2016
09.11

昔日のトミー

高校の数学の先生は「トミー」と呼ばれたメガネのとっちゃん坊やでした。

約40名の女子学生の注視を浴びた彼の授業はいつもしどろもどろで、
クラスの成績が急降下した責任を問われ、
ベテランの先生が授業を見に来ていた時期もありました。

一生懸命な「トミー」が可愛くて、いたぶるように「わかりませーん💛」を連発していた私たちも、
さすがに反省し
次の数学のテストは、皆頑張って勉強したもんです。
だって、「トミー」のためですもの、辞めさせられては退屈な授業の中の、
ささやかな息抜きの時間がなくなってしまいます。

あれじゃあ結婚もできまいと心配した私たちは、
いつか自分たちの誰かがトミーと結婚してあげようと
超上から目線で勝手に決めていたのでした。

あれから幾年月。



「トミー」と言えば?

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「マツ」!


「トミマツ」はキャラが絶妙な凸凹2人組でございましたが、

「トミーとタペンス」は2人揃ってステキなカップルだと思っておりました。

作品の中で歳を重ねることにおいてはサバ読むこともなく、安心の面白さで読める小説だったはず。


ところがっ!

犬HKを見逃していたので、AXNミステリを楽しみに録画していたアガサ・クリスティのあの「おしどり探偵」が超おマヌケな迷惑夫婦のドラマになっていたなんて!


新しい「トミーとタペンス」を、大丈夫かBBC!と違う意味でハラハラしながら、とりあえず「秘密機関」、「NかMか」を我慢して見ましたわ。

あまりのshockに、昔日の記憶がウツクシク感じられるのと同じかと思い、若かりし日に読んだ原作を読み返したほどでした。


こちらは懐かしいジェームズ・ワーウィックとフランチェスカ・アニスの「おしどり探偵」。
フランチェスカ・アニスの品の良い美しさは「バートラムホテルにて」でミス・マープルの友人として出演していた時も変わりなく、とても素敵でした。
「なぜ、エヴァンスに頼まなかったか」でもこの2人が主人公を演じ、「おしどり夫婦」ものではありませんでしたが、これも大好きなドラマでした。

「親指のうずき」はフランス版がとてもよくできていましたし、これをミスマープルものに仕立てたドラマのベレスフォード夫人も見事な美しい、そしてちょっと悩める中年夫人でしたね。


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こちらのトミーは長身の頼りなげな優男ですが、機知に富み行動的なタペンスと共に
事件を解決していきます。
古いドラマというだけでなく、セットが中途半端でお粗末なところが残念ではあるのですが、
そんなことは吹き飛ばすくらいは一応このお2人、活躍するんですね。




こちらが今回のBBC版
デヴィッド・ウォリアムス、ジェシカ・レインの「トミーとタペンス―2人で探偵を」

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慎重な性格という設定を大幅にはみ出した愚鈍なトミーと、活動的というよりハチャメチャな我儘女タペンス。
ジェシカ・レインはタペンスにピッタリなのですが、キャラクターに一貫性なさすぎ。
何しろお話があまりにもあまりにもあまりにも・・・・・・・!!!!!!

第一次世界大戦後を第二次世界大戦後に変えましたとか、そういうことではなく。
軽いお楽しみミステリかと思えば、人の首をひねり殺すシーンとか妙に残酷だったり。

事件の全貌もろくにわかりませんが、
何しろ2人は悪者どもと諜報局を引っ掻き回した挙句、
別に事件を解決しましたぜってわけでもないんですわ。


秘密の通路から海岸に出るまでのきったない闇を歩く間も、トミーを探して海岸をウロウロする時も、
なぜか脱がないすっげー毛皮のコート。
なのに靴は何とも言えないブーティーですか何ですか?
確かにハイヒール履いて歩ける所じゃありませんけど、
豪華なドレスも着るんですが、タペンスの魅力を活かしきれない演出。

子どもを寄宿学校に預けたら後は会話にしか出てこないってところも変ですが。
ストーリーがあそこまでわからんちんでは、見ている方も開いた口が塞がらないままですわ。

そもそも戦争が終わって幼馴染が再会するところから始まる展開が大好きだったのに、
いきなり2人は「無職」で「子持ち」、その上おじさん頼みのいい加減夫婦からのスタートって?

いいんですよ、カーター氏とアルバートがどんな人物設定にされていようと。
脇役なんですから。

いくらなんでもトミーがあれではクリスティーも浮かばれまいと思うのですが。

あ、数学の先生の方の「トミー」は、その後無事に結婚して、今も同じ学校で数学教えてますので、
昔日の「トミー」はお幸せです💛

追記
ジェラルディンさん版ミス・マープルの「書斎の死体」に、自分の車に死体を載せられた上、車を焼いてしまわれるちょっとおまぬけな青年がおりましたが、あの俳優さんがこちらの「トミー」になっていたんですね。
どこかで見た顔だと思っていたのです。
うわー。マープルドラマの方が役どころ、ピッタリでしたわー。




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2016
03.08

□(四角)がすき

「名探偵ポワロ」TVシリーズで、また「ヒッコリーロードの殺人」を見ていた。

秘書のミス・レモンの姉で、寮母のハバード夫人が面倒を見る学生たちの間で起きる殺人事件。
ドラマ版ではジャップ警部とポワロとミス・レモンの「料理対決」があったり、
ポワロの「ホワイト・ヘヴン」になんと「ビデ」が付いていて、それをジャップ警部が何も知らず
色んな使い方をしちゃうという小ネタで笑わせてくれる。
このあたり、ドラマならではの視覚に訴える演出が楽しい。

ところが私、このポワロの部屋のインテリアには少々違和感があるのだ。

それは「シンメトリー」を愛する男、エルキュール・ポワロにしてはあまりにも
「ズレてる」ホワイト・ヘヴンの部屋の中。
シーズンによって、年代によってポワロの住む部屋もインテリアも変わる。
でもヒッコリーロードの事件の中のインテリア、このズレ方はなんだか気持ちが悪い。

で、こちら「Investigating Agatha Christie's Poirot 」にポワロのフラットについての考察が載っていたので、読んでみた。

かなり原作を再現している、という結論のようだが、ポワロのフラットにはいくつも部屋があるし。
相当量の美術品があるというこのブログの話は全くそのとおりだと思う。
・・・ミス・レモンの仕事部屋に通じるこの部屋には、少々多すぎる気もする。

