残した請求書から、彼女のからくりを知ったのだ。
 “君と結婚すればノイローゼにもならないし、小説の種もつきない”--三原氏はにやりと笑った。


第3話 〔恋を忘れていた女〕 監督 増村保造 吉村公三郎

お三津―京マチ子

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 お三津は京都の修学旅行専門の宿屋の主人だ。昔は先斗町の売れっ妓。碇家に嫁ぎ主人に先立たれてから舅の五助に楽隠居させ、木屋町に酒場、先斗町にお茶屋を経営する働き者である。死んだ主人の妹弓子が恋人吉須と結婚するため金を借りにくるが、碇家の財産を狙ってきたものと思い、いい返事をしない。
 この碇家に名古屋の小学校の団体が宿泊したが、生徒の一人がオートバイにはねられて重傷を起し大騒ぎ。そこへ、お三津の芸妓時代の恋人兼光から電話がくるが、お三津は居留守を使う。何やかやでクサクサしたお三津は自宅へ帰るが、一度関係をつけた五助は、お三津に迫る。五助を突き飛ばして自分の酒場チャイカへ走ったお三津は、そこに彼女を待っていた兼光の傍へ座って泣き伏した。
 が、昔のことを思って訪ねてきたと思った兼光に二百万円の手形を割引いてくれと切出され、お三津は彼との情愛に水をさされた。そのとき、刑事が入ってきた。九州で詐欺をやった指名手配の男、兼光を逮捕に来たのだ。兼光は抵抗も空しく捕った。 
 そこへ碇家から、怪我した生徒が重態という電話。病床に駆けつけたお三津は子供の苦しそうな姿に輸血を申し出た。助かった子供の感謝の眼は、自分のことしか考えずに生きて来たお三津に新しい喜びを与えた。
 東京へ帰る弓子と吉須が挨拶に来た。お三津は気持よく金をやった。そして自分も、刑務所へ入った男を待って女の幸せをもう一度つかみたいと明るく言った。



ただし、いくら映画のストーリーとはあまり関係のない小説のエッセンスを頂いたからといって、このタイトルはいかがなものか。

これではただのピンク映画と間違われる。

こんなに美しいのに。

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2016
04.05

シュニトケのタンゴ

世界選手権のEXを見た。

私の中では
シブズの「月の光」
パトリックの「ディア・プロディナンス~ブラックバード」
ペアのドゥハメル/ラドフォード組、「ピアノマン」
ポゴの『ロマノフ王朝の最期』から、「シュニトケのタンゴ」。
気持ちを揺さぶられる素晴らしい演技だった。

2016worldex.png



勿論真央ちゃんは宙に少し浮いているのではと思う身のこなし。

ボーやん君のEXは面白かった!
彼の表現の幅の広さを初めて知った。

アシュリーもGGも美しく、ゴージャスだったし、
さっとんの「翼をください」は天使のようで、あっという間に終わってしまった気がした。

みな、曲の選び方が好きだった。

中でもシュニトケのタンゴはポゴが情熱的に滑ったが、
あの赤と白の衣装で映画の世界(えっ?怪僧ラスプーチンかっ?!)を再現したのか。
曲の難しさと素晴らしさが伝わって、
タラママ振付のマオ「シュニトケ」をもう一度見たくなった。


このシーズンも、笑顔の真央ちゃんがいたんだな。
それにしても、なんというステップ。
難しいにもほどがある。
ああ、タラソワさん振付の真央ちゃんをまた見たい。






ポゴの演技はタンゴというより、「ロマノフ王朝」に重きを置いた表現。
こんな演技もできるのかと驚いたし、彼女の違う一面に驚く。
とてもアーティスティック。

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2016
04.03

合宿の週末

Category: 日常のこと
世界選手権をゆっくり見るには、余りに忙しい週末だった。
明け方まで仕事とネットで読んだり書いたりした挙句、
早朝5時半から合宿所で朝食作り。
練習試合の会場までの車の中の往復の時間が唯一熟睡できる時間だった。
朝食の片づけの後は昼食まで作って競技場に持って行き、練習試合の部員たちに食べさせて又夕食作りに合宿所に戻るという。
ど根性な週末。