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こちらはヒッコリーロードの回ではないが。
poirot room2


彼は最初の事件、スタイルズ荘からしてその左右対称への偏愛から事件を解決に導く糸を手繰り寄せたはず。

私が愛する探偵の中でも「エイドリアン・モンク」と「エルキュール・ポワロ」の室内に関しては
いつも清潔で美しく、そして左右対称であるはずなのだ。

こちらの部屋は納得。
poirot room3


ポワロは潔癖症の手前でとどまっているので単に「お洒落」な感じで、というスタッフの考えもあるのだろう。
アール・デコやモダンな絵画、アート使い、スチールパイプのモダン家具、アンティークと、行く先々の家や事件現場でも飽かせることがない。

ブログ「Investigating Agatha Christie's Poirot 」はこれだけでも読み応え十分なのだが、(なんとTV版ホワイト・ヘヴンの間取り図2案とも載っていたりする!)
アン・ハートの著書「Agatha Christie's Poirot: The Life and Times of Hercule Poirot」も紹介されている。
ポワロガイドの決定版とまでコメ欄でも人気のようだが、どうやら翻訳版は出ていない模様・・うう・・。

一方、モンクさんの部屋の中は私にとって完璧だった。
シンメトリーの極致である。

この写真は宣伝用だと思う。普段の部屋はもっと落ち着いて重厚だった。
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本物のMonk(修道士)だってこう几帳面にはいかないだろう。
トニー・シャルーブ演じる名探偵モンクは強迫神経症の上38種の恐怖症を抱える名探偵なのだから、仕方ないのだが。

名探偵モンクについて詳しいことは
こちらが面白かった。


いつも同じスケジュールを守り、同じルーティンで食事メニューも決まっている。
ジャケットもシャツもパンツも全て同じものを揃え、
シャツは決まった検品係の手によるものでなければ買いたくない。
(そのおかげで、検品係のおばちゃんの息子の事件を解決しましたね。)
なのでインテリアだってシーズンによって大きく変わるということは
なかったように思う。(いつもうろ覚えですが)
クローゼットの中身まで、スッキリと同じ服が並ぶ爽快感。

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ポワロは洒落者なので、そういうわけにはいかなかっただろうし、そもそもあの髭そのものが曲線だ。
四角というだけで彼をひとくくりにするわけにもいかないだろう。


ところで、「赤ちゃんをほしがったお人形」ディミーター インキオフ /著
という子供向けの本がある。
これはマトリョーシカ人形にまつわる小品なのだが、オチがいい。

これを読んでいて、昔家にあった、古いマトリョーシカ人形を好きになれなかった理由がわかった。

四角い入れ子の箱を愛してやまなかった私に、マトリョーシカは入れ子として気味の悪いものだったのだ。

そういえば、うちにあったリカちゃんハウスは、四角い箱状の家の中にリビングや寝室がある代物だったと記憶している。


リカちゃんもワタル君も、リカちゃんママも、いずみちゃんもそれなりに愛着があったが、
なにしろ私は、「箱状のハウス」の分解に興味があった。

箱型「ハウス」にくっついている家具は邪魔だったが、箱をハサミを使ってまで平らにするのは楽しかった。
リカちゃんハウスには悪いことをした。

それから小学生になって、定規が手に入ると展開図らしきものを書くようになった。
数学的な展開図は学生時代苦手だったので、そんなこととは何ら関係ない落書きのようなものだ。

箱を平らにすると四角がいくつも連なる形になっていて、立方体に組み立てるためには「まち」がいること。
その「まち」を斜めにカットすると綺麗な箱ができること。
和菓子の箱はまたちょっと違った作りで分解してもよくわからなかったこと。
段ボールに展開図を定規で引き、切って組み立てるのが楽しかった。

そんな遊びの記憶が今でもポワロやモンクを見ると思い出されるのだ。

シンメトリーとは何の関係もないはずなのだが、彼らの性癖を見るにつけ、彼らの部屋は
曲線というより、やはり角ばっていなければならない気がする。

大人になった私は、今は展開図こそ描かないが、
代わりに立方体を描く。

CADなんか使えないので、エクセルで四角の組み合わせを駆使し、
間取り図や家具の絵を描く。

食器棚は手書きで描いた。
寸法も全部書き込んだそれは、家具というより、店舗に置く「什器」に近かった。

下駄箱はゴリオ(仮名)の靴が巨大化してから熱心に考えるようになった。

原型は早くから出来上がっていたので、最終形になったのは最近のことである。
戸棚内部の寸法と靴を収納する向きなどをあれこれ考えている時間が楽しかった。

自分で描いた家具を初めて家具職人のおっちゃんに作ってもらったのが3年前。
手書きした食器棚だった。

そして最近、できあがった最終形をおっちゃんに見てもらい、プロとしての意見を入れて貰って、
ようやく下駄箱を作ってもらった。



自分が考えたものが現実化するのは嬉しいと言えば嬉しいが、
「箱」を作れない自分が妙に悔しく、頼れる家具職人のおっちゃんに嫉妬すら覚える。

職人のおっちゃんの手は正確だ。


人間のアシンメトリーな手が作る、正確無比なシンメトリー。

おっちゃんが家具を取り付ける時は片時も離れず、ずっと見ている。

左右対称を愛するポワロやモンクの家のようにはいかないが。

私の住むところも、やはり四角い箱なのだ。





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2015
06.05

ホワイトヘヴンの方へ

ホワイトヘヴンは名探偵ポワロが住むマンション。

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本では便利の良いロンドンの中心地にあるような描写だったはずだが、TVシリーズのこちらは閑静な場所にあるらしい。


取りためているポワロの1時間シリーズを繰り返し見ながら、
TVシリーズにしかない謎を楽しんでいる。

こちらのお二人
原作よりTVシリーズで大活躍のヘイスティングス大尉とミス・レモン。
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素敵な車を「4階の部屋」事件で犯人にスクラップにされ、
ポワロがポケットマネーで車代を出そうとしたり。
「イタリア貴族殺害事件」では購入済みで納車途中の車をぶち壊されている。
この時は銀行の支払いを停止するとは言っていたが。

外車を乗り回し、演劇を楽しみゴルフに興じる。
働いているとしたらポワロの助手として。
軍からの年金だけでは無理なはずなので、どう考えてもTV版ではポワロから報酬を貰っていなければあの生活はできないのでは。
だからポワロがヘイスティングスを紹介する時は必ず「パートナー」と言っていたのでは。
つまり報酬は折半かそれに近い状態にしていたのではと。
TV版では、ですが。
勝手に想像。

名士のご友人も多く、有名人に詳しいヘイスティングス。
原作では経済的には自立していたはずの彼が、TV版では破産したり投資に失敗したりと、波乱万丈の人生だ。
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秘書のミスレモンのヘアスタイル
前髪、どんな仕組みになっているのか不思議。

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ミスレモンの衣装は、出番の多かったエンドハウスの事件の時が一番好きだった。

スーシェのポワロシリーズのファンで、レトロファッション系のブログがいくつかある。
ミスレモンが「働く女性のスタイルアイコン」だと書いていらっしゃる。
もちろんポワロのページもアリ。
写真を数点お借りいたしました。
Style Icon for the Working Woman – Miss Lemon
http://www.retrochick.co.uk/2011/03/16/style-icon-for-the-working-woman-miss-lemon/

お帽子が素敵ですわね。

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今の独身女性と変わらず、流行りものに強く物知りだったり。
「負け犬」の催眠術。
「エンドハウスの怪事件」では降霊術(のふり)。
ヘイスティングスとコックリさんもしてたわね。
「スズメバチの巣」では昼休みにフィットネスクラブへ行くミスレモン。
一緒にいかが?と言われて怒るポワロさん。

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「イギリス貴族殺害事件」では上と同じスーツでデートにお出かけミスレモン。
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「ジョニー・ウェイバリー誘拐事件」の冒頭
ミスレモン独自のファイリングシステムは素晴らしく。
相互参照可能なデータファイルを作っている。

証人の名前
犯人の名前
被害者の職業
事件の種類(誘拐・薬物中毒・不倫・爆弾etc・・・)
5通りから調べられると言っているが、あの引き出しの数から言って、
そこから細分化された事件の種別は常人には理解不能かもしれない。
事件の種類まで、アルファベット順だったし。
あの数の引き出しに入っているのは大きさからいって事件のデータをカード状にしたものだろう。
資料そのものはラベルを付けて別に保管してあると思う。
相互参照可能、ということは、それだけの数と内容の事件データカードを作成したということだ。
コピー機が無かった時代、あのタイプで?
それとも、手書きで?
何気にすごい。

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ポワロお得意の「秩序と方法」は、ミスレモンのためにあるような言葉。
同じクリスティの手によるパーカーパイン氏の元にいたミスレモンとは別キャラだと私は思っている。

絵画も色々。
シャガールも。
モダンアートも。
アールデコ
家具調度品
ポワロが競売でアンティークの鏡を買いに行ったり。

クラッシックなモノポリーとか
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これ、駒が小さな可愛い銀のブーツ。
ポワロさん、負けず嫌いなので、最後はちゃんとオチも用意されている。

PoirotがParrotを押し付けられる「ダヴェンハイム失踪事件」
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この事件の最後、ポワロ特製の鳥料理が振舞われる。
鳥にナイフが入れられるたびにオウムが鳴く。

ヘイスティングスがインド料理好きで、コメを食べることに感心しないポワロ。
ママンの味を再現したポワロのウサギ料理に、「ウサギらしい味がする」と無理やり感想をひねり出す、ヘイスティングス。

食事のシーンは多いが、こちらは完全に原作のイメージ勝ち、か?

ミス・レモンがジャップ警部がホワイトヘヴンに泊っていた時に作った料理は、女性らしく、いかにもヘルシー。
そのジャップ警部も自宅でポワロに「これが本物のイギリス料理ってもんだ」と得意げに料理をふるまう。
ポワロ、大ピンチである。

料理に関しては、火花散る攻防が続く。


素敵な場所(お城?美術館?)で最愛の女性とデート。
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故郷ベルギーを舞台にした「チョコレートの箱」で一番好きなシーンから。
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ポワロの警察官時代のお話。

初恋の女性(?)からプレゼントされたあの「花瓶のピン」

このピンの入っている美しい入れ物、グランドメトロポリタンの盗難事件の冒頭、寝込んだポワロの枕元にも置いてある。
ポワロ思い出の宝物。

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いつも付けていたこのピンですね。
お花は随時変わります。
紫色の花の時は本当に素敵でございました。
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原作とは関係ない小ネタに、製作者の腕のふるいどころがあるわけで。

そこがファンにも突っ込みどころで。



ポワロが「ちびガメ」とか
「ちび蛙」とか
ひっどい言われようなところを聞きたくて、吹き替え版を英語音声にして聞くとか。
翻訳ではいつも「ベルギーの小男」だったけれど、バリエーションが色々あったのね。

こちらに素晴らしいTV版ポワロシリーズ全70作品の解説などがございました。
http://www.agathachristie.com/poirot-tv/

ところで今回のタイトル、
ご存知の方なら「あれ?」でございましょう。

この本で、何度深夜の散歩に出たことか。

深夜の散歩―ミステリの愉しみ (ハヤカワ文庫JA) 文庫 – 1997/11
福永 武彦 ・丸谷 才一・中村 真一郎 (著)



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2015
04.29

ポワロ百景

AXNミステリには、色々ギモンもあるけれど、「名探偵ポワロ」最終シーズンに向けて、これまで日本で放送されなかったポワロ作品が次々登場したのは嬉しかった。
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今回連続放送されたのは1時間物のシリーズ。
わずかな時間を継ぎはぎしながら、録画をようやく見終わった。

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何がすごいって、1時間のドラマなのに、景勝地、本物の古い屋敷を使ったロケは壮大。
セットなのか本物なのか、建物の内装建具の質感の美しさ。重厚さ。

何度も出てくるのは、「機関車トーマス」で「セレブリティ」と呼ばれていたあの美しい機関車の姿。

多趣味で道楽者に描かれるヘイスティングスや、犯人たちが操る数々のクラッシックカーの曲線美。

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モダンアートもふんだんに。
ホワイトヘヴンの内装にも凝っており、短編1時間でも見ごたえがある。