ゴリオたちのチームは、大きな怪我をする子もいず、(両肩脱臼でさえまだ良い方だ)とりあえず春休みの合宿を乗り切った。

ゴリオ(仮名)は、1年たって体つきもメンタルもずいぶん変わった。

練習とはいえ試合を楽しんでいる。

彼曰く、「合法的にどけやおら~って、前に進んだり、相手を倒したりできるからね。」

「合法的」っすか。

フィギュアのような繊細さは欠片もない。

けれど、試合が終われば互いに握手をし、時に相手の肩をポンポンとたたき、ねぎらいを見せる。

こんなガチ勝負の競技でさえ、練習中に「マナー違反」をしたのされたのでいきなり相手に怒鳴ったりすれば、
それこそ失礼な奴で、メンタルが不安定なのではと思われるだけだ。

「俺様」
なら何をしても被害者で、
相手を一方的に非難してもいいわけか。
スピンしている選手は、その場で止まった状態で回っているのだから周りは見えない。
いくら自分のジャンプの軌道上にいようと、近づいていく選手の方が、避けようと思えば避けられるはず。

スピン中の選手に向かって滑っていく方が恐ろしくはないか。
例え自分の曲かけ中であっても、自分一人がリンクを使っているわけではない。

そんなに相手選手が「マナー違反を繰り返している」のなら
自分はどうなんだろう。
これまでの動画も見たが、この世選でも不思議なことをしているではないか。

今回のフリーの6分間練習の直前。

リンクに出る前の選手たちのいる狭い場所には関係者も座っている。
その狭い中で、只一人ジャンプをくるっと跳ぶ選手は危なくはないのか。

あれで当たり前なのか。
他の選手たちは並んでリンクに出る瞬間を待っているというのに。

ついでに言えば、私は上位3選手が座る席での土下座が信じられない。
ふざけてやっているのだろうが、
見ている方は、その卑屈な態度とは裏腹な傲慢さを感じてしまう。

土下座の意味するところを、世界選手権という場で他の国の人々がどのように見るのか、
彼は考えたことがあるのだろうか。




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2016
04.03

相思相愛

Category: 浅田真央
浅田真央は、笑顔で演技を締めくくった。
演技にも泣いたが、
「現役続行の意向」という文字に、
参った、と思う。



浅田真央のような選手は、これまでいなかった。
何度も何度も立ち上がり、残りわずかという自覚を持って、競技生活を最後の最後まで全うしようとするその勇気。
スケートを愛し、スケートに愛されている。

彼女とスケートが相思相愛の仲ならば、
誰もその間を割くことはできない。

いつも、周りの想像を超えてきた選手。
メディアが描くシナリオ、カネの亡者の思惑から遠く別世界にいる選手。

6分間練習にリンクに飛び出した選手たちの中で、まるで違う生き物のように優雅に滑った。
あの孤独なリンクで観客の声援を力に変えて。

どうか足はしっかり治して、無理せずショーの準備を迎えてほしい。



時事ドットコムニュース

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浅田、納得の締めくくり=世界フィギュア



滑り終えた直後、ほっとした表情で氷の上に座り込んだ浅田。冒頭のトリプルアクセル(3回転半)は回転不足こそ取られたが、まずまずの出来。その後も細かいミスはあってもきっちり流れを通すことはできた。シーズン最後の演技をまとめ、合計200.30点の今季自己ベスト。得点を確認すると、両手の親指を立てて喜んだ。

 SPは代名詞のトリプルアクセルを失敗し、9位と出遅れた。「いつもなら落ち込んでいたところだけど、ちょっと違う気持ちになった。いろいろ経験した分、うまく切り替えられた」
 2季ぶりに復帰した今季は思うような演技ができず、「復帰しない方がよかったのかな」とも思ったという。しかし、ようやく納得いく滑りができた。

「競技生活はあと何年かに限られていると思う。現役に戻って、たくさん応援してもらえてうれしい」。

競技続行の意欲を問われると、「できるので、そういう思いはある」と語った。

(ボストン時事)(2016/04/03-17:32)



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時事ドットコム

浅田真央 華麗なる復活 写真特集

フィギュアスケート世界選手権・女子フリーで演技を終えた浅田真央。7位に終わった浅田はフリー演技終了後、これからも演技を見せ続けたいかとの質問に対し
「できるので、そういう思いはある」と語り、来季も現役を続行する意向を示した
=米ボストン(2016年04月02日) 【時事通信社】


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今日のさっとんの演技は本当に美しかった。
素晴らしかった。
同じように、ポゴもメドべも未来ちゃんも、観客を沸かせた本郷さんも。
そしてアシュリーも、GGだって。