ヘイスティングスが次々新しい趣味に没頭し、カメラや車に大金を注ぐお約束。
ポワロも踊ったり、美味しいもの食べたさにヘイスティングスと猟場に出かけたり。
一部のアートやアンティークに目がなくオークションに出かけ、食あたりや過労で寝込んだりして負けてはいない。
もう、事件のためなら大サービスである。

クリスティーの短編を、よくぞこの小道具大道具に負けないドラマに脚色したものだ。
ストーリーの最初の部分に解決の糸口が見えるのは原作と同じような構成だったりはする。

「24羽の黒つぐみ」、「夢」、「ダベンハイム失踪事件」、「安いマンションの事件」、「誘拐された総理大臣」、「西洋の星の盗難事件」、「100万ドル債権盗難事件」、「スペイン櫃の秘密」、「イタリア貴族殺害事件」、「グランド・メトロポリタンの宝石盗難事件」
等々、あれが・・・と思うような小品を膨らませ、ヘイスティングスとミス・レモンをスパイスに上手く料理してある。

犯人は大方そのままだが、設定は原作と違うことも多く、家事の合間に見ていると、その印象の違いに混乱する。

それにしても、ヘイスティングスとミス・レモン、そしてジャップ警部がレギュラーのシリーズは楽しい。
彼らの絡みで事件も膨らむ。

見どころは?、と聞かれたら、「本筋以外全て」と私なら答えるかもしれない。

ミステリとして楽しむなら本に限る。

でも、映像化する価値を見事に見せてくれるのはこのシリーズかもしれない。
華やかで美しい時代のポワロ。

確かにこの小編群を見た後なら、「カーテン」でポワロが語る「あなたと過ごした素晴らしい冒険の日々」の意味が一層際立つだろう。

撮りためた小編連続放送のおかげで、しばらく楽しみには事欠かない毎日ではある。

毎晩寝落ちするので、ちっとも先に進まないのがただ一つの難ではあったが。




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2015
01.17

杉の柩

名探偵ポワロ
http://mystery.co.jp/program/poirot/index_s01.html

AXNミステリで「杉の柩」を見る。
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ドラマとしてはとても面白かったと思う。
原作で素晴らしかったのは、エリノアの人柄を示す箇所だった。
本ならではのだいご味。
映像だけではわからない。

こんな女性が人を殺めるわけはない。
本来なら冤罪を救うべくポワロが立ち上がるのは、「このポワロだけが気付き、浮かんできた多くの疑問」があったからだけではないだろう。
このあたり、原作の伏線の張り方はクリスティーの独壇場と思われる。
人物の性質が事件の原因となり、展開を狂わせ、運命を決めていく。
謎解きと過去の因縁と人間模様とロマンスの配分がいい。

「杉の柩」の冒頭、主人公エリノアの病に伏した叔母がシェイクスピアを引用する。
『この身を杉の柩に横たえよ』の部分である。

くるがいい、くるがいい、死よ。
この身を杉の柩に横たえよ。
去るがいい、去るがいい、息よ。
美しいむごい娘に殺されて。
中略
花一つ、花一つさえ、
この身をおさめた柩にそなえるな。
友一人、友一人さえ、
悲しみの野辺の送りに従うな。
人知れぬ山奥の地に、この身を
埋めておくれ。
墓を見てまことの愛に泣くものを避けるために。

シェイクスピア全集 十二夜
小田島雄志:訳 白水社より



実は、丁度「十二夜」を読んでいるところだった。
この翻訳には?という部分もあるが、今読むと、違った意味で面白い。
若い頃は真面目に読んでは寝落ちしたものだが、今読むと、よくあるイマドキアニメの冒険物ストーリーのようではないか。

引用は道化が恋に悩むオーシーノー公爵に歌って聞かせる歌の一部なのだが、
ポワロがドクターに持たせるの赤いバラの意味するところといい、『杉の柩』もかなりな恋愛物である。

スーシェ版では、事件の解決の仕方はスリリングではあるが、やや説明不足の嫌いはある。
登場人物の人間関係を、映像だけでも過去にさかのぼって見せていないのが原因か。

嫉妬にさいなまれる主人公が自分を罰するように無実の罪を受け入れようとする気持ちが、「サーモンペースト」の描写だけでは、説得力がない。

屋敷は贅沢だったし、映像も美しかった、役者も良かっただけに勿体ない。

フランス版アガサクリスティー原作ドラマ、ラロジエール警部シリーズにも「杉の柩」が取り上げられている。
http://mystery.co.jp/program/little_murders/index.html
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こちらはフレンチ版「杉の柩」でフェミニストの先鋒に立つ女性に扮したランピオン刑事と、その夫を演じたラロジエール警部。

「アガサ・クリスティーのフレンチミステリー」は、「杉の柩」に関しては文句なく面白かった。
設定は大きく変えられ、叔母は確執を持つ実の母親に、主人公と婚約者は幼馴染ではなく、ドクター役が従兄に置き換えられている。
ランピオン刑事の旧友(初恋の人?)だった従兄の依頼で、この刑事コンビが事件の舞台となる邸宅に潜入するのだが、女装したランピオン刑事に色気を感じるラロジエール警部がポアロ役なのだから、笑うしかない。

おまけに庭師の代わりか、メアリの粗野な父親が、女装したランピオン刑事を襲おうとする。
殺人に関しては残酷だが、あとは全編これコメディーである。
登場人物のハチャメチャぶりに終始開いた口がふさがらない。

ただ、終身刑(死刑でしたね)を言い渡される失意の女性の嫉妬心、過去を封印しなければならなかった富豪の女主人、遺産を狙って着々と網を張った犯人の描き方は、見事。
原作の持つエンターテイメントな部分を思い切り誇張し、残忍でありながらあらゆる場面にくすぐりを入れた抜群のパロディーになっている。
終わりの微妙さも、いかにも、である。

「クリスティーのフレンチミステリ」は、マープルものもポワロものも区別なく取り入れている。
「書斎の死体」と「スリーピング・マーダー」は混乱する作りで見苦しかったが、「鳩の中の猫」や「エッジウェア卿の死」「満潮に乗って」など、デイヴィッド・スーシェ版より見ていて楽しかったほどだ。


このシリーズ、古畑任三郎と今泉慎太郎よろしく、ラロジエール警部とランピオン刑事が活躍する。

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今泉刑事
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ランピオン刑事
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三谷幸喜も先日のオリ急、いっそのこと古畑警部補と今泉コンビに謎を解かせりゃよかったのだ。



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2014
10.19

ビッグ・フォー

今更、なんですが、撮りためて見てたNHKのBS「名探偵ポワロ」の最終シリーズ。
ようやく「ビッグ・フォー」を見終わった。

楽しみに取っておいて、寝る前にこれを見ようとするのだけど、毎度寝落ちしまして。

そこで今日は、午前中にどんな邪魔が入ろうとも見ると決意して、ようやく見ましたのよ。
朝起きてすぐ、2度寝したりしつつ、何度も同じ場面から見る羽目にはなったのだけれど。

ただ夕べ見ていたのがグラナダ版シャーロック・ホームズの「金縁の鼻眼鏡」。
自然、見比べる形になった。
ドラマではワトソン医師役の俳優の都合で、ワトソンの代わりをマイクロフトが務めた。
設定を変えたことで、いいところを全部マイクロフトに持っていかれた感のある「金縁の鼻眼鏡」。

まあ、事件の真相の裏に横たわる政治背景、裏切りの過去なんかは映像だからわかりやすかったけれど、謎解きに関してはちょっとがっかりだったかしら。

この回では、ホームズとマイクロフトの「事情」が垣間見えてその点では面白い一作。
でもコアなファンしか興味のない部分かもしれないわ。
せっかく原作に忠実なドラマシリーズなのに、なぜこの話に限って・・・と残念ではありました。

それに比べてポワロの「ビッグ・フォー」、スケール的には惜しい気もしたが、ドラマとしては十分楽しめた。
原作は読んでいなかったけれど、クリスティがいかにも言わせたかったであろう犯人の言葉が、このミステリの肝だろうと思った。

本物の舞台を用いながら、いかにも舞台の一幕のように犯人がぶつけてみせた、ポワロの「本質」。
クリスティがうんざりしていたというこのポワロの劇場型謎解きに対する作者ならではの「言いたかったこと」を、あの迫力で犯人に言わせた。

ポワロの、見方によれば、最も嫌らしいとさえ思える「本質」をこの場面でこうも巧く用いて、尚且つポワロがそれでも愛される偉大な人物であるという大団円に持っていった。

なるほど、脚本はマーク・ゲイティス。
やはりこの人は、原作からその世界の核となる部分を抽出してドラマに再現させることにかけて、素晴らしい才能があるに違いない。

テーマ、というものを外さない。そして作品に愛がある。
原作をどのように脚色しようとも、大切な「ここだけ」を逃さない。
その上で、挑戦を続ける「SHERLOCK」は面白くて当然だろう。

クリスティドラマには、ポワロ、マープルとも同じ役者が何度も出演しているので探すのも楽しい。
勿論ゲイティスもポワロ、マープル、どちらのドラマにも出ている。
俳優としても癖のある存在感で素晴らしい。。

「カーテン」の脚本が彼だったなら、一体どうなっていただろう。
もう少し、救いのある脚色になっていたかもしれないな。



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2014
10.07

カーテン

さて、ポワロ最後の事件、「カーテン」。

昨日、この重たい事件を見た後、Dずにーのハロウィンなんか見ちゃったわけである。

クリスティが家族に遺産を残すため、とも言われているが、前もって書かれて、周到に準備されていた一作。

ポワロがヘイスティングスに最後の手紙を残したがごとく、アガサも世間に向けて、自分の最後の言葉を残したのだ。

最後にポワロがしたことについての是非。

あの「オリエント急行」からもう一歩踏み込んだ。

「人間心理」について、描き続けた果てに行きついたのは、「手を下すことすらない殺人」。

昔読んだこの「カーテン」はただ重く、ポワロとクリスティが重なったことだけを覚えている。
あれほど「うんざりしていた」ベルギーの小男に、彼女は究極の犯罪を示し、その解決を託したのだ。
丁度同時期に延々と読んでいた清張や横溝にはなかったものが、そこにあった。
何か哲学めいたもの。犯罪の向こうにあるものを追及してやまなかった推考の果て。
私はこの二人の作家に関しても、当時出版されていた本はことごとく読んでいた。
スケートと同じで、延々と読み続けなければ見えてこないこともある。

松本清張の「社会派」と言われた犯罪の温床となった貧困や社会悪。
横溝の描いた日本の地方に蔓延る陰惨さ。
推理小説という分野を大人の喜びそうなエロスと切り離せなかった彼らの小説は、私にとって、ついに純粋な「推理小説」にはなりえなかった。
男性による男性のための、そして文庫本を廉価で数多く売り、テレビや映画化のための本として理解するしかなかった。

彼らに見出せず、クリスティにあったもの。
人間そのものに対する深い洞察とそれでも溢れてやまない愛情。

ポワロは生涯独り者だったが、チームポワロ、といえる人間関係の中にいた。
探偵にも、救いがあった。
ユーモアがあった。

くすぐりがあってこそ、生きるもの。

それにしても、ポワロの魂は神によって許され、安息しているのか。
そうであってほしいと、まるで友人に対するがごとく、願わずにはいられない。






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2014
09.23

Hickory, Dickory, Dock

この週末から今日のお休みにかけて、まだまだ続くポワロシリーズ三昧。

「愛国殺人」“One, Two, Buckle My Shoe”
「ヒッコリーロードの殺人」“Hickory, Dickory, Dock”
2作ともマザーグース絡みのクリスティお得意のプロット。

私はヴァンダインの「僧正殺人事件」(文庫本でもあれは分厚かったわね)で、ほとほとこの手の話にはうんざりしていた。
これも大昔、読み終わった後の日記に書いた感想まで覚えているくらいだから、強烈ではあった。

「ポケットにライ麦を」“A Pocket Full of Rye” の「六ペンスの歌を歌おう」のような「見立て殺人」ではなかったけれど、2作のポワロドラマは、十分面白く、マザーグースの生かし方では、クリスティは推理小説家の中でも随一かと思うのだけど。

AXNミステリのポワロの「ヒッコリーロードの殺人」中、「Hickory, Dickory, Dock」は効果音のごとくわずかに流れるのよ。
なんだか妙な感じだったわ。
小説の中では学生の一人が口ずさんでいたという話だったわね。