見ていて辛いこともあるけれど、
フィギュアスケートほど、気持ちを揺さぶられる競技は私にとって他にない。

点数にもはや意味など無い。
エッジエラー、回転不足もその時その選手によって変わるのだから。

アシュリーの演技は本当に素晴らしかった。
でも彼女が回転不足をほとんどのジャンプに取られたシーズンから、
そこまで完璧にジャンプの修正ができたというのだろうか?
北米でのフィギュアスケート人気の回復に、この世界選手権はいいカンフル剤になったことだろう。

点数に意味はなくても、やはり評価は常に選手のモチベーションを上げもすれば叩きのめすこともある。

こんな競技でも、選手は競技を愛し、何度も立ち上がる。

新世界女王は、インタビューで「セーラームーン」の歌詞を披露した可愛い16歳。
YOUはここにも・・・。
「男日曜」によれば、このインタビューは真央ちゃんの薦めもあってメドべが披露したらしい。
昨年の世界女王は今季ほとんど話題に上ることもなかった。
来年の世選の顔ぶれも、女子はわからない。特にロシアは。




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2016
04.02

第3の男

世界選手権、男子シングル、連覇したハビエル・フェルナンデスの演技は、本当に素晴らしかった。

ハビといえば、昨年世界王者になるまでは4回転を跳んでも跳んでもトップになかなか届かず、プログラムも彼の良さを十分引き出すには物足りない気がしていた。
第3の男という印象がぬぐえなかった彼が、昨季のチャンスを逃さず世界王者となり、今季は益々その演技に円熟味を増したように思う。

彼の4回転をはじめとするジャンプの全てが演技に溶け込んでいたとテケシ先生が評した通り、完璧に音楽に乗る軽快さは観る者を決して飽かせない美しさだった。

高橋大輔氏が、「おじいちゃんが幸せそうな顔して彼の演技を見ていたので、彼の世界観というのがすごく合ってたなあという風に思いましたね。」と話していた。
目に浮かぶような光景。これは台本ではないだろう。
想像以上に大輔さんのゲストコメントは素敵。

世界王者にふさわしい大人の自然な振る舞い。
何もかもが、文句なしだった。
インタビューも素晴らしかった。
銀メダリストのあの態度とはあまりに対照的。

そして雨男子、リッポンとアーロンの二人の演技は感動的だった。
彼らこそ、第3、第4の男として長年諦めずに頑張ってきた。
特にリッポンの演技。
もっと点数をあげたかった。
あのバレエジャンプとステップの難しい工夫やタノジャンプ。
4回転ルッツに挑み続け、上位選手と同じく体勢を崩しながらも転倒はしなかったのに、評価は・・・。
外見の美しさの中に秘めた彼の芯の強さには脱帽。

スケアメ、ちょっといいはなし
Underdogs have their day
全米男子、ついにリッポンポンがっ!
全米男子とワールド派遣
↑こんな感じで
リッポンについては何度も書いているが、彼こそアメリカ国内でも第3の男だったかもしれない。
ワールドの結果だけで言えば今もそうなのかもしれないが、
あの頃より数段進化したリッポン選手を今年も観ることができて、本当に嬉しかった。

パトリックは少し緊張があったのか、4CCの時とは少し違った。
滑走順も関係したのか、覇気がなかったように見えた。
それでもスケーティングの美しさにハッとするような瞬間がある。
パトリックの演技が今後も試合で見られるかどうか、注目している。


それにしても、今回の銀、銅メダリスト、「回り切った数種の4回転を跳んだ」のかもしれないが、よれよれしたジャンプのランディングと粗いステップにあの点数がつくのは何故なんだろう。
女子を考えれば信じられないほど真逆な評価ではないだろうか。


泣くな昌磨、と言いたい。
「いつも、いつも以上に頑張った時は、毎回いい演技ができていたんですけども、
頑張ってこれだけ、いい演技ができないっていうのは初めての経験なので・・・悔しいです。」


あの涙に、もしかして転倒の際にどこか痛めたのかと思ったほどだった。
インタビューでは純粋な、真っ直ぐな思いが伝わった。
色んな思いをしながら競技を続けたものだけが、ある日忘れられない演技をする自分に出会うのだ、きっと。

コリヤダ君、ロシアはガチ男が引退した後、またこんな成長株が生まれていたのね。
コフトン君は滑走順といい、なんとなく今は運悪く、この状態かもしれないけれど、まだ若い。
頑張って。

フリーはデニス・ヴァシリエフス君は見ることができたが、テン君は放送すらされなかった。

フィギュアスケートを見てきた者は、みなテン君の所属がどんな事務所であれ、彼という選手を知っているだろう。
しっかり反論すべきは反論して良いと思う。
「妨害男」とまで書いた阿呆な新聞屋のネット記事は本当に腹立だしく、奇妙。
「日本男子初となる2度目の戴冠により近づいた。」この独特な言い回しは、日本人が書くものではなかろう。