ドラマの演出上も、マザーグースは不気味さを増すには効果的。

「五匹の子豚」“Five Little Pigs”は、「フレンチミステリー」のラロジエール警視版。
これなんてドラマ中のマザーグースの歌がくど過ぎて好きになれなかったけど。

学生時代は遠く過ぎ去った昔ではあるが、やっぱり「マザーグース」は言葉のリズムをつかむための教材で、今も「寿限無」同様、そらで言えるマザーグースの歌がいくつもある。
口で覚えたことは、忘れないもんなのね。
他のことは全部忘れてしまうのに。

マザーグースの「Hickory, Dickory, Dock」は短くて簡単だったので、ズルして楽することばかり考えていた私のお気に入りだった。
でもドラマとしては「愛国殺人」の方が面白かったかしら。
“One, Two, Buckle My Shoe” なんて、小説の中身から言ってもとてもうまいタイトル。

「そして誰もいなくなった」“Ten Little Niggers”
「ねじれた家」“Crooked House”(これは覚えたくても舌が回らなくて苦手だったわ)などなど、クリスティの物語の中には、多くの人に懐かしさを抱かせ、ヒントを与える閃きが沢山。

エラリークイーンの「靴に棲む老婆」(創元社版タイトル)
私には「生者と死者と」の方になじみがある。
こちらも“There was an old woman who lived in a shoe”が題材。
でもねえ、いかにクイーンが好きな私でも、これはねえ。
ニッキー・ポーターはこの話と切り離せば好きなんだけど。

このあたりはクリスティの腕に軍配を上げたいわ。


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2014
09.18

パンストとパンスネ

「名探偵ポワロ エッジウェア卿の死」を見ながら、そういやこの話の謎解きのヒントにも、「鼻眼鏡」があったわねえ、と思っていたら、ポワロはそこのところ、「ピンハネ」だか「パンスト」だか何しろ何とか 「glasses」とは言ってないのよ。
「ぱんすね」って何よ?と思ったら、要するに、それこそ「鼻眼鏡」だったのだ。

Weblio英和対訳辞書によれば、


(a pair of) pince‐nez
鼻眼鏡

Pince-nez
鼻メガネ

鼻メガネ (仏:Pince-nez)は、19世紀から20世紀初頭の欧米で流行した眼鏡の種類


とある。

ポワロはさすがにおフランス語でオシャレに表現したわけね。
流行だったのね。これが。
確かに鼻をつまんでしまえば、私のような「鼻骨が最初から肉に埋もれて行方不明な団子鼻」でもずれないでしょうよ。
ホームズの「老女の鼻眼鏡」の夫人も、私と同じ「団子鼻」だったわ。

これからまたこの「パンスネ」が流行る時代が来た日には、一度ためしてみたいもんである。

こちらhttp://eyewear-info.dreamlog.jp/archives/3589773.html
渋谷のメガネ屋さんのサイトですが、こちらから画像をお借りしてみました。

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何やら鼻を挟んで使うタイプのメガネだそうだが、折り畳みもできる優れものだったようで。

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私の老眼鏡は4つほどあるのだが、お気に入りはつるの部分がクネクネ曲がったり、首に直接引っかけたりできる可愛い赤いヤツ。
私は元々遠視に乱視が老眼になってるので、メガネだけはしっかりしたのをと思っていたのに、結局使っているのはお高いものより東急ハンズのその便利なヤツなのだ。
何しろチェーンやホルダーで首からぶら下げなくても、蝶ネクタイ状に首に付けられるのは仕事中便利。

時々首に付けてるのを忘れたまま外を歩いて振り向かれることもあるが、ま、コナンの蝶ネクタイに比べたら可愛いもんかもしれないわ。

ということで、このブログ名も、正式名称は、「老嬢のパンスネ」ってことになるかしら?
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2014
09.14

AXNミステリでもポワロと会える

AXNミステリ 名探偵ポワロ 詳細はこちらから
http://mystery.co.jp/program/poirot/index_s01.html

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NHK BSプレミアムでデイヴィッド・スーシェの名探偵ポアロ最終シーズンが放送され始めたが、一方、AXNミステリではこのポワロシリーズの第1話からの放送が始まる。
全20話というから太っ腹だ。

夕べは「スタイルズ荘の怪事件」を見た。
どうも、ミス・マープルといい、ポワロといい、私が本で読んでいて一番惹きつけられた部分は、ドラマ的には端折り対象になるらしく、このドラマでもそうだった。

まず、スタイルズ荘のイメージ、とか。
庭をそぞろ歩くヘイスティングスは、あんなに刈り込まれて見通しの良い広すぎる庭を歩いてただろうか、とか。
戦時下の病院の薬局に勤めるシンシアを、ポワロが訪ね、薬についての疑惑から犯行の手口を突き止めるスリル、とか。

なんだかんだと突っ込みながらも楽しめたのは、デイヴィッド・スーシェ自身が語っていた、ポワロを演ずる上で一番苦心したという「ポワロの歩き方」を見ることができたからだ。

注意深く、丁寧に手入れした靴を汚さないように、そろそろと泥道を歩くポワロは滑稽であるが、原作に忠実に演じたという几帳面さとシンメトリーを愛してやまない性格は、アメリカでも名探偵モンクさんがエキセントリックに踏襲してたわね。

このスタイルズ荘が始まる前に、短い特別番組があって、ゲストにはクリスティーの翻訳を手がけたという女性も出演して、クリスティーの魅力を語っていた。
「恋愛」がその方にとってのキーワードだったらしい。
おー、確かにそうだった。
そういやそうだった。
目からウロコだった。
不貞、密通、純愛、初恋、様々な愛の形がクリスティー作品には描かれ、ポワロもミス・マープルも、ドラマの中でだって、若く美しいカップルを何組も祝福していたではないか。

「恋愛」は確かにクリスティーのミステリに不可欠。
なのに私はそんなこと全然気にもせず、読んでいたのだ。

私にとってクリスティー作品は、戦争の爪痕とは切っても切れない物語であり、クリスティーの旅行記であったり、人間観察図鑑のようなものであった。

その中で、「愛」は色恋沙汰のみに終わらず、家族であったり、友情であったり、庭や森、街の暮らしのすみずみにまで満ち溢れていた。

「恋愛」。
クリスティーを語るときにこの言葉をはずせないという女子力。

きっと私に一番足りていないもの。
どうりでおばさんになってからというもの、生きていくのが楽になったはずだ。

おばさんはあまり女子力を必要としない。
少々おばさんぽくても周りが納得してくれるし。

堂々と女子を降りても生きてゆける。

そうだったのか。
どういうわけか結婚だけはしたが、「恋愛」にはとっくに興味もなく、男は息子で懲りているので二度と手出しするまいと決めている。

「恋愛小説」として読むクリスティー。
おばさんの女子力を、ちょっぴりアップしてくれるだろうか?
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2014
09.09

25年間のポワロ

NHK BSで「名探偵ポワロ」最終シーズンが放送され始めている。

英国では昨年、25年にもわたるポワロのシリーズが終了したということで、最後のシーズン5作品が、このたびNHK BSプレミアムで放送されることになったという。
まだ終わってなかったってことすら、気が付かなかったわ。
これで、すべてのクリスティのポワロ作品が映像化されたというから驚きだ。
http://www4.nhk.or.jp/poirot/
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これ以上のポワロ俳優はいないと思われるデイヴィッド・スーシェ。
彼が素顔に戻って、ポワロを語る特別番組には、何とも言えない寂寥感が。

特別番組の中で、デイヴィッド・スーシェが演じるポワロのドラマシリーズのテーマを作曲した音楽家、クリストファー・ガニングを訪ねるシーンがある。
「どうやって曲を作曲したのですか?」とスーシェが尋ねる。
するとガニングは「脚本を読んで考えたのさ」
「1930年代の雰囲気の曲をね」
と答える。
4曲作り、プロデューサーが選んだのが有名なあのテーマだそうだ。
私はこの曲、名曲だと思っている。
ミステリのはじまりのこの1フレーズだけで、瀟洒な建物に洒落た音楽、美味しそうな食事が目に浮び、そして、いかにも身だしなみの良い紳士淑女が悲劇に巻き込まれそうではないか。
Sな曲、とでもいいましょうか。
ピアノで作曲者が弾いたポワロのテーマのピアノの響きは本当に美しかったわ。
ピアノのままの編曲でよかったのにな。

ポワロ最後の事件、「カーテン」を読んだのは小学生の頃だった。
クリスティの訃報とポワロの最後、そして「スリーピング・マーダー」の話題は、ほとんど同時に私の元にも伝わって来た。
本だけは何を買ってもいくら買っても何も言われなかったので、「カーテン」も「スリーピング・マーダー」もすぐに買って読んだのだ。
今考えると勿体なかったわ。
小学生の私に、「カーテン」がわかるものか。
ただ、あの時の悲しさ、重さに、実は読み返したのは3度ほどしかないと思う。

初めてクリスティを読んだのは「アクロイド殺し」だったと記憶している。
小学校の低学年のうちにホームズやルパン物、乱歩にあのオペラ座の怪人の原作者、ガストン・ルルーの「黄色い部屋」のルルタビーユ本、そして散々エラリー・クイーンの国名ものなんかを読んだ果てだった。

ミステリの本の帯や宣伝文句に「この推理小説はフェアか?アンフェアか?」と論争を蒸し返されていた(要するにブームだったのだろう)「アクロイド」に、一つ挑戦してみようと買ってきたのが始まりだったと思う。
多分その関係でミステリ・マガジンまで買っていたと思うが、よく覚えていない。
「アクロイド殺し」に関しては、話の最初の方に、すでに自白の一文が書かれているのは小学生でも気が付いたくらいなので、あんなことで「アンフェア」と言われるクリスティは、女性作家だからあれこれ言われるのかと思ったものだ。

若い頃はトミーとタペンスのコンビや、パーカーパイン氏とそのお仲間が大好きで、何度も何度も読み返したものだ。
パーカーパイン氏がエジプトあたりを旅する数編は特別に好きだった。
「ナイルに死す」よりよほど楽しかったのは、短編が好きだったせいもあるのか。

ミス・マープルの面白さがわかったのは結婚してからだった。
うろ覚えだが、「鏡は横にひび割れて」の面白さが、大女優が小さな村のゴシントンホールを買った話なんかより、セントメアリーミードの周辺に急激に広がった新興住宅地とそこに住むよそ者的な、あきらかにこれまでの「村の人」とは違う人種について書かれたサイドストーリーにあったり。
「バートラムホテルにて」の「何も変わらないことこそ、このホテルのおかしなところだった」というミス・マープルの見解だったり。
ドラマではどうしてもそのあたりが食い足りないのだけれども。

ポワロものは、クリスマスストーリーや、旅行ものとか、なんというか、サービス作品があれこれあってそれはそれで楽しめたのだけれども、だから余計に映像化には向いていたのかもね。
推理小説としてピリッとしていたのは初期の頃だったと思うのだけど。

それでも、ポワロの最後を映像で見るということは、やはり寂しいものだ。
長年の友人のようなものなのだから。


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2013
02.03

ミス・マープル見比べ週間

ジョーン・ヒクソンさん演ずる「ミス・マープル」一挙放送を見ながらの週末。

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第1話の「書斎の死体」。
これこれ、これですわ、私の頭の中の「書斎」&「バジル・ブレイクとその住まい」。
ヒクソンさん、スーツ姿は?だけど、やっぱりこの人の風格は「マープル」だなあ。


この「書斎の死体」の「フレンチミステリー」版。
ラロジエール警視とランピオン刑事は大好きだけど、「書斎の死体」だけは、んもー何とかしてよ、だった。

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ま、それまでのラロ警視の行いからすると、いたしかたない脚本だったのか?