スポーツ選手の中には、生まれ持った才能と魅力で、人気も実力も特別な選手がいる。
その一握りの選手のなかに割って入れるかどうかの第2、第3の選手達は大勢いるだろう。
第3の男からトップに上り詰めた選手の喜びはひときわだと思う。

王者にふさわしい振る舞いのできる選手に、おめでとう。



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2016
04.02

「ガス燈」の旋律

Category: 映画の話
イングリッド・バーグマンが1944年アカデミー主演女優賞を得た映画。

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Movie Walkerより

「ガス燈」
1947年6月公開

1870年のロンドン。オールクィスト家に起こった歌手アリス・オ ールクィスト嬢の殺人事件は未だ犯人があがっていなかった。アリスの姪ポーラはグレゴリー・アントンと結婚したが、良人の言に従い問題の家で結婚生活を営むことになった。ある日ハンドバックに入れたはずの首飾りが紛失して以来、グレゴリーはポーラが自分のしたことを少しも記憶していないといってことごとに彼女を責めた。そのあげく、彼女も精神病で死んだ彼女の母と同じく次第に精神が衰えて死ぬだろうというのだった。ポーラは良人の言を気にしながら一人不安な日を送っていたが、次第に自分の精神状態に自信を失い、夜ごとにポッと薄暗くなるガス燈の光も、天井に聞こえる奇怪な物音も、自分の精神の衰えているための錯覚かと焦燥にかられた。ある夜久し振りで良人と出かけた知人宅で時計を隠したといって良人から辱しめられたとき、彼女は堪え難い悲しみに襲われたがその様子を注視している若い男があった。彼はブライアン・カメロンという探偵で、少年時代憧れていた名歌手アリスの殺人事件には非常な関心をもっていた。彼はある夜グレゴリーの外出中家人の制止もきかずポーラに会い、彼女の叔母の事件についていろいろとポーラに語ってきかせ、また、彼女が決して精神に異常を来しているのではなく、良人の策略にすぎないこと、夜ごとに暗くなるガス燈の光も良人が閉鎖された屋根裏の部屋にいるためであることなどを説明した。ブライアンがグレゴリーの机をあけてみると、彼女が隠したと良人から責められた数々の品物が現われ、20年前のこの家の殺人事件にグレゴリーが重大な関係を持っていた事実を説明する手紙も発見される。やがて探し求めていたダイヤモンドを手に入れて現われたグレゴリーはブライアンに捕まえられるのだった。

スタッフ
監督 ジョージ・キューカー
脚色 ジョン・ヴァン・ドルーテン 、 ワルター・ライシュ 、 ジョン・L・ボルダーストン
原作戯曲 パトリック・ハミルトン
製作 アーサー・ホーンブロウ・ジュニア


キャスト
Gregory_Anton シャルル・ボワイエ
Paula イングリッド・バーグマン
Brian_Cameron ジョゼフ・コットン



シャルル・ポワイエ扮する夫グレゴリーはピアニスト。
彼の陰湿なマインドコントロールでバーグマン演ずる妻ポーラは正気を失ったように思いこまされる。

ポーラは病気だからと訪ねてきた知人にも会わせてもらえない日々が続く。
一人部屋に残されることを怖がるほど追い込まれた彼女が追いすがってもなお、作曲のためだと夜の町に出ていくグレゴリー。


夫が外出すると「ガス燈」が急に暗くなるのは外出したと見せかけて宝石を探す夫が屋根裏にいる時のトリックだった。
ポーラの叔母を殺し、彼女の宝石を狙って跡継ぎである姪のポーラまで破滅に追い込もうとしたのは夫グレゴリーだった。

グレゴリーが家でオペレッタなどを弾いてみせる。
楽しそうに音楽に合わせて歌うポーラに、いきなりグレゴリーのピアノが止まる。
妻を責める夫の言葉は、ピアノの音が止むと同時に始まる。
ピアノの音は妻の感情を揺さぶる鍵だ。

ある時、ポーラの家と昔懇意だったダルロイ邸でのコンサートに招かれたグレゴリーとポーラ夫妻。
グレゴリーはポーラを病気と偽り断りの返事を出すが、ポーラは一人でも行こうとする。