その点昔のマープルさんは、安心して原作に近いところで楽しめるのがいいんだな。




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2013
01.13

ミスマープル 殺人は容易だ 2009年

ミスマープル4 「殺人は容易だ」
NHKBSプレミアムで放送。


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マープルドラマの中では、とても良くできた1作ではないか。

原作とは設定を結構変えていたにもかかわらず、恰幅のよいジュリア・マッケンジー/マープルさんがカンバーバッチくん扮するルーク・フィッツウィリアム氏のお宅にいきなり厄介になることになることを除き、話のつじつまに破たんはあまり感じられない。

本来ならば主人公で探偵役のルーク/カンバーバッチくんが、すっかりドラマの「華」として女の子を追いかけ回す姿もまた素敵。
あの表情豊かな瞳、唇、形のいい頭から鼻の横顔ライン、長い手足、すっと伸びた背筋の美しさには少々の女優さんを持ってきても、食われてしまうことだろう。

マープルの助手として活躍したのはむしろテレンス・リード巡査役で好青年を演じたラッセル・トビーの方であろう。
彼が後半登場した時、この耳、絶対どっかで見た!と記憶を手繰り寄せるのにしばらくかかった。
手がかりは耳。「このコアラ耳、シャーロックに出てた!」


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「SHERLOCK」~バスカヴィルの犬~でナイーヴな主人公を演じたラッセル・トビー。
巡査としてマープルさんの聞き取り調査の代理を見事務めて、ほめられている。
ここでは本当に素直な好青年。あの耳でさえ好ましい。

カンバーバッチくんは最後の謎解きの時にもアメリカ女子ばっかり気になって、どうにもキレが悪い。
だけど際立ったあの存在感。
雑誌のインタビューで「SHERLOCK」で世に出たことはほかの俳優たちの羨望の的なのでは?という問いに対して、「これまで長いキャリアを積んできたのだから、僕は自分がシャーロックでいきなりブレークしたとは思っていない」と答えている。カンバーバッチくん、「ぽっと出じゃないんだよ」って言ったのね。クールだわ

ドラマの中で実に効果的に使われていたのが女性の足元のアップ。
その人となり気持ちなりを良く表現している。
後ろに縫い線の入ったストッキングのショットがなまめかしく、アメリカ女子のパンツ姿もそれはそれはセクシー番長。
冒頭、エスカレーターから突き落とされ、落ちていく老女。
その足もばっちり映っちゃって。落ちた先にはロンドンに向かうためにおしゃれした靴が・・・。

マープルが列車の中で出会った老女。
彼女の恐怖で緊迫する駅の場面で、エスカレーターに乗る老女の帽子を後ろ斜め上から撮る。
帽子はしっかりハットピンで留められている。
帽子もこのドラマではうまい小道具。
帽子の色を染め直す、そのための塗料が殺人に用いられるとか、さすがクリスティ。そして演出の妙。

この回の演出はヘティ・マクドナルド。イギリスではあの「ドクターフー」でヒューゴー賞を受賞した有名な女性監督。

「ドクターフー」といえば、またまた「SHERLOCK」つながり。
うーん、役者さん、ディレクター、面白いなあ。



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2013
01.09

マープル&シャーロック

「SHERLOCK」、ベネディクト・カンバーバッチ君
BSプレミアム 1月12日(土) 午後3:45放送「殺人は容易だ」に出演。

レストレード警部役のルパート・グレイブス
BSプレミアム 1月9日(水) 午後4:45放送の「ポケットにライ麦を」に登場。


ジュリア・マッケンジー演ずるマープルと、ジェラルディン・マクイーワンのマープル、見比べるのもまた楽しい。

私的にはジュリア・マッケンジーのマープルは原作とは切り離して見てる。
ジョーン・ヒクソン女史のが好き。


それにしても、クリスティーのフレンチミステリー然り、原作をどう料理するのか、国によって、俳優によって違うのが楽しい。

カンバーバッチくん、楽しみ。
レストレード役のルパート・グレイブスは「ミステリーインパラダイス」にもゲスト出演してた。

ちゃんんと録画して、ゆっくり楽しみに

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2013
01.04

ミスマープル

ミスマープル

番組詳細はこちら

原作を読んでしまうと大抵そうだが、映像化すると細かい部分がはしょられてしまって、ちょっぴり残念なこともある。

今日見たミスマープルはジェラルディン・マクイーワンおばあちゃん主演。
この方、ヘアスタイルと衣装をなんとかすれば、マープル像にはピッタリ。
意味ありげな表情もチャーミング。

第1話「書斎の死体」では、「ミステリー in パラダイス」の探偵さん、警部補役を演じたベン・ミラーをフサフサの髪の毛と共に発見!他にも色んな番組で有名な俳優さんが出演してるそうだけど、ベン・ミラー以外はよくわからない。何しろ私には、原作ではもっと怪しげな人物だったはずの「ボス」の出番が少なかったのが髪の毛と反比例してて残念だったわ。
2話連続放送は録画してるからまじめに見なくても良かったんだけど、明日の準備をしながら、やっぱり目と耳はtvに。時々、地上波の「ハウルの動く城」の声優陣の(キムタクとか、キムタクとか、千恵子さんとか、三輪さんとか)セリフを聴いたりね。

このマープル、時代設定がどーなってんのか、よくわからない。
みなさまの服装、屋敷の中なんかのセットも素敵だけどさ、ちょっと現代的にすぎやしないか?
特にマープルさんの服は、きっちり原作通りに着せてもらいたかったな。
セーターみたいな感じの変なボタンのついた服とか、ちょっとちがうんではないのかい?
襟はレース編みの小さな付け襟ではなかったかしら?
帽子も、なんだかなあ。
マープルさん、もっとシンプルでセンスがいいはず、そしてご友人のドリーはもっとふっくらしたおばさん、のはずなんだけど。

明日は昨日に続き、早朝6時半から部活の豚汁会に出陣。
なんだってこんなに朝早いの。
なんだって、この寒いのに砂嵐のグラウンドでまた食べるの?

目立たぬよう、熱心って感じでもなく、でも協力的な母親のふりするのは至難のわざ。
息子も母親も完全インドアヲタなのに、なんでまた外でやるスポーツなんかやってんのか・・・。
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2012
08.14

『名探偵ポワロ』 NHK BSプレミアムで再放送

 『名探偵ポワロ』 

ロンドン・ウィークエンド・テレビ(London Weekend Television)制作、
最も原作に近いポワロと言われるデヴィッド・スーシェのポワロ。

ポワロ


BSプレミアムで再放送
『マギンティ夫人は死んだ』 8月13日(月)午後5時〜
『鳩(はと)の中の猫』 8月14日(火)午後5時〜
『第三の女』 8月15日(水)午後5時〜
『死との約束』 8月16日(木)午後5時〜

「SHERLOCK」のマイクロフト役兼、脚本家のマーク・ゲイティス Mark Gatiss が第2話、
「鳩の中の猫」を書いている!
「死との約束」には、レナード役で出演も!

ロンドン郊外の田舎町の景色が本当に綺麗。

この再放送は日本語版だが、登場人物の会話を楽しみにしようっと。


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