この映画で出色だと思ったのは、結局二人で出かけたダルロイ邸でのコンサートのシーン。
ピアニストが弾くのは「ショパンのバラード一番」。
バラード一番が流れる中で、ポーラが知らない間に夫の時計がなくなり、その時計はポーラのバッグに入っていた。
混乱して取り乱すポーラを責めつつ、周囲に「妻は具合が悪い」と言いながらポーラを連れ出すグレゴリー。

ポーラの恐怖と混乱をこの「バラード一番」の緊張感あふれる旋律が伝える。
格調高い、けれど緊迫した場面だ。

自分が狂気に陥っていると恐れるポーラ役のバーグマン、迫真の演技。
バラ一は美しいだけの曲ではなく、こんな場面にもぴったりだったのだ。



格調高いバラ一が秘める狂気の一面。

グレゴリーは宝石目当てにポーラの叔母を殺害し、跡継ぎのポーラまでも宝石のために病院送りにしようと画策していた。



グレゴリーは最後まで残酷だ。

「僕らの間にあったのはあの宝石だ。炎のように頭の中で君との間を隔てていた。宝石に取りつかれて。なぜだろう。」





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2016
04.02

新年度

Category: 日常のこと
満開に咲いた桜の花を眺めながら、今日は屋外テラスのレストランで慌ただしいランチを仕事仲間と食べた。

今日からまた新年度。
やっておかなくてはならない仕事が山積みで、時間がたつのを忘れていた。

着替える時間も惜しく、そのままゴリオ(仮名)の合宿所に向かう。
保護者は合宿の飯炊き要員なので、とりあえず間に合わなくても行っておかなくては申し訳が立たない。

毎度家で持ち帰りの仕事を抱える私には、非常に辛い。
明日も早朝から朝食作り。
だがしかし、女の世界は裏で何を言われるかわからない。
「誠意」だけは見せておこう。

早朝、世界選手権女子SPの結果は確認していたので、
選手の演技は日付が変わる頃に見られれば良いと思っていた。

真央ちゃんの演技を楽しみにしていた。
ただ、笑顔が見たかった。

ヘアスタイルもお化粧も、素敵。
ちょっとポンパ気味に前髪も盛り加減で毛先はカール。
とても似合っている。

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難しいことをいとも簡単にやってのけながら、氷に吸い付くようなスケーティングに見とれているうち、あっという間に終わってしまう。
驚くほど落ち着いたレポートをする高橋大輔氏も「ステップに引き込まれているうち、2分50秒があっという間」、と言っていた。

それにしてもPCSの低さに驚く。
男子の時も思ったが、もはやSSなんてジャンプのおまけ点と同じなんじゃないのか。

世界選手権の女子は、華やかで迫力があり、ブンブンスピードがあり、という選手が上位にきたように見える。

女子は欧州からこれまであまり知らなかった素敵な選手が何人も出てきている。

未来ちゃんの演技には泣けた。
彼女の良さが存分に出ていた演技。
観客の声援が後半の情熱ほとばしるステップに繋がったのか。

回転不足というのはアシュリーもしばらく取られ続けていたが、
雨女の中でも「押し」ではないからか、点数は演技とはとても見合わないものだと感じた。

アシュリーも素晴らしかった。
彼女自身が楽しんで滑っているのがまたとても。

メドべはリプ同様、やはり好みの選手。
ただ、少し疲れていたのかもしれないが、点数は出過ぎだと思う。

ラジオのスピンのポジション!!!ロシア女子のスピンは本当に素敵。
でもジャンプに関しては、未来ちゃんとどう違うのか全くわからない。
やはり同じ基準では採点されていないと感じるのも無理ないのでは?

本郷さんも今日はとても良かったのでは。
さっとんのショートも大好きなプログラム。
このショートは何度見てもワクワクする。
今日は回転不足を取られたけれど、PCSは出ていたし。
今回は特に、ヤマト先生がキスクラに座っているせいか、
違う動悸を感じるのは、歳のせいだろうか。

GGのタンゴには、ちょっと笑ってしまった。
健康的で元気いっぱいのキレッキレタンゴも、時にはいいかも。
この加点とPCSは地元点?

ポゴは集中力が半端なかった気がする。
力強く、迫力を感じる演技に釘づけ。

こうして見ていくと、みんな違って、みんないいと、本当に思う。

みんな同じにしてほしいのは、採点の基準だけなんだけど。


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2016
04.01

GO!

Category: 浅田真央
さあ、ボストンに行った気になって、
思い切り叫んでみましょう。

GO MAO GO!




会場はここっ!

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30番滑走。



この通り、このままの調子で、思いっきり、

GO MAO GO!

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